「お替わりはいかが? 〜1569〜」

1999.10.20 (Wed) ==========================

□ レイオフ

 先日、日産自動車のカルロス・ゴーン最高執行責任者 (COO) が、向こう3
年間で東京都武蔵村山市にある村山工場など国内の五つの生産拠点を閉鎖し、
従業員21000人を削減し、さらに部品購入先も半減するという経営再建プラン
を発表した。日産自動車の経営状態の悪化は、カルロス・ゴーン氏が現れる以
前からかなり深刻な物であるのは周知の事実であり、このリストラクチャリン
グプランも別に驚くほどのものではない。従業員数の削減割合などはむしろ少
ないくらいのものであろう。

 日本経済が不況に突入して最初に影響を受けたのは中小企業であり、中小企
業は経営縮小・人員整理どころか会社そのものの存在がなくなってしまったと
ころも多くて、その結果完全失業率は5%に届こうとしている。大企業は中小企
業より体力があるから、経費削減や不採算事業からの撤退などでしのいできた
のだが、不況が長引きすぎてそれもついに限界にきたところが多い。

 つまり今まで何とか耐えてきた大企業もついに、雇用調整に手をつけざるを
えなくなってきたということだ。企業にとって人は財産であるのは明確な事実
であり、社員無くして企業は存続し得ない。雇用調整の槍玉にあがるのは、そ
の企業がなんとか生き残るための事業戦略に必要でない人間だ。特につぶしの
きかない高齢社員がそのターゲットとなり、グウタラ社員は言う間でもないと
して、今までその企業で「この道一筋ウン十年」とかいった人もその専門分野
が、企業にとって今後の事業分野とは異なる場合は、「その企業にとって役に
立たない」社員としてえ人員整理の対象になりうる。

 日本の企業の場合、はっきりレイオフしたりすることは少ないが、その分や
り方は非常に陰湿な面もあるようだ。例えば解雇したい人間を一つ部署をつく
りそこに集めて閉じ込め、とにかくつまらない仕事・役にもたたない仕事をさ
せトイレとランチ以外で室外に出たら業務怠慢として徹底的になじり叱りノイ
ローゼに追い込んで自主退職させるとか、営業とは無縁だった社員を営業部門
に配属し、とんでもないノルマを言い果たして達成できなければ(出きるわけ
が無いし達成できれば優秀なセールスを発掘したことになる――この手は某大
手企業で昔から行われてきた方法だ)ガンガン叱責し自主退職に追い込む。あ
るいは仕事を与えないでちくちくと嫌味ばかりを言い、自らやめるようにしく
んでゆく。ここで大切なのは首にするのではなく、自ら辞表を出させるつまり
自主退職に追い込むことだ。普通退職より自主退職のほうが退職金が半分程度
で済むし、解雇するとあとあと裁判沙汰になったりするが、自主退職ならそう
なりようがないからだ。

 実に卑劣な手をつくすようで、これがどこかよその会社の出来事だと思った
ら大きな間違い。どうも結構いろいろなところでこの手が横行しているらしい。
こんな陰湿な手を使うなら、今後の事業方向性と社員の能力を明示しはっきり
と解雇したほうがよほどすっきりするし、社員個人の精神的ダメージははるか
に少なく再出発しやすい。こうした陰湿な手法をとる企業は、その名前を公表
されるべきであろうが、証拠が残らないのがさらに陰湿であり、下手に名前を
出すと逆に訴えられたりしかねないのが厄介だ。

 人員削減はやむを得ないが、こうした陰湿な手段に訴えるのだけはやめてほ
しいものだ。経営者はもっとフェアに望むべきであり、こうしたやり方にたよ
るのは卑怯なことこの上ない。