「お替わりはいかが? 〜1443〜」

1999.06.16 (Wed) ==========================

□ 民族浄化

 ユーゴスラビア・コソボ自治州からユーゴ軍が撤退し、そのあとを治安の空
白を恐れてNATO軍中心のコソボ平和履行軍(KFOR)が速やかに展開し
た。コソボ自治州の州都プリシュティナ西部の空港ではNATO軍に先駆けて
ロシア軍が空港を占拠して一時NATO軍と睨み合いが続いた。これはKFO
Rとして、ユーゴスラビア・コソボ自治州の州都プリシュティナにいち早く進
駐したロシア軍がNATO軍との間で管理権をめぐって対立しているプリシュ
ティナ空港に通じる道路を封鎖し、一時NATOの英仏軍と現場で睨み合った
というもので、今後のKFOR運営の難しさを感じさせるものとなった。

 コソボ内では数十体にのぼる虐殺の遺体を埋めたとみられる場所が確認され
ている。地元民の説明では、ユーゴ軍はアルバニア人成人男性達に大きな穴を
掘らせて、その後彼らを銃殺し埋めたのだという。レポートした日本人記者に
よれば、そのあたりは地面がやわらかく一面に死臭がただよい、ところどころ
に遺体の一部がのぞいているということだ。戦争に死者はつきものであるとは
いえ、ここに埋められたアルバニア人達は戦争の犠牲者ではなく根深い民族対
立を利用した、狂った指導者の民族浄化・大量虐殺の犠牲者だ。これは第2次
世界大戦でのナチスドイツの再来を想起させる。ナチ党(国家社会主義ドイツ
労働者党)の理念・体制であるナチズム、その中で反ユダヤ主義に裏打ちされ
たゲルマン民族至上主義により、ユダヤ人は絶滅対象とされ国中からユダヤ人
が集められ大量虐殺されたのは、自分の目では見なくても歴史で習った重要な
項目の一つであり記憶に焼き付いているはずだ。

 同じ人類でありながら、生まれた土地や種族により差別されたり、自分とは
ことなる種族の者に偏見をもったり敵意をもったりするのは、人類の歴史で絶
えたことがない。雑多な種族が集まり自らも自由世界のリーダーを自負するア
メリカ合衆国でさえ人種差別・偏見はなくならない。

 現在の局地戦争の最大の原因が、こうした根深い民族対立や宗教対立にある
のは疑いもないところだ。中には朝鮮半島や中国・台湾のように政治対立が根
にあるものもあるが、アジア、ヨーロッパでの争いの大部分は民族対立、宗教
対立であろう。どちらも問題の根が深いだけに、どちらかが身を引くと他方が
それに乗じてきたりして、永遠に対立の炎は消えることがない。

 現在の日本では戦いになるほどの対立は表面的には存在しないが、ひそかな
差別という形でまだまだ生き残っている。決して日本は差別も対立も存在しな
い国ではないことを心すべきだ。