「お替わりはいかが? 〜1536〜」

1999.09.17 (Fri) ==========================

□ 英語の頭脳回路

 先日、あるテレビで幼少にして何ヶ国語かを操るという子供の話をしていた。
人間は生まれたときは、どこの国のどういう言葉にでも適応できるような頭脳
回路をもっている、つまりそういうニューロン結合をもっているのだそうだ。
それが成長するに連れ普段耳にする言語の音を解するのに不要な部分は、その
ニューロン結合が退化してゆくのだそうだ。だから赤ん坊のうちに英語環境が
まったく無く育った多くの日本人には、どうしても聞き分けられない音、聞き
分けに非常に苦労する音というのが存在するのだという。英語では L と R の
発音などが典型的だ。英語で育った人には L と R は間違えようの無い音のよ
うで、音からスペルを拾うとき、彼らは L と R を間違えるようなことはない
のだが、日本人にはかなり難しい。

 母音に関しても同じ事がいえる。いわゆる標準語の母音は a,i,u,e,o の5
音しかないが、英語はその倍以上ある。だから a 系や o 系の音はみな同じに
聞こえてしまうのは誰でも経験している。しかし、標準語ではない方言の一部
には母音の数が多く、英語と似たような母音を持つ言葉があるらしい。聞くと
ころでは東北弁にそのような傾向があるそうで、英語のヒアリングやスピーキ
ングに関して言えば、標準語で育った人よりは有利らしい。

 かくのごとく、標準語人間が英語のヒアリングや発音を学ぶというのは、一
度失った頭の回路を再度生み出すことになる。頭脳が成長過程にある乳幼児な
らともかくも、成人にとってはこれはなまやさしいことではない。単純に英語
環境に浸ればよいというものでもなく、そこには赤ん坊の頃に比べて何十倍、
何百倍、何千倍もの努力が必要になる。私などは自分自身はそれなりに発音に
は自信があるほうだが、ヒアリングからスペルアウトするとやはり L と R を
間違い無く拾うのはかなり難しい。単純に L と R の発音の区別であればそん
なに難しくは無いが、一連の言葉の中でこれを拾うとなると、自分の頭の中の
その回路があまり十分ではないのが身にしみて実感できる。

 私が通勤に使う路線・時間帯は一部の区間では、帰国子女や外国人子女を多
く見かける。外国人子女は別にして、日本語もクリアに話す日本人帰国子女、
とりわけ乳幼児のころから米国で育ったような子供は、まったくネイティブそ
のままの英語を話す。当たり前といえば当たり前で、そういう環境で育ったの
だから、頭のニューロン結合も英語用と日本語用の両方が残ったのだ。それに
くらべて大人になってから英語の勉強をはじめた人間は、お金と時間がかかる
わりに進歩が亀である。歯がゆいばかりに進歩が亀であるのを経験しているの
は私だけではあるまい。

 頭のニューロン結合が買えるとしたら、ぜひ英語用のそれを追加オプション
として購入したいものだ。