「お替わりはいかが? 〜1431〜」 1999.06.04 (Fri) ========================== □ 盗聴法案成立か? 〜2〜 立会人というが、立会人は傍受行為が傍受内容と傍受理由に比して適切であ るかどうかは判断できない。あくまで物理的・外見的な手続きが法に沿ってい るかどうかを見るだけだ。盗聴された内容が傍受法の範囲を逸脱しているかど うかを知る手段はないし、立会人には捜査当局の傍受を止める権限はない。つ まりは単なるダミー人形と同じだ。唯一違うのは、外見的な手続きの違法性に 対しての証人になりうることだけだ。 次に令状制度。読売新聞のこの社説の筆者は、現行の逮捕令状の請求が裁判 官により厳格に監査されて令状が発行されていると思っているのだろうか。確 かに裁判官が検察・警察から出された逮捕令状を審査して、妥当と判断すれば 令状を発行することになっている。だが現実には審査に必要な時間も十分では なく、審査する側の裁判官も多くの裁判を抱えきわめて多忙であり、逮捕令状 は、裁判官側が十分考慮し判断する時間も材料もないままに令状が発行されて いる。悪く言えば、逮捕令状請求に関する限り、司法が捜査当局に押し切られ ている、あるいはほとんど捜査当局の言い分が通っているのだ。善意に見れば 捜査当局側で十分慎重に検討されてからの請求だから却下されることがほとん どないとも言えるのだが、誤認逮捕などを時折聞くとやはりそれはかなり怪し い限りだ。ここに加えてさらに傍受の令状が舞い込むわけだ。現状では令状制 度はひとえに、請求側(=捜査当局)自身の厳しい内部審査にかかっていると いうこころもとない。 そして傍受記録の封印と裁判所保管。これは傍受記録が本当にただ一つしか なければ多少は有効かもしれない。もちろんそのまま放置するなどはもっての ほかであるが、傍受自身は捜査官が行ったとしても、機器の設置や記録機材の 手配・点検などは捜査側から完全に独立した第三者・通信運営側(電話会社や ISP)・弁護士などによる厳重な監視の元で、前後を通じて記録が漏れたり、 複製が作られたり、ひそかに複数媒体で録音されたりしないような監視体制は 必須だ。 最後に書面による報告書提出だが、この報告書を裁判官に提出したからとい って、それが脚色されたものではないという保証があるだろうか。もちろん立 会人のサインがそこにはあるとは思うが、これは実施後の報告に過ぎず暴走の 強力な抑止力にはならない。 (続く)