「お替わりはいかが? 〜1573〜」

1999.10.24 (Sun) ==========================

□ 潔癖症国民 〜2〜

 こんなことを書いていたら、あるテレビ番組で「抗菌商品が大流行り」みた
いな趣旨のことを放送していた。その番組は最近依頼が増えているということ
を非難気味の報道だった。ゲストのある方は昔は田んぼでどろだらけになって
遊んでいた、とのたまわった。

 最近注目を浴びているのが砂場の殺菌だという。昔の街とちがって都会では
土がほどんどなくなってしまい、猫や犬のトイレに適当な場所がなくなってし
まい、土や砂が残るもっとも手近なところは、公園・幼稚園・学校の砂場にな
ってしまった。こういう砂場は自然中にある土地とは違い、水流も無く多様な
微生物による自然浄化作用も期待できない。コンクリートの上に砂をひいただ
けのところにそういうことが期待できるとも思えない。

 昔はわざわざそういう砂場にゆかなくても、どこにでも猫や犬の快適な排泄
場所はあったのだが、それが今はそういう場所をさがさないと快適な排泄がで
きなくなった。遊び場の砂場で犬や猫のウンチに遭遇する可能性は、昔と違っ
てかなり高くなっているのだから、一概に砂場消毒を愚かなことと責めること
はできないのではないか。

 靴下の抗菌加工くらいは許せるとしても、マウスやキーボードあるいはいろ
いろなOA機器のプラスチック部分にまで抗菌加工をするのはあきらかにやりす
ぎだろう。OA機器のみならず、オフィス文房具やシャープペンシルにまで抗菌
加工というのはやりすぎを通り越して馬鹿としかいいようがない。そこまでや
るならいっそ無菌室で生活しエアフィルタを装備した宇宙服のような密閉服を
着てあるけばよい(ある種の病気でこのような生活を余儀なくされる方がいる
のは事実であるがこの場合それとは訳が違う)。

 人は常にある程度細菌と一緒に生きてきたわけで、それは単なる寄生ではな
く共生の関係にある。それを一方的に排除するとそれまで常在菌の作用で防げ
ていたことが、それがなくなってしまい今までかからなかったような病気にな
ってしまうことだってある。

 清潔にするのは大切だが、それにはバランスというものがある。昔からいわ
れているような適切な手洗いやうがい、入浴、着替えは実行すべきであるが、
それ以上に身の回りを細菌レベルで清潔にする必要はない。それに本当に怖い
菌やウィルスではそんな抗菌素材では防げないだろう。衛生に必要なのは流行
ではなく正しい知識とその活用であろう。厚底靴と抗菌素材は同一に安直に流
行らせるべきものではない。

(完)