「お替わりはいかが? 〜1564〜」

1999.10.15 (Fri) ==========================

□ たががはずれたJR

 昨日「JRのほころび」なんてタイトルで雑文を書いた後で「朝日新聞」の
十月十日付けの天声人語に同じようなことが書かれているのを発見した。筆者
氏はその最後で「JR数社のたがはゆるんでいる。JR西日本のたがは外れて
いる」と締めくくっていた。さすがプロだけあって「JR西日本のたがは外れ
ている」とは旨く言ったもので強烈な批判であるが、JR西日本がこれがどれ
だけ批判として感じているか疑問である。彼らのことだからこれを自分達の事
とは考えず「旨いねぇ」と笑っているだけで、あとはまた経営者が頭を下げて
何人かを更迭すればそれで事が済むと思っていそうな気がしなくもない。

 外れたたがの代償は、JR西日本南谷社長が一ヶ月間役員報酬一割カット、
桜井鉄道本部長が解任され専務取締役専任、別枝支社長も解任され執行役員専
任され、この二名は三ヶ月間役員報酬一割カット、近藤施設部長が減給処分だ
そうだ。始発前で大事故に至らなかったとはいえ、同じ日に東海道新幹線のの
ぞみに乗った人間としては、このコンクリート塊落下は他人事ではない。万一
営業運転中の新幹線の車両にこの塊が落下すれば、あるいは乗り上げたりすれ
ば、かなりの数の死者が出た史上最悪の新幹線事故として歴史に記録されたこ
とは間違いない。

 こうした事故が起こったとき、日本ではどうも真っ先にその責任を追求して
適当なスケープゴートを血祭りにあげてそれでなんとなく忘れ去られる傾向が
ある。日本の場合、とくにマスコミが事故当初は大変大きく騒ぎ立て、当事者
はマスコミの手を緩ませようと時間をかせいで小手先の対策を打ち出す。その
ころには気の変わるのが早いマスコミは、その事件からとっくに興味を失って
おり、それにつられるように我々の記憶からも薄くなるというわけだ。何かに
つけ外圧がないと動かないという悪しき側面が良く出ているように思う。

 今JRグループ全体がやるべきことは、バブル期に建設された施設の確実な
点検と補修でありそのためには営業休止もやむなしとすべきであろう。満員の
のぞみに200kgのコンクリート塊が激突し、何十名・何百名がトンネル内で亡
くなるようなことがあってからでは遅い。そして次に処分であるが、どうもJ
R西日本の処分は甘すぎて自分達の責任であるという意識がまるでない。一連
のトンネル事故問題があるにもかかわらず、たかだか減報一割で、責任者は解
任といってもあいかわらず役員の椅子に座ったままなのは呆れる。

 施設工事や施設維持管理責任者および経営者はJR西日本の信頼を失墜させ、
なによりも優先すべき乗客の命の危険に陥れたということで本来なら懲戒免職
処分すべきであり、のうのうと役員の椅子に座らせつづけるべきではない。さ
らに殺人傷害未遂くらいの罪状で訴追されても誰もおどろきはしないであろう。
しかるに、処分は異常に軽く今後の事故防止策の見とおしも立っていないあり
あさまなのには恐れ入る。これはもう親方日の丸などではなく、怠惰の上の怠
惰であり、鉄道事業をこれ異常続ける資格はないとすら考える。

 我々利用者もないと不便だというだけの理由で、彼らの甘えをゆるすべきで
はない。今後の対策もろくに立てず安全確保の義務を果たさぬものには断固た
る罰を下すべきである。