「お替わりはいかが? 〜1351〜」

1999.03.16 (Tue) ==========================

□ 地域振興券は行政と政治の無能の象徴

 一週間ほど前のことだろうか、小学生の娘をかかえる我が家にも練馬区から
地域振興券が送られてきた。1000円券が二十枚で一冊になっており、まるでデ
パートの友の会の積立満期と引き替えにもらえる商品お取り替え券みたいであ
る。これを受け取るべき本人である娘は、意味がわかっていないのか(わかっ
ていないはずはないであろう、子供が読んでいる子供向けの雑誌には、しばら
く前から地域振興券の特集などが組まれ、「君は地域振興券で何を買う?」な
どというタイトルが踊っているのだ)、欲しい物がないのか、とにかく「私は
いらない」などと言っている。

 テレビでは街角のインタビューで子供やらお年寄りやらにマイクを向けてい
るが、お年寄りは衣類の購入にあてたり、日常の食品購入にあてたりしている
人が多いようだ。旅行会社のDMには、親子三人での税込み二万円以内の宿泊パ
ッケージ(交通費は含まれない)やら、親二人子二人の四万円宿泊パッケージ
などがあったりして、なかなか商魂たくましい。

 この地域振興券だが、店舗側では消費者から商品とひきかえにうけとって、
それが現金化されるまでにどれくらいのタイムラグがあるのだろうか。私はよ
くしらないのだが、これがあまりにも長いと店の規模や地域振興券による売り
上げ比率によっては、現金収入が減少して運転資金に支障が出てくるところも
あるかもしれない。ニュースによれば普段に比べて売り上げが激増したわけで
もないのに、地域振興券による売上比率が増えてきて現金収入が減少し、従業
員への給与に消費者から受け取った地域振興券を充てる店まで出てきていると
いう。発行側に言わせればこうした行為は禁止しているそうであるが、そんな
こと言われても零細経営の店舗では現金収入減少は店の存続をもおびやかしか
ねないのだからやむを得ないだろう。

 さて、我が家の地域振興券はおそらく妻が区内の子供衣料品店で娘の衣類を
購入するのに充当するようだが、ほんとうにこれが経済活性化につながるかど
うか疑問ではある。私の感触としては、今すぐにこれにより消費が増えるとい
うよりも、今現金なりクレジットなりで買わなければいけなかったものを、か
わりに地域振興券で買うだけで、その分浮いた現金をほかでぱーっと消費する
訳でなく、概ね貯蓄へ回ってしまうのだ。自分が払った税金が戻ってくるより
も、それをもっと有効に使って行政サービスの充実をはかって欲しいのである。
税金を戻しておいて一方で増税をするような阿呆な政策なら最初からしないほ
うがマシだ。もっと政治・行政を真剣に見つめ直して大いなるリストラをして、
削るところはばっさりなくし、手厚くするところは二倍でも三倍でも手厚くす
るような行政を行って欲しいものだ。

 このように考えると、果たして地域振興券なる施策が経済活性化につながる
かどうか疑問である。郵便貯金や銀行預金の残高贈に貢献するだけではないだ
ろうか。とにかくばらまけばよい、あるいはろくに頭もひねらずに票だけにつ
ながりそうな施策を打ち出して、その効果の検証などは行われない。仮に行わ
れたとしてそれが失策だとしても誰も責任はとらない。地域振興券の一つ綴り
に日本の行政・政治の無能さ、無責任さを見た。