「お替わりはいかが? 〜1333〜」

1999.02.26 (Fri) ==========================

□ 非核証明書

 高知県は今月23日、県内の港に入港する外国艦船の非核化をめざして、県の
港湾施設管理条例の一部改正案を定例県議会に提出した。同時に非核証明手続
きを定めて条例と共に運用すべく要綱も公表されたようで、当初案の「直接外
国艦船に非核証明書を求める」方式から「外務省に非核証明書の提出を求め
る」方式になった。

 報道によれば、高知県の一連の動きに対して政府は「自治体の権限の逸脱」
であると強く反発しているらしい。野中官房長官は「核保有について地方公共
団体の長がいちいち対応するなら、非核3原則堅持と日米安保体制の信頼関係
に支障を来しかねない問題になる」と強く県をけん制し、高村外務大臣も「国
の事務、権限に属することに実質的に干渉する結果になるのは好ましくない」
と批判しているという。さらに野田自治大臣は「港湾管理者である県の権限は
管理、運営上の権限であり、国の外交上の責任ある判断が制約を受けるのは、
認められることではない」とも述べているそうで、関係閣僚も口を揃えて高知
県の動きには批判的である。

 核兵器というものを地上から撤廃させるのは、現在の所唯一の核兵器による
攻撃を受けた国としては当然のことであろう。冷戦時代のように超大国同士が
弾道核ミサイルの発車ボタンに手をかけてお互いに睨み合うような状況ではな
くなったが、そのかわり超大国以外の第三国の核保有と局地戦での核兵器使用
の危機は飛躍的に高まった。地球上のどこかで核兵器が使われる可能性は、む
しろ冷戦時代よりずっと高くなったといってもよかろう。

 一連の高知県の動きは、反核兵器運動としてみればそれなりにうなずくこと
はできるが、一方で疑問も残る。それは「自分の所に核が持ち込まれなければ
それでよい、よそ様は知ったことではない」という意識が見え隠れすることだ。
もちろん地方自治の原則からいって他県の県政に干渉することはできないし、
現実問題として県内での動きが限界であるのはわかるが、どうもすっきりしな
い。国政レベルでは「自治体の権限の逸脱」だのと激しく批判しているが、こ
れまた「俺達のシマを勝手に荒らすんじゃねぇ」といった意識が強く覗いてい
るように思える。自治体のレベルで非核証明書提出を主張したり、それに反論
したりしているより、もっとマクロなレベルで考えることはできないのか。

 地球上にはいくつもの紛争の火種があり、現実に核兵器行使の危機が高いと
ころが少なくない。日本にごく近い朝鮮半島などはその危険が最も高いところ
であり、朝鮮半島で全面戦争になれば日本も巻き込まれざるを得ないし、北朝
鮮政府が核兵器を行使するなら、そのターゲットは必ず日本にも向いている。
非核証明だの何だのを主張するのはかまわぬが、世界の安定なくして非核はあ
りえないし、朝鮮半島の安定を抜きにして非核もへったくれもあったものでは
ない。

 理想を唱えるのは結構だが、もっと現実に目を向けて欲しいものだ。