第6日目(帰国日)

ケアンズ最後の朝食

長いようで短かった私の「おじさんケアンズ一人旅」もついに帰国の朝を迎えた。フライトは12時5分なのでいつものとおり朝7時に起きて、さらにいつもの通り7時半にレストランへ降りて行き、飽きがきたけどこれが最後のバフェ朝食を頂く。最後だと思うと、飽きたはずの食事でも何故か新鮮に感じるから勝手なものだ。

外は快晴。中二日ほど朝は曇っていたけれど、帰国の日になって朝から快晴とは皮肉なものだ。レストランの中は相変わらず日本人の団体さん。どうも、さわがしい。うーん、と思ったら、どこぞの小さな会社の社員旅行らしく、若い奴が「社長はどうした?」とか口々にいっているから、馬鹿でかい企業じゃないのは間違いない。

まったく、日本人の社員旅行団体ときたら...

日本人のツアーで、カップルや家族の集合体の他人の行列もかなり奇異ではあるが、まだ周囲にさほど不快感や迷惑を与えるわけでない。しかし、この社員旅行とかいった類の、普段顔なじみの大勢の仲間がそのまま海外に出てゆく団体と、話は別であり場所をいとわずひどいことになる場合がある。

このボケ・カス団体様も、いきなり数名がレストランに入ってきて、本来であれば従業員がテーブルを割り振るはずなのに、完全にそれを無視して仲間の近くのテーブルに勝手に陣取る。バフェで取ってきた料理をろくに食べもせずにぐしゃぐしゃにして残す、周囲への配慮など全く忘れて仲間内の世界に入り込み朝っぱらから大声で騒ぎ出す。もう、全員逮捕してオーストリアの刑務所にぶち込むか強制送還してくれ!って感じ。

挙句の果てに、「あれぇ、もう、こんな時間じゃん、早くしないと船がでちゃうよ」と食べ散らかして消え去るのは、もうそこいらの野良犬より始末が悪い。朝の船でグリーン島へ行くようだ。ということは、ケアンズのハーバー発の船でグリーン島へ行くと、ああいう連中と一緒にしばし過ごさねばならないということになり、今回はグリーン島をパスして大正解だったかしら、と妙な安心感。ちなみに日本人が少ないグリーン島はポートダグラスから出る、Quick Silverのほうらしいとう噂ではあるが、実態は知らない。

チェックアウト

食事を終えて、部屋に戻り身支度をする。パッキングの最終点検と室内の忘れ物の点検。引き出しという引き出しは使っていてもいなくても必ず開けて忘れ物がないことを点検する。冷蔵庫の中も点検。バスルームも忘れずに。インルームセーフは開錠して扉を開けておく。クロゼットも扉を開けて中身を点検する。意外と忘れがちなのがベッドの上とベッドサイドテーブルの上など。点検を一通り、二通り、三通りほど終えてもまだ時間があるので、バルコニーに出てレンズ付きフィルムで自分の写真を撮りまくる(笑)。

8時55分、荷物を持ってPacific International Hotelの11Fのsuite floorを後にするが、毎度のことながら名残惜しい瞬間だ。フロントへ行き、鍵をかえしてチェックアウトを依頼する。しばらくして明細が出てくるので、穴の開くほど明細をチェックし、部屋代と自分の使った電話代以外に何も余分なものがなく、部屋代も予約どおりであることを確かめて、問題ないことをフロント係員に告げて、クレジットカードで清算。ついでに、タクシーを呼んでくれと頼む。

空港へ

しばらく、ロビーにいるとツアー会社のお迎えバスが来て、大量の荷物とツアー客を吸い込み始めた。例によって点呼付き。すると、そのバスの脇にタクシーがやってきたので、エアポートへのピックアップの依頼でしょう?と確かめて乗り込む。行き先は "Airport, international departure terminal, please." でOK。

このドライバー氏も明るくて愉快な人で、空港までの15分ほどではいろいろ話が出来た。彼も行きのドライバー氏同様空港までの道のところで、2m50cmのクロコダイルが居たよという話をしたので、どうやら空港とキャプテンクックハイウェイを結ぶ道路が渡る川には、それなりに大きなクロコダイルが居るらしい。さすがオーストラリア...クロコダイルダンディの国。

このドライバー氏はパームコーブに住まいがあって、通勤時間は車で20分だそうな。ケアンズに限らず、アメリカでも多くの都市ではこんなもんだそうで、ニューヨークとかシカゴあたりが他の都市より平均通勤時間が長いのだそうだが、それでも30〜40分(平均)ということで、東京とはかなり違う。もっとも、日本でも地方都市ではそんなもんだという話も聞くので、東京が世界的に見てかなり異常な都市であることは疑いがない。

ドライバー氏との話が弾んでいるうちに、車はエアポートへ。建物が見えたので、「これがインターナショナルターミナルかい?到着時は5時まえで暗かったからよくわからなかったんだけどさぁ」というと、「おっといけない、ここはdomestic(国内)だ、ごめん、ごめん、ついシドニーに向かう人が多いので勘違いしたよ」と朗らかに笑いながらインターナショナルターミナルのほうに車を向ける。こういうことにイチイチ目くじらを立ててはいけない。さらに車中では運転手と話が弾む。

一時間の出発遅延

さて、インターナショナルターミナル。到着時は暗かったのでわからなかったけど、こうなっていたのね、って感じ。細長いターミナルビルの半分が出発、半分が到着用。出発用のチェックインカウンター付近には客は皆無。

国際線ターミナルの概観 出発ロビーある2F、奥にカフェがあり日本語PCも使える
この先が制限区域になる 2Fから1Fのチェックインカウンターを望む

カウンター表示にJALを探すと、ちゃんとあるんだけれどまだ係員が居ない。うーむちょっとはやかったかなぁ、と思って、仕方なく待っているとオーストラリア人女性の係員が現れたので、窓口へ進む。頭上13:15の表示が気になって、これは何?て尋ねると、キーボードをいくつかたたいて、遅れているのだという。そもそもこの機材の到着が遅れているのだそうだ。

うへぇ、三時間前にきてしまって早いと思っているのに、さらにプラス1時間かよぉ、とかため息。

まあ、でも、仕方ない、とりあえずチェックインして身軽になるしかない。席は窓際と通路側を一応確認してくれるが、昼間でおきているから予定通り通路側をとる。

さて、これから4時間、事実上3時間半何をすべぇか?まず探検だとばかり、小さなターミナルビルを到着ロビーのほうに歩いてゆく。到着時は周りがくらくてよくわからなかった構造がよく理解できた。なるほど税関を抜けて外へ出ると、ツアーの立て札をもった人が沢山いて、その沢山の人の山を抜けるとすぐビル出口があり、その正面がタクシー乗り場。なるほどね。出発ロビーが閑散としているが、ここはフライトの到着ラッシュ?なのか大勢の人がいる。

またもカプチーノ

続々と到着する人をうらやましく思いながら、コーヒーでも飲もうと、二階のニューススタンドで現地新聞のCairns Postを買ってから、カフェにゆきまたしてもカプチーノ。

ちなみに、このカフェはインターネットカフェでもあり、PCは日本語も使えるようになっているらしいが、私はPCを持ってきていたから帰国の直前になって今更必要はない。

つぶすべき時間はたっぷりあるのでゆっくりコーヒーを楽しみながら、Cairns Postを読み、最後のケアンズのひとときを楽しむ。

隣のテーブルにやってきたカップルは、日本人らしく日本語のガイドブックを広げてなにやら相談している。時間帯からして、どうやらツアーではなさそうだ。これから、ハネムーンの最高に楽しいはずの滞在が始まるわけで、思わず妻とのハネムーンの十数年前に記憶が飛んでゆく。

いいなぁ、今度は、ぜひ、ここへ妻と娘を連れてこよう、と心に誓う。

出国審査とセキュリティチェック

ここでしばらく過ごすが、ずーといるわけにも行かないので、支度をしてパスポートコントロールのほうへ行くことにした。出国審査は閑散としていてパスポートに出国印を押して簡単に終了。そのあとセキュリティチェック。ここで、リュックの中のPCを出してバッテリーをはずしてくれというので、言われるがままに休止状態にしてあるWindows2000搭載のPC(TOSHIBA LIBRETTO L2)を出して、バッテリーを抜き本体とバッテリーを別々に木箱に入れると、リュックとそれらの木箱を再度X-rayにかけられた。問題があろうはずはなくて、ご協力ありがとうございました、と丁寧に礼を言われて無事開放。

私の後にチェックを受けていた日本人男性は、バックパックにコルク栓抜き(corkscrew)をもっていたらしく、係員にそれを出せと言われていた。しかし、男性はcorkscrewがわからないようで、しばし悩んでいた。手助けをしてあげようかと思ったら、どうやら理解したらようなので私はその場を離れたが、corkscrewが没収されたのか、どうなったのかまでは確認していないので不明である。

なぜ成田空港の出発ロビーは貧相なのか

成田だとこの先はチンケなカフェと免税店しかないのだが、外国ではここでも例に漏れず単に免税店だけではなくて、ニュースショップ(ニューススタンド)や、いくつかの店がある。もちろん免税店もあるが、成田のように免税店だけではない。こんな小さな空港ではあるが、パスポートコントロールの中(制限区域)での時間つぶしには、成田よりずっと気が利いていて、もう、成田空港がカス中のカスの空港に思えてくる。これは、旅の数を重ねるにつれてその思いがつよくなる。機能的には出来ているのは認めるが、そこで時間をつぶすということにかけては、全く配慮がないのが成田空港、つまりここでも利用者不在なのであり、利用者不在は日本の得意技だと言える。そこを使うのは貨物ではなく人間であることを忘れた、人間性にかけた空港、それが成田空港。

カプチーノを飲んだカフェ、この奥にPCがある 制限区域内の待合コーナー
成田とちがって時間つぶしのできる店がたくさん 市内にもたくさんあるニュースショップ

ここでさらに別の地元紙やら、コアラのデスクマスコット、小さなチョコ、水を買い求め、出発が遅れた分お腹がすいたので、カフェでオレンジジュース(小) AU$2.95 と、STEAK&ONION PIE AU$3.50を買い求める。PIEは意外に大きくて出来合いにしては結構美味しかった。

ようやく搭乗

このミートパイ、意外にも旨い! 機内食の昼食

そしてまたショップの中をうろうろしているうちに、ようやく搭乗時間となり無事機内へ。13時22分、定刻より1時間17分遅れでJL768/QF167は成田に向けて出発した。機内ではランチが出るが、牛肉の赤ワインソテー+パスタ、パン、巻き寿司、ムース。どれもあまり旨くはないねぇ。JALのハワイ線といい勝負。

この食事を持ってきたのが日本人男性のアテンダントだったのだが、飲み物は何になさいますか?と尋ねられて、先ほど赤ワインをもらったからどうしようかなぁ、と一瞬悩んでいたら、アテンダント氏は私の手元にあったCairns Postに気づいたのか、こんどはすかさず英語で尋ねてきた。うーむ、そう出たか、と香港の帰りのフライトを思い出しつつも、"I'll have red wine, please."と頼むと、エコノミークラスで選択肢はほとんどないであろうに、赤ワインのボトルをうやうやしく差し出して銘柄を言う。特に私はこだわりはないし、こだわるほどワインのことを知らないので、同意して注いでもらう。

食事を終えて、あまり面白くない映画二本を見た後、軽食が出てようやく成田に到着したのは定刻より1時間ほど遅れてのことだ。

旅を終えて

今回の一人旅も無事終了した。しかし、毎回思うけど、日本人の個人ツアーの塊の団体ぞろぞろは非常に不気味だが、それ以上に困るというか何とかせい!と思うのが社員旅行などの団体。これはもう傍若無人団体といっても過言ではない。一人一人はそうでもないくせに、団体になると我が物顔で、それが国内であろう外国であろうがやりたい放題だ。こういうマナー違反の輸出は同胞としては大いに迷惑なので、絶対やめていただきたいと思う。会社も社員海外旅行をするなら、きちんとマナー教育してからにしていただきたいものである。

こうした同胞の異様さ、マナー違反を除けばケアンズそのものは、この季節非常にすごしやすくてフレンドリーな街であった。どちらかというと外国人よりもオーストラリア国内からの客が多いように思えるこの街、ハワイのような気候とコンパクトさと多様で美しい自然をそなえ、所要時間はハワイとほぼ同じで、時差はたったの1時間。なかなかすばらしいところで、今度はぜひ家族連れで行きたい。

(第6日目終了)

2002年おじさんケアンズ一人旅のトップへ戻る