特選「お替わりはいかが?」
〜二本松紀行(1997/8/29-8/31)〜


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第1日目

 一九九四年の夏から、妻の従姉妹家族と毎夏秩父に行くのが恒例になっていた。秩父の小鹿野町にある越谷市の宿泊施設「おがの山荘」(ちなみに私も従姉妹も越谷市には無縁である)を利用していた。しかし三年連続になるとさすがに飽きてきたというのもあって、今年は別のところにしようということになり、従姉妹のほうが「グリーンピア二本松」という公共の宿を見つけてくれた。 そういう訳で今年は福島県の二本松である。

 大宮12:38発やまびこ129号仙台行きに乗ると、郡山着は13:45である。郡山で従姉妹家族と合流しそこで車で拾ってもらうことになっている。こちらは電車から遅れることはあまり考えられないが、向こうは車だから渋滞などにはまることもありうる。そこで私のPHSと携帯の番号を教えておき、遅れそうなら連絡してくれと伝えておいた(従姉妹は携帯のたぐいは持っていない)。だが、私たちが改札の方に降りて行くと迎えに来ていた従姉妹の姿を無事発見することができた。聞くところでは道中非常にすいていて、想像以上に早くつきすぎてしまったとのことであった。合流して、向かうのは「グリーンピア二本松」である。

 この施設は厚生年金保険や国民年金の年金積立金をもとに、年金福祉事業団が運営しているもので、手軽な価格――一人一泊二食で九千円から一万四千円――のわりに、施設が充実しているのが魅力である。

 あだたら高原内にあり、標高は五百数十メートルのところだ。温泉はちかくの岳温泉から引いてきており、男女ともに十種類の浴槽があり楽しませてくれる。また年中営業している温水屋内プール、体育館、パターゴルフ、フィールドアスレチックなどもありスポーツを楽しむにももってこいだ。敷地が非常に広大で芝生が美しく標高も高いので、周囲の見晴らしもとにかく抜群なのである。なかには写真にとると、これが日本か、という感じに見えてしまうところもあるから驚く。

 部屋につくと、娘達は従姉妹の夫にせがんで、早速体育館へ向かってバドミントンだか卓球をやりにいった。従姉妹の娘はスポーツ少女だからいいが、我が娘はスポーツ音痴だからおそらく遊びにさえならないとは思うが、まあよかろう。私は広い敷地を探索すべくデジタルカメラC-820Lを下げて外に出た。

 ここには敷地を囲むように、ミニSLがのんびりと走っている。マウイ島のサトウキビ列車のミニサイズといったところであろうか。ほかにもサイクルモノレール、レンタサイクルなどがあるようだ。建物も室内もきれいにしてあり、屋外はとにかく美しく広々したところで、非常に心地がよい。

 敷地を散策したあと――結構広いので疲れる――体育館をのぞいて、従姉妹の娘と久々にバドミントンなどをやり、汗をかいたので温泉に入ることにした。 ここはうたせ湯、寝湯など十種の入浴が楽しめる。四十分ほど温泉に入ったらさすがにのぼせてきたし、何より腹が減ってきた。

 ここでの予定は二泊三日。明日はプールとパターゴルフとバドミントンかな。


第2日目

 二日目、今日も天気が良い。このあたりは湿度が比較的低いらしく、日差しは強いから日向にいるとそれなりに暑いし日焼けしそうだが、風が心地よく、日陰に入ると涼しいので心地よい。

 宿のレストランでビュッフェスタイルの朝食――和食と洋食の両方が用意されているのが良い――を済ませてから、施設利用のためのフリーパスを購入した。いくつかの施設を使うことやそのたびに支払いをすることを考えると、やはりパスのほうが楽である。

 最初はパターゴルフである。私の偏見によればゴルフなんぞはスポーツとは言わない。広大な林や山を切り開き自然をぶちこわしにして、雑草が生えないように大量の農薬をまいて、少数の人間が玉打ちをするなんて愚の骨頂だ。自然破壊の一翼を担うといっても過言ではない。それはともかくパターゴルフである。こんなものは遊びだ。ゴルフに通じる醜悪さはあるから本音を言えばあまり気は進まないが、まあ仕方なかろう。娘はPAR3のコースを何十もたたいているが、一カ所だけ見事な偶然でホールインワンを決めたのには驚いた。

 次はサイクルモノレールだ。ここのものは小規模で高さも低いのであまり面白くはない。あれはカーブの手前から加速して速度を上げて曲がるくらいしかスリルがない。娘達(娘と従姉妹の娘)は気にいったらしく、係員に申し出て二週目に突入した。人が多ければそんなことはできないのだが、なんせ空いているのだ。年寄りが比較的多いから、そういった施設は利用せず温泉にはいっているだけだからかもしれない。

 サイクルモノレールで体を少し動かした後、小休止を挟んで妻と従姉妹はミニSLに乗りに行った。従姉妹の娘はフィールドアスレチックを所望し、父親を引き連れていったが、私は娘とタンデムのレンタサイクルを借りて、お花畑のほうにいってみることにした。

 舗装されたサイクリングロードが山肌を左右にカーブしなだらかな起伏をともなって続いている。登りの時はつらいが、下りの時はとても気持ちがよい。 街中に近い道路をはしるより安心だし、なにより自然の中を風になって走るのは素晴らしい。八月末なので花は終わりつつあるが、これが五月下旬などにゆくとおそらくもっと綺麗だろう。

 昼食のあと、今度は体育館である。私もたいがい運動音痴だが、従姉妹の娘とちがって我が娘は徹底的な運動音痴だから卓球などもぜんぜん続かない。ほうほうの体で卓球からバドミントンにのりかえたが、これまたにたような状況だ。

 体育館のバドミントンも長続きしないので開き始めた娘がプールへ行きたいといいだした。いったん部屋に帰って水着に着替えてプールにゆく。プールの向かいが浴場なのでそのまま浴場にゆけばよいから、風呂上がりの着替えも持参である。

 このグリーンピア二本松は周囲には何もないが、二泊してもここなら中一日はまるまるこの施設内で遊ぶことができる。冬場ならさらにアイススケートまでできてしまう。そのうえ利用料金が安いからおすすめの場所の一つだろう。


第3日目

 三日目。旅先だと時間の経過がとにかく早い。先のマウイ島旅行でもそうだったが、五泊七日なんてあっと言う間であるから、今回の二泊三日が短くないわけがない。今日は八月三十一日だから、娘達は明日から二学期であり、一夜にして天国から地獄だ――学校が地獄かどうかは意見が分かれるところだが、今の学校教育が子供の個性と才能を伸ばすようなことは、ことごとくつぶしにかかっているから、私に言わせれば地獄以外の何物でもない。

 とにかく今日は旅行の最終日、夏休みの最終日である。朝の七時に起きて、レストランがこまないうちにと七時半に食事に行く。献立は昨日とおなじようなものだが、切り干し大根がえらく塩辛く、洋食にした妻に言わせるとスクランブルエッグも塩からかったそうである。福島県は東北地方最南ではあるが、このあたりから味付けが濃くなってゆくのかもしれない。

 食事の後、九時になるのを待って、またもや体育館である。今回は最初がバドミントンで次が卓球である。こういったスポーツはある程度できないとひどくつまらないものだ。私などは卓球はひどく苦手であるが、さすがに滅多に玉がラケットにあたらない娘よりは数段ましである。バドミントンも似たようなもので、シャトルにラケットが当たらないから、娘はすぐ嫌になってしまうのである。スポーツのたぐいは練習の成果というのはたぶんに影響が大きいが、それにもまして天性の素質や感というものが重要だ。

 体育館の後は、昨日同様パターゴルフだ。娘は疲れたのと自分が上手くないのに、自分が上手く行かないからへそを曲げて部屋に帰ってしまったから、従姉妹夫妻とその娘、それに私である。この娘はやはり運動やそのたぐいに関してはやる気と天分のおかげで、パターゴルフも上達が早い。父親は「さすがにゴルフは高くつくからちょっと勘弁だなぁ」とぼやいていた。まぁ、我が娘のようにあまりにデキナイのも困るが、できるのもこれまた困りものかもしれぬ。

 昼食の後、芝生の広場に出て、娘達はトンボを追いかけていた。季節柄か場所柄かこのあたりは非常にトンボが多く、指をつきたててじっとしていると、時にはトンボが泊まりに来るのである。トンボは顎が結構強力だから、でかいオニヤンマなどに食いつかれると結構痛い。全体の姿は優雅だが、顔の拡大写真などをみるととんでもなく恐ろしい形相だ。

 そうこうするうちに帰る時間になってきた。従姉妹の車で郡山駅まで送ってもらい、郡山15:06発あおば206号、大宮16:27着の乗客となった。短いけれど、従姉妹家族のおかげでとても楽しい時を過ごすことができた。

 また、来年、従姉妹家族との旅行が楽しみだ。来年はどこにしようか.....。


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