第1日目

夜明け

途中何度か目が覚めかけたが、朝食を配り始めるざわついた気配で目が覚めたくらいだから、それなりに良く眠れたのだと思う。朝食はフィッシュとオムレツとあったので、オムレツを選んだが、前回も同じものを選んだ気がして、我ながら芸がないと思う。オムレツは機内食の癖に中身がとろんとしているのが不思議だ。ほかに、豆のソテーのようなものと、ポテト、パン、フルーツ、オレンジジュース、ブルーベリーヨーグルト。最後の一品を除いて完食。

夜明け前の水平線上方に浮かぶ月が幻想的 機上の夜明けは大変美しい
夜明け前の水平線上方に浮かぶ月が幻想的 機上の夜明けは大変美しい

そういえば、夕食のときのナイフとフォークはプラスチックだったが、この朝食では前回同様金属製のナイフとフォークだった。ちなみに、復路も完全に金属製のナイフとフォークだったので、日本を出発した夜の夕食だけがプラスチックのナイフとフォークだったことになる。なぜ、一部だけプラスチックなのかその理由はよくわからない。機内食を作った会社が違うからなのだろうか。

外を見ると、雲海の水平線が茜色に染まり初めていて、その上方には三日月が薄暗い空にくっきり浮かんでおり、なんといえない幻想的な雰囲気だ。この風景が好きで、ひょっとしたらこういう光景がみられるかしら、という淡い期待も私の海外旅行の楽しみの一つだ。そして、ニュージーランド時間の午前6時50分ごろ、太陽は完全に雲海の上方へ抜け出た。

何度見てもこの光景は美しいと思う。この光景は夜日本を飛び立ち、現地に朝到着するフライトだからこそ見ることができる。本当に見たいと思えば、予約時点から取る席を考えなければならない。たとえば、ニュージーランドやオーストラリアへ飛ぶなら、進行方向左側の窓際、すなわちA席でないといけない。朝日が主翼の端にきらめきとても美しくなるので前後の位置も重要だ。筆者の場合はほぼ主翼の上で、この状態のとき上の写真のように見えるわけだ。

マスク

私はマスクというのは大嫌いだが、今回はSARSを口実に、本当は10〜20%という超低湿度から咽を守るために持参した。この時期の東京は気候が不安定で暑くなったり涼しくなったりして、風邪をひいている人がすくなくない。そのためか、ときどきあちらこちらで軽い一〜二発の咳が聞こえることがある。こんなのは普段の通勤電車でも同じなのだが、マスコミの連日のSARS報道による恐怖への刷り込みが成功しているのか、不安ではないというと嘘になる。実際問題、一般のマスクではウイルスは防げないし、ウイルスを防げるタイプだと息苦しくて日常生活にはかなり厳しいらしい。マスクはむしろ風邪にせよインフルエンザにせよ、かかっている人が飛沫を撒き散らさない効果の方が大きい。

クライストチャーチ国際空港

機はほぼ定刻通り29日の午前8時30分頃、クライストチャーチ国際空港に到着。見覚えのある風景だ。機内もすいているし慌てることもないので、ゆっくりと出口に向かう。ここではオークランド行きの客もいったん下ろされるのだが、クライストチャーチまでの客が先である。

入国審査官の女性に、にっこりと"Good morning." と挨拶するのはおきまりだ。日本人はあまりに無愛想すぎる。入国審査は何事もなく通過し、次にスーツケースが出てくるのを待つが、次から次へと出てくる荷物の上を、麻薬操作犬ならぬ検疫対象物探知犬のビーグルが飛び回っている。乗るときに買った水もキャンディ(のど飴)の残りも機内に放棄してきたので、申請するものもなく犬の捜査も食べ物発見用エックス線による捜査も無事荷物は通過した。税関を出ると目の前に両替がある。前回の残りがNZD87.00あるが、とりあえず10,000円を両替しておく。

ロビーへ出て、まず向かうのがインフォメーション。そこでシャトルの乗り場を尋ねると、税関からの出口を背に左へ出れば良いと言うことだった。出てみると、丁度シャトルが止まっていたので、ドライバー氏に声をかけて目的のクロイドンハウスへはNZD15.00であることを確認し乗り込む。車内でしばらく待っていると、現地係員に引率された日本人団体ツアー客がぞろぞろとツアーバスのほうへ歩いて行く。しばらくして、ようやく発車。急ぎならばタクシーを使うが別に急ぐこともない。

Croydon House Bed & Breakfast

清潔なシャワーブース
清潔なシャワーブース

約十分程度のドライブで宿に到着。荷物をうんこらせと石段のところを持ち上げながら中に入ると、フロント?の付近のパソコンを触っている男女が居たので声をかけると、私はここのものじゃあない、という。なんだ、客じゃんか...。おちついて当たりを見回すと用事があるならこのボタンを押せというサインがあるので、押してみると背後でベルの鳴音がして、痩せて骨張っている女性が現れた。日本から予約した旨と名前を告げたら、朝の10時前だというのに、部屋に案内してくれた。ラッキー。

部屋はB&Bのシングルのエンスイート(シャワー・トイレ付き)である。まあ、子供部屋にシャワーとトイレが着いた感じだが、一人には十分だ。これで朝食付きの税込みNZD90.00だから、クライストチャーチという観光地まっただ中の便利な場所にある宿としては安い。ただ、一般にはニュージーランドは農作物は安いし、食品もまあ安いが、こうした宿はあまり安くない。といっても日本はもとよりハワイなんか比べものにならないくらい安いのではあるが...。

ベッドは筆者好みで柔らかで心地よさそうだ。何が嫌だって、一時期日本では「ベッドは硬いほうが良い」なんてのが流行った時期があって、その頃のベッドはどれもこれもアホみたいに硬くて、どうにも心地わるいものばかりだったが、ここは安心して眠れそうだ。

室内の備品としては、目覚まし時計(夏時間[DST=Daylight Saving Timeという] のままだったので、一時間補正してやる)、湯沸しポット、紅茶のティーバッグ、インスタントコーヒー、オイルヒーターなどがある。湯沸しポットというのは、およそアメリカのホテルではなかなか見かけないもので、紅茶文化の血を引く国ならではだろう。アメリカのホテルでは当たり前にコーヒーメーカーがあって湯沸しポットがないから、沸騰した熱いお湯というのを入手するのは非常に困難だが、ニュージーランドにせよオーストラリアにせよ、今まで泊まった範囲ではコーヒーメーカーは無くても、強力な湯沸しポットがあるので、いとも簡単に1リッターとか2リッター程度の熱湯が入手できるのは、非常に嬉しい。

Croydon Houseの全景 シングルルームのベッド
Croydon Houseの全景 シングルルームのベッド
ティーセットとヒーター 湯沸しポットがあるのが嬉しい
ティーセットとヒーター 湯沸しポットがあるのが嬉しい
唯一の暖房はオイルヒーター コンパクトな洗面所
唯一の暖房はオイルヒーター コンパクトな洗面所

初めてのChristchurchの街

曇り空のCathedral
曇り空のCathedral

とりあえず部屋でリュックを軽くして、トイレを済ませ、外が寒い(空港到着時には7度だった)ので、セーターを出してシャツの上から来て丁度良い。

この時期のニュージーランドは秋だけれど、日本同様南北に細長い国なので、北端のオークランドと、南島のクィーンズタウンやクライストチャーチとの気温差はかなり大きい。クライストチャーチは南緯43度31分なので、日本で言えば北緯43度12分に位置する小樽あたりに相当し、一方オークランドは南緯36度51分で、日本では茨城県日立市あたりに相当する。まあ、それくらいの差があるので、気温も違って当然で、温暖なクライストチャーチではあるが、秋深く初冬一歩手前という感じだ。

筆者の場合、一人旅では始めての場所で到着日は徹底的に歩き回ることにしている。まずは、主な場所の地図と現実との関係を頭の中でマッピングするのである。これは大いに足が疲れるのだが、遠出と違って嫌になったら休めるし宿へ戻っても良い。これが楽しいし、その後格段に行動が楽になるのだ。大切なのは、街中は自分の足で歩くこと。自分の足を使うことで、体で地理を覚えるのである。

まず、向かったのは街の中心部のCathedral Squareである。ここには、ビジター・インフォメーション・センターがある。ここで、パンフレットやバス案内を調べたりでまずは時を過ごすわけだ。こうしたいわゆる観光案内所は便利なところで、とにかく情報収集場所の筆頭候補であろう。日本のツアー客を海外のビジター・インフォメーション・センターで見かけることは非常に少ないのは不思議である。まあ、結局は言葉の障壁を怖がっているのかもしれないけれど、怖がっていては道は開けない。日本のツアー会社が用意した高価なツアーやツアーデスクはどこの街にもあるというわけではない。地元のビジター・インフォメーション・センターをうまく使うのも、旅を楽しむポイントだと思う。

フリー(無料)シャトルでスーパーマーケットへ

そういえば、日本でインターネットを使ってクライストチャーチの情報を調べていて知ったのだが、クライストチャーチには無料のシャトルバスがあり,街を南北に循環コースで結んでいる。どこからでるのかしらん、と思って外へでて様子をみていると、すぐにわかった。黄色く塗られたバス停があり、そこに "Shuttle" と書いてあるのである。

まずは、これに乗るべし。確か南の方にPak'n Saveという食品スーパーがあったはず。しばらく待つと、バスがやってきた。本当は黄色い電気バスだが、ときどき赤い車体のRed Busに、Free Shuttle と張り紙をしたものがやってくる。これに乗ることしばし、黄色い看板のPak'n Saveが見えたので、紐を引いて降車の合図をする。だが、合図をして降りた先のほうに、もう一つバス停があって、実際にはPak'n Saveの看板が左手に見えてから合図をしても遅くないことが、後日判明した。

このフリーシャトルは、街中だけを走ることもあって、バス停の間隔は数百メートルも無いようなので、一つくらいバス停を乗り過ごしても全然平気だし、ぐるぐる回っているので、乗り過ごしても気にせずにバスの車窓から市内観光をするのも一興だと思う。

中にはいると、アメリカンスタイルの大型スーパーだけれど、売っているスタイルはCOSTCOに近い感じ。あるいはK-Martの食品版かしらん。とりあえず、クライストチャーチでは食品の買い物をするつもりはないので、中をみるだけにするのだが、ニュージーランドやオーストラリアのスーパーは一方通行出口無しなので、バッグをもっているときに手ぶらで出ようとするとバッグの中身を見せる必要があったりする。それも面倒だし、小腹がすいたときのために、キットカットを二つほどに。ピーナツと、レモンキャンディを求める。外へ出る前にPhone Cardを買い求める。これはNew Zealand Telecomのカードではなくて、国際電話が安くなるタイプ。NZD20.00で140分間日本と話せるから、一分約NZD0.15、つまり日本へかけても一分間およそ10円と日本の市外通話よりはるかに安い。

昼食

パニーニとダイエットコーク
パニーニとダイエットコーク

再び、Shuttleに乗り、そのままSquareでは降りずに北部を一周して再びSquareに戻ったところで下車。

そうえいば、ぼちぼち腹がすいてきた。筆者の本能(って何の本能だ?)によれば、このあたりにフードコートがありそうな匂いがするが……、と思って見上げたらありましたねぇ。 "City Mall" 近くの "The Crossing" というところがそうである。

ここには、中華、インド、寿司など何種類かの店があったけれど、筆者はその中のタンドリーチキンのパニーニとダイエットコークを注文。パニーニは焼きすぎて底がこげてまっせ。まあ、でも、味はまあまあかな。

よく、海外に出て料理がマズいという人がいるけれど、日本国内と同じ舌の基準で比較しているのではないかしらん。味覚なんて個人差がめちゃくちゃ大きい上に、全く異なる文化の地の味を同じ基準で比較しても仕方ないと思う。筆者の場合、舌の基準を切り替えるし、こうしたB級、いやC級グルメが楽しみの一つなので、他の日本人ツアー客の基準では、あまり旨くはないものも多いかもしれない。

さて、お腹もふくれたので、これからどうするか。前回のニュージーランド旅行の経験で、この街も夜が早いのはわかっているので、まずはアルコール主体ではなく一人で安くで夕方六時頃でも食べられそうな店かフードコートを探さねばなるまい。

再び街歩き

この街は碁盤の目になっているから分かりやすそうなのだが、京都と同じでどこもにたような風景があるので、自分がどの通りにいるか、どこを向いているのかわからなくなってしまう。一つの目安はcathedralだが、あれは見えそうで離れると全然見えないので、目印としては役に立ちそうでたたない。それよりはCathedralのとなりのニュージーランド銀行の高い建物だ。これとCathedralの位置関係を覚えておけばどの方向を向いているのか良くわかる事を発見した。

この街にも本屋が多いのだけれどやはり本が高い。円換算すると日本のアマゾンで買う方が安かったりするし、そうでなくても店頭洋書と同じくらいの価格か、へたすればそれより高い。

そのあとも地理間隔を養うべくPostshop(ニュージーランドの郵便は民営)へ行って、ポストカードを日本とカナダへ出すと料金を調べたり(どちらもNZD1.50)、絵はがきを買ったりしてくたびれたので、Squareのスターバックスに入ってカプチーノを飲む。NZD3.60なり。カプチーノを飲みながら、妻と子とカナダ人の友人などに絵はがきを書く。子供あてのものは、全部英語で書いてやることにした。こういうときにも、こどもには英語の勉強をさせることを忘れないのだ。

夕食

なかなか美味な組み合わせのDinner Combo
なかなか美味な組み合わせのDinner Combo

さらにうろつくことしばし、時刻は夕方五時を回った。東京ならこれから活気が出てくる頃だが、すでに閉め始める店も出てくるし、フードコートもかなり終わっていたり、終わりかけていたりする。

とりあえず、City Exchangeというバス発着場の上で2つのデパートに挟まれた店、つまり、昼食を食べた場所に向かう。ここは、この時間も営業していそうだが…、他にはないかしらん。フードコートではないが、和食と韓国料理の店でMON'S 24というのがあったっけ。まさか24時間営業ではないとは思うが....。これはそのうち行ってみるとして、今夜のところは、まだ勝手もわからないので、このフードコートで済ませることにする。

とりあえず、昼食と同じThe Crossingへ戻るが、今度は中華にした。Dinner ComboというのがNZD8.50 (580円ほど) である。付け合せにはフライドライスかフライドヌードルのどちらかを選び、あと料理二品を選ぶ。筆者はフライドライス、チリビーフ、それに温野菜をたのんだが、これら三品を混ぜて食べると絶妙に美味しい事を発見した。ちょっと味は濃い目だけれど、下手なチャーハンなんぞより数倍うまい。これはいい。量はもこれでもかというくらいたっぷりあるし、これはいいぞよ。大いに気に入った。

とはいっても、さすがに、毎晩来るわけには行かないけれどね。

お洗濯

満腹になったので素直に宿に戻り、シャワーの前に靴下とパンツの洗濯をする。この宿にも洗面所には例にもれずタオルをかわかすヒーターがあり、環境保護のために再度利用したいタオルはここで乾かしておくのだ。

ちなみに、海外のホテルなどで「タオル交換がされていない!」と怒っている人がいて、話を聞くと、交換して欲しいタオルも日本人らしく几帳面にタオルかけにきちんとかけておいたのだというケースがあった。交換して欲しいタオルは洗面所の床に置く、交換してもらう必要がない(別に交換される分にはかまわないけれど…)場合は、タオルかけにきちんとかけておく、というのが原則である。

洗った下着は、最初は、このタオルヒーターで乾かせばよさそうに思えたが、パワーが弱くて朝までに乾く自信がないので、ちょっと乱暴な方法をとることにした。この部屋にはオイルヒーターがあり、今の季節ですら夜はこれをつけないと寒い(ということは真冬に来たらどうなるのだろう?)のであるが、そばでこの旅行記を書きながらオイルヒーターの上で乾かすことにした。ストーブなら間違いなく火事になるが、オイルヒーターはそこまで熱くならない。じっくりさわるとやけどしそうなくらいでしかないのであるが、これが実に素早く心地よく乾く。靴下はもとより男性の下着のシャツも簡単に乾いてしまった。こりゃいいや。でも、念のため目を離さないのは当たり前の用心。

ともあれ、今日は良く歩いた。さて、これから明日のプランを立てることにしよう。

(第1日目終了)

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