「お替わりはいかが? 〜1410〜」

1999.05.14 (Fri) ==========================

□ リゾート通勤 〜2〜

 別の夫婦の例。これは途中から見たから経緯はわからないのだが、本格的に
引っ越したわけではなく、居住モニターか貸し別荘かしらないが、とにかく一
時的にリゾート通勤した例があった。夫のほうは、昼間は仕事で自転車で走り
回っている(何かの外交職だろう)というのに、妻は野菜が安くて感激してい
るというつまらぬ電話を仕事中の夫の携帯電話にかけてくる。さらに夫が慣れ
ない長距離通勤で満身の疲労、新幹線の駅を降りるとそれに追い討ちをかける
ように雨が降っていて上着を濡らしながら仮の我が家にたどり着いて「ああ、
大変だった」というのに、妻は「何が大変だったの?」という始末。

 さすがにこのシーンを見ていて、他人事ながら頭の中で理性の回路のヒュー
ズが飛びそうになった。夫が朝早く自宅を出て長距離通勤をし、昼間は外交職
で自転車で走り回り、さらにまた慣れない長時間をかけて雨の中をずぶぬれに
なって帰ってきたら「何が大変なの」である。夫のほうは私よりはるかに忍耐
力があるのか、取材を意識しているのか、大人しいめの抗議にとどまった。

 私が腹をたてたのは、この妻の思いやりの無い態度である。こういう場合は
せめて「ご苦労様でした」の暖かい声くらいかけてやるべきだろう。それを夫
の苦労をまるでわかろうとしていないかのようだ。他人の家庭に腹をたてるの
もあほらしいが、世の中にはこういう思いやりの無い奴もいるというのをあら
ためて知った。私ならそういう奴が相手ならとっくにブチ切れてとうの昔に戸
籍関係も解消していることであろう。

 その点、前者の方の例はほほえましい。朝早く起きて食事もとらずに新幹線
にのる夫のためにおにぎりをつくってやる妻。そして夫が帰ってくるときには
妻は夫を迎えに駅まででている。夫のほうは子供が大好きなパン屋さんでお気
に入りのパンを取っておいてもらい、閉店直前の店に飛び込みそれをひきとり、
駅の売店でさらに土産を買って買える。なんともほほえましい光景である。物
を買うとか買わないの話ではなく、どちらのほうが相手に対して思いやりをも
っているか言わずもがなだ。長距離通勤して成功するのは当然後者であり、破
綻するのが前者であるのは明らかだろう。

 遠距離通勤といったきつい環境だから、なおのこと家族同士の思いやりが重
要だと思うのだが...。

(完)