「お替わりはいかが? 〜1483〜」 1999.07.26 (Mon) ========================== □ 国旗・国歌法案成立へ 日章旗を国旗とし、君が代を国歌と定める内容の国旗・国歌法案が、22日 の衆議院本会議を賛成403票、反対86票の大差で可決され参議院に送付さ れた。内容の是非については別にして、独立国歌として国を表す旗を定め、国 を表す歌を定めるということそのものが悪いことだとは思わないし、むしろは っきり定めるべきであると思う。 ただ今回についての問題は現状の国民の認識と法律で定める内容が同じ方向 を向いているかどうかということだ。国民の向いている方向と、政治家達が定 める法律の向いている方向が同じだろうかという疑問が残る。 そもそも国旗・国歌を定めて敬意を払うまえに、それらが象徴している国そ のものについて、国民が国を愛し、国を誇ることができるかどうかが大きな問 題であろう。いわゆる汎用的用語で言えば愛国心である。愛国心というとすぐ 右寄りだとかいう人がいるのだが、そんなたいそうなものではなく、自分が住 んでいる国土、国を自分が好きになれるかどうか、外国人に自分の国を自慢で きるかどうかただそれだけの話しであろう。 日本は美しい自然と四季をもったとてもすばらしい国である。都市部、とり わけ東京付近の環境破壊はもはやまともな生物が住める環境ではなくなってい るが、まだまだ美しい自然は沢山のこっており、これは十分に誇って良いもの だと言える。しかし、そこに住む人間と人間の環境については疑問がある。道 路やら駅のホームやホーム下にはおびただしい数のタバコの吸殻やポイ捨てゴ ミが散乱し、道路やホームには吐いた痰やチューインガムがこびりつき、山奥 では不法投棄があり、美しい自然を台無しにしている。都会の朝はとげとげし た雰囲気が蔓延し、電車の中は一触即発の危険をはらんでいる。政治家や政党 は自己の利益にのみ執着して離合集散をくりかえし、国の未来や世界の中の日 本という立場で行く末を考えている連中は居そうもない。 国歌や国旗を法律で定める前に、愛することができる国、誇りに思える国を つくることのほうが先決であろう。日本がそういう国になったとき、国歌や国 旗は法律で定めるまでも無く、国民が自ら誇って定めようになるであろう。 十分な議論も無く定められたものはどこかにひずみを生む。先日も秋田市の 中学総合体育大会で、酒造会社の社長である高橋昌一・秋田市体育教会会長が 「これから来賓として祝辞を述べる前に注意しておきたい。国旗掲揚、国歌斉 唱のとき座っていた人は出て行っていただきたい」と注意したという(朝日新 聞 天声人語 7/22)。気持ちはわからなくはないが、これでは国旗・国歌に敬 意を払わないものは裏切り者の売国奴であり国賊だという戦時・戦前の危険な 締めつけ思想に直結する。法律だけが気持ちより先行して定められると法律を 盾にしてますますその傾向が強まるであろう。 大切なのは法律による強制ではなく、自らの意思で国歌を誇り高く歌い、国 旗を誇り高く掲げることができるような国づくりが必要だ。