「お替わりはいかが? 〜1423〜」 1999.05.27 (Thu) ========================== □ 安直な盗聴法案に断固反対する 〜1〜 組織犯罪対策3法案、いわゆる盗聴法案が成立する見通しとなった。サリン 事件以来組織犯罪の監視・摘発手段として盗聴(「通信の傍受」であるが、そ んな綺麗を使うのではなく、はっきりと「盗み聞き」、いわゆる「盗聴」であ ると言うべきだ)の必要性は、一部公安関係者が主張していたのだが、あまり にも安直に導入しすぎはしないか。 法案では、歯止めとしては「第三者の立会いを義務付ける」、「令状を必要 とする」、「対象となる犯罪容疑を銃器や薬物など4種に限定する」と厳しく したとしているようだが、現状をみるととんでもない話であり、ごまかされて はいけない。 まず、第三者の立会いだ。この立会い者というのは電話会社社員やインター ネットサービスプロバイダ(ISP)の社員を想定しているらしいが、この立 会い者は当然の事ながら盗聴内容を知ることはできないし、盗聴を終了させ切 断する権限を持たない。下手にそんなことをすれば公安が得意とする「公務執 行妨害」の発動となり前科者の烙印を押されてしまうだろう。「公務執行妨 害」というのは人権じゅうりんには持って来いの罪状だからだ。つまり、この 立会い者というのは、単にとなりに座っているデクノボウに過ぎない。となり にダミー人形を立たせているのと同じだ。 次に令状を必要とするということだが、例えば逮捕令状の請求をいままで裁 判所がどれくらい退けたのだろうか。東京第二弁護士会によれば、1995年 の数字で、地裁・簡裁への捜索差押の請求件数は全国で37万8106件であ ったが、このうち却下されたのはたったの464件、つまりたったの0.12 %なのだ。さらに同会によれば、現職の裁判官も「裁判官の令状審査の実態に 多少なりともふれる機会のある身としては、裁判官による令状審査が人権擁護 のとりでになるとは、とても思えない。令状に関しては、ほとんど、検察官、 警察官の言いなりに発布されているというのが現実だ」(1997年10月2 日付朝日新聞)というのようだ。つまり現状では令状請求制度は何ら権力濫用 の防波堤にはなっていないということだ。 また対象犯罪を限定するということだが、これは犯された犯罪についてだけ ではなく、容疑も含まれる。つまり容疑さえあればいかなる盗聴も可能なのだ。 ある組織犯罪容疑者が偶然何かで入手した無関係な人の電話番号を手帳にでも 書いていたとする。すると公安はそれは関係者かもしれぬということで、当人 には事前事後を問わず一切知らせずにその無関係な人のすべてを盗聴すること もできる。 (続く)