「あいちゃんの散歩道」

第18回 変わったヘッドフォン二種


 ここ数日、ちょっと変わったヘッドフォンを二つ購入した。FMステレオヘッドフォンラジオ(SONY SHR-M1) と、ノイズキャンセリングヘッドフォン(SONY MDR-NC20)である。どちらもソニーのサイトで「SHR-M1」、あるいは「MDR-NC20」で検索すると出てくるはずなので、詳細なスペックや外観などはソニーのサイト(http://www.sony.co.jp/)を参照していただきたい。この文中にじかに上記製品へのリンクを書いてもよさそうなものだが、私のポリシーでは、こうした他のサイトへのリンクというものは、あまり深い階層のページをダイレクトにリンクすべきではないと思っている。なんとなくモラルに反するような気もするし、なにより具体的にはサイト側がファイルやディレクトリ構成を変えたときに、リンクアウトしてしまうことが多いからだ。その点、トップだけを指し、そこからのたどり着く方法だけを言葉でしめしておくと、若干不便なことはあるが、リンクとしての寿命は長くなる。また、サイト側としてもいきなりサイトのど真ん中に飛んでこられるより、ちゃんと正面玄関から入ってくれるほうがうれしいはずだ(私自身が公私ともにWebマスターでもあるからよくわかる)。

 話が脱線してしまった。Webサイトの話ではなくてヘッドフォンの話である。まずFMステレオヘッドフォンラジオであるが、上記ソニーのサイトを見ていただくとわかるが、単四電池一本をヘッドフォン内に内蔵させて、プリセット可能なシンセサイザーステレオFMラジオが内蔵されている。周波数はボタンを押している間だけLEDによる数値表示がヘッドフォン部分に現れるようになっている。ヘッドフォンをかけていては見ることはできないが、プリセットする際に見ることができれば十分ということだろう。

 このヘッドフォンラジオは、ステレオミニジャックがついていて、ラジオとしてつかわないときは普通のオープンエアーヘッドフォンとして使えるというものだ。つまりどんなヘッドフォンステレオカセット/MDであっても、たちまちFMラジオ付きに大変身というわけだ。ヘッドフォンステレオカセットにはFMラジオ付きはあるが、MDのほうはノイズの問題なのか需要の問題なのかコストの問題なのか、とにかくほとんど見かけない。また、このFMラジオはワイドバンドなので海外でも使えるし、国内ならテレビの1〜3chの音声が受信できる。

  

SONY SHR-M1 (右のように操作すると周波数が赤いLEDで表示される)

 さて、FMラジオとしての性能だが、ヘッドバンド(?)の部分にアンテナが内蔵されているそうだが、やはり感度はいまいちである。しかし、ヘッドフォンステレオなどと接続するためのコードを接続すると、それがアンテナ代わりをするためやや感度は向上するが、やはりマンションの室内ではちょっと厳しいものがある。とはいえ、愛用のポータブルMDにFMラジオがつくのはこれは大きなメリットである。しかし、耳掛け+ヘッドバンド式の常として、バンド部分のプラスチックのばねの力が強くて、長くつけていると耳がいたくなってくるのはちと困る。また。折りたたみ式ではないため持ち運びにはさらに困ることになる。近頃のこのタイプのヘッドフォンは折りたたみ式が多くかなりコンパクトになるのに、そのまま折りたたみ無しというのはいただけない。まあ、ヘッドバンドの中にケーブルが通りアンテナ代わりになっているというから、構造上やむをえない選択だとは思うがあと一工夫欲しかったという感じだ。

 もう一方のかわりだねはノイズキャンセリングヘッドフォンである。英会話の教材テープやCD、MDを電車の中で聞いて勉強するというのはよくある光景だが、電車やバスの音がじゃまになって聞き取りにくいことはなかったろうか。とくに地下鉄になるとほとんど聞こえなくなるはずだ。音楽を聞き流す程度ならどうでもいいのだが、真剣に、それも慣れない外国語を聞き取りたい場合は地名的ですらある。こういう時に役に立ちそうなのがこのヘッドフォンである。ヘッドフォンにマイクがしこまれていて、1500Hz以下の低音部の外来雑音を拾ってそれと逆相の音を作りだしてヘッドフォンの本来の音とミキシングしてやることで雑音を打ち消そうというわけだ。オーディオ的に考えれば余計な回路を通るわけで、当然のことながら音質劣化は避けられないのは言うまでも無い。しかし、あのゴーゴー音に悩まされるずに音楽や外国語教材が聞けるとしたら嬉しい話しだ。外来音にまけないようにするためには、それだけボリュームをあげなければいけないが、これは耳に悪いし、周囲への音漏れも避けられない。

  

SONY MDR-NC20 (折りたたむと右のようになる)

 この二種類のヘッドフォンをどちらもヘッドフォンとして外部音源につないで私なりに音質テストをしてみた。ちなみに私は昔はオーディオマニアだった人間であることをひとことつけくわえておこう。音源としては、ポータブルMDプレーヤー二種(SHARP MD-ST521とMD-MS100)、ばらコンポ(スピーカー:DIATONE DS-165, プリメイン:ONKYO Inegra A815RS, CD:SONY CDP-591)で、クラシック、マライアキャリー、飯島真理、英語教材などだ。

 まずはMDR-NC20のノイズ低減効果のほうだ。ためしにこれをかけて(他の音源には接続せず)自宅のバルコニーに出てみた。密閉型なのでかけるだけでも低域雑音は低減されるが、ノイズキャンセラのスイッチを入れてみると、「おお、こいつはすごい!」道路を走る車が音も無く電気自動車のように走っている感じがするではないか。これは低域雑音の低減には効果が期待できそうである。

 次は音質の感想だ。まず、音源はポータブルMDプレーヤー(SHARP MD-ST521)である。まあ、ちゃちなポータブルMDなので音源に多分の期待はできないのは百も承知なのだが、とりあえず、付属のインナーイヤーフォンだとそれなりにまあなんとか許せる音が楽しめるタイプである。

 そして音質だが、この音源にこのヘッドフォンだと、出てくる音は超へぼいではないか。もともとオーディオマニアの私のいうことであるから、結構シビアかもしれないが、低域がまるくなり、中高域から高域の伸びが感じられない。全体的に詰まったような音、なんというか、LZH圧縮、あるいはZIP圧縮をかけたような音である。しかし、そのためか人の声は結構わかりやすく聞こえるので、車中での語学学習向きかもしれない。クラシックとか聞くと結構AM放送的な音になっちまうのはいただけない。まあ、うるさいことを言い過ぎなのかもしれないが、こもった感じの音はやはり許せないしストレスがたまる音である。

 一方FMヘッドフォンラジオ(SONY SHR-M1)のほうだ。こちらをラジオとしてではなく付属コードを使ってラジオのスイッチをいれずに普通の耳かけ型のオープンエアータイプのほうで使ってみる。これは、若者向けのシャリシャリと中高音をやたら強調した音作りで、これまたなんだかなぁ、って感じが否めない。しかし、MD-ST521との組み合わせだと、バランスからゆくとこちらのほうがちょっといいかなって感じだ。すくなくともこもった感じの音ではないだけマシである。地下鉄騒音には効果ないのはちょっと悲しいし、ドンシャリっぽくてごまかされる感じははっきりとしている。

 次に音源をまともな音を出すオーディオコンポーネントにしてみる。これで、まず MDR-NC20 を聞いてみよう。アンプのトーンポジションはフラットに設定しておくのはいうまでもない。ちょっと低域が足りないけれど、さきほどのポータブルMDプレーヤーほどひどいカマボコ特性ではなく。これなら許せるって感じである。比較的フラットに近い感じで何かを意識した音作りということではなさそうな音になる。

 続いて、ヘッドフォンラジオでラジオをオフにしてヘッドフォンとしてきいてみる。トーンポジションはフラットだが、こんどはポータブルMDの時にちょうどよかった中域から高域にかけてが思いっきり持ち上がり、しゃんしゃんしてとても耐えられない。こりゃいかん、こりゃひどい。低音はオープンエアータイプであることを考慮してもかなりの不足です。イコライザで1KHz〜4KHzを思いっきり持ち上げた感じで、聞くに堪えない。だめ、だめ、即座に却下。内耳と聴覚神経が変になりそうな音だ。

 ヘッドフォンそのものの特性としては、やはり倍近い価格の差もあって、MDR-NC20のほうがかなり癖がない。したがって、まっとうなコンポーネントステレオに繋げば、MDR-NC20は本格的ヘッドフォンとまでは行かないけど、それなりにまともな部類の音を聞かせてくれる。しかし、ポータブルMDなど癖のある音づくりをした機材との組み合わせになると、その癖のある音がもろにでてしまう感じで好ましくない。ポータブルMDプレーヤーの音のひどさ、できそこないの料理ような音をあらためて認識した。

 このMDプレーヤーで音楽を聞くならSHR-M1のほうがいいけど、車内で語学MDを聞くなら、MDR-NC20のほうがいいようだ。しかし、一番いけないのはMDじゃないのか?そもそもMDの音そのものがかなりひどい音だとは常々思っているが、このポータブルだとそれに輪をかけてひどくなる。ポータブルMDはポータブルカセットよりはマシなものが多いけれど、どちらにせよあまり良い音づくりはされていないようだ。経験的にはドンシャリ(低域と高域だけを強調した派手な音)か、ボーカルむけに1KHzから4KHzあたりを持ち上げた(聴力検査をするとわかるが、たいていの人がもっとも感度が良い領域、ヒューマンボイスに最適化された人の耳のもっとも感度が高い音域)だけのものなどがほとんどなのが悲しい。

 まずは、ポータブルではないまっとうなMDレコーダで録音したお気に入りのCDを、まっとうなシステムで再生して、比較的まっとうな音が出ていることを確認してから、このノイズキャンセリングヘッドフォンとそのMD(ディスク)を持参で店頭で選ぶとよいのかもしれない。

 最後に、もう一台のポータブルMDでも同じ実験である。機材は録再タイプのSHARP MD-MS100だ。こちらのほうが、アナログ系はMD-ST521よりまっとうなはず。実際音をきいてみると、SHR-M1のほうは、コンポで聞いたときと同じくかなりの派手な音できくに耐えない。一方MDR-NC20のほうが、これは結構いける。

 もう一度再生専用のMD-ST521に戻すと、やはりこちらのほうがこもる感じがひどい。うーん、なんだかなぁ。まあ、もともとポータブルMDはその程度のものだが、しかしちょっとひどい。もっともポータブルMDでクラシックを聞く奴が間違っているのかもしれない。市場としてはそういう客は少ないだろうから、派手な音を好む若年層に焦点があっているはずなのでやむをえないかもしれない。それにオーディオ機器には似合った組みあわせというのがあり、ポータブルMDはポータブルのちゃちなヘッドフォンで聞いたほうがよいのである。そういう意味ではオープンエアータイプのノイズキャンセリングヘッドフォン(SONY MDR-NC5)もいいかもしれない。そのうち購入して実験してみるとしよう。


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