「お替わりはいかが? 〜1338〜」 1999.03.03 (Wed) ========================== □ プライバシー保護 どうも日本という国にはプライバシーの保護という概念が欠落しているよう に思えてならない。諸外国の事情を研究したわけではないから、外国との適切 な比較ができないからここでは差し控えるが、どうも行政や政治家はプライバ シーの保護ということに関して無頓着のような気がしてならない。 そもそもプライバシーとは何か。小学館の国語大辞典によれば「個人の私生 活や家庭内の私事。また、それを、他の個人や社会に知られず、干渉を受けな い権利」とある。さらに私自身の言葉で付け加えるなら「広い意味で個人の固 有属性情報と、それを無用な他人に知られない権利」も入れて良かろう。 日本は伝統的に木造家屋が多く、部屋同士は薄い壁と襖や障子でしきられた だけで、家の外の公共の場と屋内までの距離が短く、その間のしきりもちゃち な作りのことが多いから、屋内の出来事は屋外や隣家に筒抜けになってしまう ことがある。これが屋内同士、あるいは長屋などになるとますますその傾向は ひどくなり、今でも日本の住宅事情では夫婦の寝室に隣接して子供の寝室や客 間があり、薄い仕切を通じて声やら音がつつぬけになることもあるため、夫婦 生活にも支障を来すことも少なくない。 生まれ育った住環境からしてこんな具合だから、自分のプライバシーを守る という概念が育ちにくいのは事実であろうか? 何から何までプライバシーの 保護というお題目を掲げるのはどうかと思うが、さりとて驚くほどの個人属性 情報が世間で流通しているのを無策に放置するというのはどうかしている。個 人の住所や名前、生年月日はもとより、取引銀行、クレジットカード、収入、 勤務先、家族構成、借入金、趣味などありとあらゆる情報が入手可能だと言う。 こういう情報が売買されDMを初めとしていろいろ利用されているらしく、心当 たりの無いDMが沢山送付されてきたりして時には気持ち悪くさえなる。 今回の臓器移植法施行後始めての脳死臓器移植においては、ドナーやレシピ エントおよび家族の方のプライバシーはものの見事にマスメディアに踏みにじ られた。時と場所と状況を選ばぬ狼のようなカメラや記者達は、報道の御旗の もとに関係者のプライバシーなど関係ないといった風であり、そのやっている ことは芸能レポーターと全く変わらない。 日本のプライバシー保護の現状はあまりにもお粗末である。