「お替わりはいかが? 〜1372〜」

1999.04.06 (Tue) ==========================

□ 都市部の公園政策

 コンクリートジャングルの代表格みたいに言われる東京都であるが、23区だ
けではなく東京都全体としてみると、コンクリートジャングルなのは、山手線
の内側かせいぜい環状八号線の内側くらいであり、そこを超えると大きな公園
緑地がぽつりぽつりと出てくる。山手線内で一番大きな緑地といえば、皇居な
のだが、残念ながら外堀公園程度しか一般人は立ち入ることができず、本当に
自然豊かな皇居内部は厳重な警備の内側となっている。都心の空気の浄化の役
には立っているが、人心の浄化には大した役には立っていないようだ。

 さて、東京で「公園」と名の付くところあるいは緑地スペースを思い浮かべ
ると、石神井公園、井の頭公園、光が丘公園といった非常に広い敷地を誇るは
別にして、木はあるのだが、それ以外はコンクリートで固めた遊歩道やら池や
らそんなものしか目に写らない。都会のオアシスとか言えば聞こえは良いが、
実際にはコンクリートの一部だけが土になってそこに木が植わっているだけだ
ったりする。

 そもそもコンクリートの建造物というのは完成した時が見栄えがもっとも美
しいもので、あとは時間がたつにつれて汚くぼろくなってゆく。老朽化してゆ
くのは木造でも石造りでも同じだが、建造物の例を挙げれば、日本では伝統の
純木造日本建築や西欧の石造りの建物など、時がたつにつれて深みをましてゆ
くことが多く、コンクリート建築のようにすぐに汚くなることはあまりない。
このあたりが自然素材と人工素材の差なのであろう。

 それでも建物については、耐震性や工費・工期等の問題からそこそこ丈夫な
コンクリート建築になるのは仕方ないとしても、公園までコンクリートで固め
ることはなかろうと思う。コンクリートやアスファルト舗装の遊歩道より土の
遊歩道のほうが歩いていてもはるかに衝撃が少なく足にもやさしい。雨が降っ
てもコンクリートやアスファルトは表面を流れるだけだが、土ならしみこんで
植物を養い、あるいは地下水となって土地を潤す。

 街の真ん中に土と緑のあふれる公園があってもよいではないか。風が吹くと
土埃が多くなるとか、雨が降るとぬかるむとかあるかもしれないが、それが自
然というものだ。風に土埃も舞うことなく、雨にぬかるむことも水たまりがで
きることもないのはおよそ自然からかけ離れている。ちょっとした一戸建ての
家の庭に土があり木があるように、都市の庭にも土があり木があっても良いで
はないか。そういうところから人の心も柔らかくなってゆくと思う。