「お替わりはいかが? 〜1433〜」

1999.06.06 (Sun) ==========================

□ 日米事前協議

 6月5日の毎日新聞社の報道によれば、琉球大学の我部教授がアメリカ合衆
国国立公文書館で、とある文書を入手したとのことだ。それは「1969年4
月28日付米国家安全保障会議の "対日政策"(国家安全保障研究メモランダ
ム)の付属文書」ということで、朝鮮半島有事は事前協議の対象外とするとい
う日米間の密約があったことを示すというものだという。

 さらに同報道によれば、事前協議対象外となるケースに関しては、日米両国
政府が安全保障協議委員会の準備合意議事録に「秘密の了解」として盛り込む
交渉をしたことが記されており、在韓国連軍に対する武力攻撃が起こった時に
は「日本に駐留する米軍の戦闘作戦は事前協議を経ないで開始されることが合
意されている」などと書かれているのだという。

 これに対して政府側は「朝鮮半島有事も事前協議は必要である」という姿勢
を崩していない。そもそも日米安全保障条約では、アメリカ軍の配備・装備に
関する重要な変更や先頭作戦行動については、アメリカが日本に事前協議する
ことになっているというが、現実には一度も行われたことが無い。これは事前
協議が必要な事態は発生していなかったか、あるいは完全に無視されているか
のどちらかだ。私は個人的には後者の可能性が非常に高いと考えているし、ま
た、朝鮮半島有事に際して米軍が作戦行動を起こすのにいちいち日本政府に事
前協議するとは考えにくいだろう。

 似たような話は以前にもあって、同じくアメリカの国立公文書館で、核兵器
を積んだ米艦船の日本への寄港・通過を1963年に大平正芳外相が米側に認
めていたことを記す文書が見つかっているが、やはり政府側は否定してる。

 冷静に考えて、核搭載艦船が日本に寄港するにあたって、グアム島のアブラ
海軍基地に達よって核を下ろしてくるわけが無いし、戦略的にそんなことが許
されるわけが無い。日本を拠点とする米軍艦船や航空機に核装備があるのは、
日本政府は決して認めないし、米軍もクビを縦には振らないが間違いないだろ
う。

 日本政府には日本政府の立場というものがあるのは理解できるが、二国間関
係において、このように戦略的に見て間違いないであろうと推定される事と政
府側見解との見解の決定的なずれ、国立公文書館で発見された文書の記述内容
と政府見解が正反対であること、どれをとっても政府に対する国民の信頼――
もともと信頼された政府だとは到底思えない――をより浅いものにしてしまう。
軍事協議を100%開示するわけにいかないのは理解できるが、一旦嘘をつくと嘘
を守るためにさらに嘘を重ねることになるだろう。

 あまりにも国民を馬鹿にしすぎてはいないだろうか。