「お替わりはいかが? 〜1484〜」

1999.07.27 (Tue) ==========================

□ ハイジャック

 二十三日の昼前、羽田発新千歳行き全日空61便(乗務員14名、乗客503名)
が千葉県上空を飛行中に、包丁を持った28歳無職の男性にハイジャックされた。
犯人は米軍横田基地に向かう要求を出していたが、午後零時九分に機内で乗員
4名に取り押さえられたという。痛ましいのはその際、機長の長島さんが男に
手首などを刺されて亡くなったということだ。日本国内のハイジャック事件で
死者が出たのは初めてのことである。

 毎日新聞の報道によれば、犯人はパソコンソフトのフライトシミュレーター
のファンで、実際に飛行機を操縦したかったと供述しているという。気になる
のは犯人の供述のこの部分をことさら大きく捉えて騒いでいる番組を耳にした
ことだ。まさか、フライトシミュレーターのファンがみんなハイジャックをす
る可能性を秘めているなどと馬鹿なことを考えているとは思えないが、しかし
パソコンソフトのフライトシミュレーターファンが何も知らない人から色眼鏡
で見られる可能性を植え付けていないという保障は無い。

 私もフライトシミュレーターのソフトのファンであり、これが満足に動くよ
うなPCが欲しいと思っているくらいだ。この手のパソコンソフトウェアは大変
精緻にできてい、とりわけマイクロソフト社のフライトシミュレーター98は、
その精巧な出来映えにおいては一般向けパソコン用フライトシミュレーターソ
フトウェアとしてトップクラスであるといってよかろう。当然操縦だって簡単
ではないし、市販の解説書もゲームの裏技などではなく、飛行理論の解説や計
器飛行の解説がかなりの部分を占めているし、ゲームの資料としてはゲームに
含まれている空港のデータも掲載されているくらいだ。

 しかし、こうしたゲームが好きだというのと、実際にハイジャックしてまで
操縦桿を握るという間にはマリアナ海溝以上に深い開きがあるどころか、ハイ
ジャックはゲーム好きとは全く別の狂った心理であろう。男性の多くは、小さ
い頃にはパイロットになる夢を見ただろう。フライトシミュレーターのソフト
はそうした男性達の心をくすぐるものだ。自分で操縦桿を握って自在に空を飛
ぶ夢、多くのメカを意のままに操って飛ばすパイロット、計器に囲まれたコッ
クピット、いずれも男の子が一度はあこがれるものだと思う。このハイジャッ
ク犯はそんな子供の夢を打ち砕くという意味でも悪質な犯罪だ。

 この悪質な犯罪の犠牲になられた機長に心からお悔やみを申し上げる。