
ニュージーランド滞在二日目(旅の三日目)は、朝5時半ごろの早起きをしなくてはならない。なぜかというと、今日は、「フィヨルドランド・トラベル」社のミルフォードサウンドへのコーチクルーズツアーの日だからだ。このツアーはWeb経由で予約したものであり、そのときにホテルへピックアップにきてくれるように頼んでおいた。そしてクィーンズタウンに到着した昨日、同社のリザベーションオフィスに電話をしてリコンファームをした結果、タクシーが迎えにくるということがわかった。どこでピックアップを待っていればいいのか尋ねておくのは当然中の当然。
ピックアップ時刻(6時45分)数分前にホテルのレセプションの前で待っていると、タクシーがやってきて、こちらから「フィヨルドランド・トラベルのピックアップですか?」と尋ねるとそうだということで乗り込んだ。タクシーにのってから運転手と話をしたのだが、最近はワカティプ湖を正面に見る丘のほうに多くの家やアパートが建ち価格ははかなり高いのだということである。だが、いったいいくらくらいなのか?興味があるから、明日、不動産案内のフリーペーパをもらってみるとしよう。
数分でフィヨルドランド・トラベルのオフィスに到着し、クレジットカードで支払いを済ませると乗船券と予約時に頼んでいた(有料)ランチバフェ(他に日本式幕の内弁当で何と味噌汁付き!、ピクニックランチがある)のチケットを受け取り待つことしばし。ちゃんと日本語ガイドのついたツアーになっていた。特に日本語ツアーを依頼したわけでもなく、すべて英語で予約したのだけれど、日本居住者ということで自動的に日本語ツアーになっただろう。日本在住英語系他国人の人だったらどうするのだろう....。私は別に英語でもかまわないが、そりゃどちらが楽かといわれれば日本語ツアーのほうが楽に決まっているから、やはりありがたい。先にツアーバスに乗っている客は、やはりカップルが多いがハワイほどではない。結構熟年夫婦が多いのは驚いた。他にはオバサン二人組などもいた。
フィヨルドランド・トラベル社のミルフォードサウンドへのコーチクルーズツアーで利用されるバスはちょっと変わっている。まずバスの両側、つまり客席部分の天井が美しい景色がよく見えるようにガラス張りなのである。運転席のフロントウィンドウは大きく、バスの床は後ろに行くほど高くなっており、後方の座席からでもフロントウィンドウを通して前方の景色が良く見えるようになっている。もうひとつおまけに、中央の通路を挟んで左右それぞれに二人がけのシートがあるが、このシートが普通の観光バスと違って、ちょっとだけ窓際を向いてつけられている。すなわち右側のシートは右斜め前を、左側のシートは左斜め前を向いていて、景色を見るのが楽になるように作られている。
これからおよそ12時間、うちクルーズが1時間半だから、差し引き往復10時間半約600kmのバスの旅となる。ドライバー氏はミルフォードサウンドまでの道を走り続けて30年、ミルフォードサウンドへの往復コーチを運転すること4000回という超ベテランで、まさに、ミルフォードサウンドまでの道を知り尽くした人だ。
クィーンズタウンからミルフォードサウンドまでは直線だと66kmほどであるが、中央を南アルプスに阻まれていて直進できないのだ。日本流にはトンネルをつくっちゃえ、ということになるかもしれないが、そこは自然保護を重視するニュージーランドのこと、結局自然破壊につながるということでトンネル工事の話はなくなったという。日本だと業者優先、産業優先(いずれも政治献金・票狙いなのは明らか)でつぎつぎ自然がなくなってゆくが、ここはできるだけそれを避けようとしているのが明確なようだ。
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| ミラー湖 |
ともあれ、クィーンズタウンから一旦南のテアナウへ行き、そこから再び北に上ってミルフォード・サウンドに行くいことになり締めて往復600kmだ。途中、人よりはるかに数が多いといいう羊に出会い観光用に三頭の子羊を小さな柵内に放しているところに立ち寄る。そこの方の話ではそのオジサンは羊を2000頭ほど飼っているが、それは牧羊としてはかなり少ないほうだという。クィーンズタウンからテアナウまでの国道沿いは羊が沢山いて、最初は珍しいのだが、だんだん見飽きてくるくらいに沢山いる。なんせ人口およそ380万人に対して、羊は4400万頭、繁殖期には6000万頭を超えるという。
見ていると、親にぴったりくっつくようにニ〜三頭の子羊がいたり、親に着かず離れずで子羊が遊んでいたり、余所見をしているようでも常に子羊に注意を向けている親羊がいたりで、親子関係はアホな人間よりよほどちゃんとしているかもしれない、などと思ったりする。
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| 黒い羊は劣性遺伝で 数千頭に一頭くらいで出現する |
愛らしい子羊 |
また、あまり知られていないが、ニュージーランドは鹿肉の生産でも世界有数で、鹿牧場もこの途中で多く見かける。ニュージーランドの鹿肉(英語では食用鹿肉はvenisonという)はローファット、ローコレステロールで柔らかくクセがなくて美味いらしい。ちなみに羊のほうは、8ヶ月まではlamb、およそ18ヶ月までのhogget, それ以降のmuttonにわかれ、ニュージーランドで人の食用になるのは18ヶ月までの若い羊のみ。日本などでときどき見かけるmuttonはlambに比べるとにおいが強くなり固くなるので、ニュージーランドの人は普通は食べないという。ではどうするかというと輸出したりペットフードになるらしい。ということは、日本のマトン料理というのは、ニュージーランドのペットフードと同じ!ということになるのか...。
時折、ドライバー氏はクラクションを鳴らすのだが、これは別に危険があるわけではなく、羊を脅かすのが目的でもない。なんせこの道30年だから、途中には知り合いが山ほどいるわけで、その知り合いをバスから見かけるたびにクラクションを軽く鳴らしているのだ。道路にさほど遠くないところで作業をしていた彼の知り合いは、クラクションとフィヨルドラントトラベルのバスを見て、彼だと認識し手を振ったりして挨拶をしている。
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| テアナウの町にある絶滅危惧種 のひとつである、「タカヘ」の大きな像 |
さて、ハワイにも絶滅危惧種が沢山いるが、ここニュージーランドも長年外界から隔絶され固有の生態系をもっていたが、人(マオリ族)が渡って以来現在に至るまで種々の外来種が持ち込まれ、それらの外来種によって多くの固有種が駆逐されていった、あるいは絶滅しつつある。これは特に鳥類に顕著らしく、ニュージーランドの国鳥であるキウイについては年数パーセントの割合で生育数が減少しており、このままゆけば十年後に半分、数十年後に絶滅する計算になるという。さらにタカヘという鳥はもはや全国で230羽を残すのみとなっているらしい。
ハワイにせよ、ニュージーランドにせよもともと蛇やイタチなど鳥の天敵は住んでいないため、鳥達は危険を避けるために空を飛ぶ必要がなかった。そのため飛行能力が退化し、飛べなくなった鳥が、キウイやタカヘをはじめとして多くいた。マオリ族が移住してくるまでは、ニュージーランドに生息した哺乳類はこうもりだけだったという。ハワイといいニュージーランドといい、固有の生態系を持つ島では、現在では固有の種の生存が危ぶまれている。その原因はただひとつ、人間の活動にともない持ち込まれた外来種の動物だ。さらにそこに人間の手による開発が加わってなおのこと、破壊が加速されている。
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| テアナウ湖 | テアナウからミルフォードサウンド まではまだ120kmもある |
ここをまっすぐ120km行くと ミルフォード・サウンド |
テアナウでトイレ停車したあと、フィヨルドランド国立公園に入ってから景色の良いところでバスは何度か停車して、客は下車してときには十数分の軽いトレッキングコースを歩いたり、写真をとったりすることができた。さきほどの子羊拝見もそうだし、11時にはミラーレイク湖畔を散策(まさに山が鏡のような水面に映って美しい)、11時15分には、ノブズ・フラットという場所でトイレ休憩。12時にはモンキー・クリークでトイレ休憩だ。さらに12時20分にはチャズムで最後の風景鑑賞。
12時45分ごろだろうか、ようやくミルフォード・サウンドに到着。ここでしばし待った後、ミルフォード・モナークという船に乗船である。最初にランチをっとってから、私は上部デッキの最先端の場所をゲットする。この船の客のほとんどは日本人、台湾人、韓国人などアジア系の人が多い。見かけは日本人ぽいけど、聞こえてくるのは日本語にあらずという感じ。
そういえば、人口一万数千の小さな町クィーンズタウンには年間120万人以上の客が国内、アメリカ、日本、韓国、台湾、ドイツなどから訪れると、シャトルの運転手のおばちゃんがいっていたっけ。マウイでもドイツ人は意外に多いという話を聞いたのだが、ドイツからだとシンガポールか台北経由になりそうとうな距離があるのにご苦労なことだ。
ともあれ、この船に乗って船内にとじこもっていたのでは、あまりにもったいなすぎる。ランチは、大して美味くないとはいえ、アメリカの大抵のバフェ(バイキング)よりは数倍まともであるが、適当にかきこんで、早々に上甲板に出て船首に近いところに陣取るのが得策である。とにかく、船首、何があっても船首、絶対船首でそれ以外は価値が半減であることは間違いない。船首の絶好のポジションはせいぜい数名くらいしか立てないから、定員300名の中で競争率は大変に高い。食後のコーヒーなんかこの際ほうっておくがよろしい。ただし風がむちゃくちゃ強くて、この上雨が降ってきたら(とにかくここは雨が多い、年間降水量6000mmと東京の数倍以上だ)困るので、最初から雨具を着てゆくのが無難。雨具といっても風が強いから傘なんか無駄。一番良いのは暖かいジャケットを着て、ポンチョを持って出ることだ。
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| フィヨルドの中を行く | 双方の絶壁は1000mほどある | 遠くから姉妹船が来る |
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| 姉妹船とすれ違う | 晴れていると緑が美しいだろう | 大きな滝が... |
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| 雄大な滝 | さらに近づく | 舳先から10メートルくらい! |
景色はまさに氷河により侵食されたフィヨルドそのもの。ガイドブックの写真そのとおりの光景が目の前に壮大に広がる。そそり立つ崖の高さは1000m以上もある(見た目にはそんなに高いとは思えない)ので、ここに東京タワーをたてても高圧鉄塔くらいにしか見えないに違いない。表現力が豊かなはずの日本語でもとても言いあらわせない。これは私の語彙が乏しいだけかもしれぬ。ハワイ島のキラウェアの背後(チェーンオブクレーターズロード側)から見るのもとても雄大だが、これはまた違った雄大さ。いや、ニュージーランドってすごいところだ。
天候は幸い雨は降らなかったが、曇天で晴れ間が無い。晴れ間があると無いでは景色の色合いが随分違うのだが、まあ、雨にあう確率がかなり高いこの地域で、雨に遭わなかっただけでもかなり幸運と思うべきだろう。
この景色をみると誰でも写真に納めたくなると思うが、私が持っていったデジカメSANYOのDSC-SX150というものだ。だが、はっきりいうと焦点距離が38mm程度のコンパクトカメラ、もしくはその焦点距離に相当するデジタルカメラやレンズ付きフィルムでは明らかに不十分だ。人間の視野は景色を見るときは、35mmフィルムカメラの焦点距離換算で、28mm前後だと言われいるそうで、そういう意味からは28mm広角レンズを持った一眼レフは必須であろう。デジタルカメラだと、35mmフィルム換算で28mmの焦点距離を持ったカメラで現在販売されているものは、レンズ交換式を除けば、現在のところ"MINOLTA"の"DiMAGE 7"しかない。
このツアーに参加して、さらに幸運にも晴れたりしたら、普段は写真をとらない人でもがんがん写真をとりたくなること請け合いで、そこでビシバシ写真をとっても、出来上がった写真の画角の小ささにがっくりすることこれまた請け合いである。個人的には、28mmの広角レンズ(もしくはズーム)をつけた一眼レフか相当のデジタルカメラを持参することをお勧めする。荷物になるが、好天に恵まれればその価値は十分にあると信じる。
かくいう私は、このときはレンズ付きフィルムと焦点距離38mm相当のデジタルカメラだけだったので、大いに残念でならなかった。一眼レフとしては自宅には28mm-85mmのズームレンズもある一眼レフを持っているのだが、最近とんと使わなくなってしまった。今回の旅行でデジタルカメラでワイド端28mm相当の焦点距離のズームをもった一眼デジカメが猛烈に欲しくなり、帰国後まもなくMINOLTAの "DiMAGE 7"を購入してしまったくらいだ。
悪いことはいわない、このツアーに参加する人は最低でも28mm(相当)のカメラもしくはデジカメを持参することをお勧めする次第だ。天候に恵まれればかなり綺麗な画が撮れるであろう。
話がそれたが、私の知る限りのいかなる日本語をもってしてもここの雄大さ、美しさを表現することは不可能である。ニュージーランドのクィーンズタウンにきたら他のアクティビティを削ってでも、このコーチクルーズツアーに参加すべきだ。
帰りは実は選択肢があって(本来は予約時に決めておく)、ミルフォードサウンドからクィーンズタウンまで遊覧飛行を楽しみながら帰るというものと、そのままバスできた道を戻るという二通りだ。ただし飛行機のほうは天候次第。私は往復バスの予定だったが、せっかくだからということで気がわかって飛行機の予約をお願いしたけれど、残念ながら天候が良くなくて飛ばないということで、結局バスで戻ってくることになった。
途中で降ろしてもらったほうが宿に近い人もいるので、ガイド氏が各人にどこで下ろして欲しいかを聞いて回っている。私はクィーンズタウンの中央でおろしてもらいたいので、その旨を告げた。
帰りは行きと同じなので観光はせず、途中テアナウでトイレ休憩をとっただけ。あとは時速100kmを超える速度で走っていても、軽く四時間はかかり、私を含めてほとんどの客は夢の中。結局クィーンズタウンに戻ったのは19時過ぎだった。
バスはオコーネルショッピングセンター(O'connell's Shopping Centre)の正面に横付けされ、中ほどと前方の扉をドライバー氏が開けてくれた。しかし、ここで降りる客のだれひとりとして中央のドアから降りようとはしない。みな、前のドアから降りて、往復600km、およそ10時間を1人で運転し続けてくれたドライバー氏にそれぞれ可能なボキャブラリの英語で礼を述べてゆく。
日本国内でもそうだが、ハワイでもこうしたドライバー氏やガイド氏には礼の一つも告げないで去ってゆく客が非常に多くて同胞としては、いかがなものかと眉をひそめることが多いのだが、今回はそうではなかった。今日のツアー客は、中央のドアからだれも降りようとせず、皆前から降りて礼を述べてゆく姿をみてとても嬉しくなった。私もドライバー氏に、「とても素晴らしいドライブでした、快適な旅でした。どうもありがとう」と礼を述べて握手をし、ガイド氏にも(こちらは日本語で)礼をのべて握手をしてフィヨルドランドトラベル社のバスとわかれた。
さて、時刻もちょっと遅めなので、夕食は適当にオコーネルショッピングセンター内のフードコートのコリアン&チャイニーズフードで、フライドライスと野菜と肉の盛り合わせに、ダイエットコークですませて、占めてNZ$12.20。これは絶対にオアフ島のアラモアナセンターのフードコートのパティーズ・チャイニーズ・キッチンのほうが美味である。安くは無いし、まあ、まずくも無いけどとりたててうまくもない。
さすがに10時間を超えるバスの旅は疲れた。部屋でゆっくりジェットバスにでもつかるとしよう。
(第2日目終了)