「お替わりはいかが? 〜1591〜」

1999.11.11 (Thu) ==========================

□ おじさんマウイ一人旅 〜第一日目(1)〜

いよいよ出発の日が来た。フライトは成田発ホノルル行き日本航空72便で
出発時刻が22時15分という遅い時刻の便だ。後からわかったことなのだが
乗客を乗せて成田から飛び立つ定期便の中では、これがその日最後の飛行機な
のだ。

 旅行では鉄道利用派の我が家が成田までゆく場合、JRの成田エキスプレス
か京成スカイライナーのどちらかを選ぶのだが、京成スカイライナーは成田に
夕方六時半頃に着くのが最後の電車だ。夜十時過ぎの飛行機に乗るのにその四
時間近くも前についたのではいくらなんでも早すぎる。そういうわけで新宿あ
るいは池袋発の成田エキスプレスを探したところ、七時半頃に到着する成田エ
キスプレスがあったのでそれを予約しておいた。今回の旅行ではすべての事前
手配は自宅からインターネット(Web)と電子メールと電話とFAXだけで出来た
というのに、皮肉なことに日本国内のトランスポーテーションである成田空港
までの足はわざわざみどりの窓口まで行かねば切符が買えない。これなども事
前にインターネットでクレジットカードをデポジットにとって当日窓口発券で
よいと思うだが、鉄道各社は自らは動かず利用者を取りにこさせようとす旧態
依然たる発想から抜け出せないでいる。

 成田エキスプレスは四人が二人ずつ向かい合う固定席になっており、そうい
う意味ではスカイライナーのほうがよいのだが、時間があわないものは仕方な
い。千円高くて時間は余計にかかり四人掛け固定であまりいいところはないの
だが、唯一のメリットは自宅から乗り換えなしで行ける最寄のターミナル駅で
ある新宿か池袋から成田まで一本でゆけることだろう。

 さて四人掛けの一人は私が占拠したのだが、のこり三席には親子連れが乗り
こんできた。親子連れといっても子供は高校性くらいらしく、父親はおそらく
五十代だろうか。父親は席に落ち着くなりガイドブックを読み始めた。どこの
ガイドブックかと思ったらハワイのガイドブックである。洋服を黒でシックに
まとめた母親のほうはやはりワイキキの観光地図らしきものを見ている。この
光景をみて何故かほっとしてきた。自分でも理由はわからないが、それまでの
「海外完全個人手配一人旅」の緊張がほぐれたような感じだ。

 いつもならこの成田エキスプレスの向かいには娘がすわり、私の斜め向かい
には妻がすわるのだが、今日は赤の他人が座っているのがやはりとても寂しい。
最初は赤の他人から始まった家族も年月を経て切っても切れない絆ができあが
っているのを改めて感じた。しかし、その一方で一人だから気楽で移動も素早
くできるのは絶大な効果がある非常に大きなメリットで、これが家族三人にな
ると移動速度も三分の一くらいになってしまう。一人旅の気楽さと一人旅の寂
しさのシーソーなのだ。

 山手線大崎駅付近で、私の乗った成田エキスプレスが満員の山手線内周り電
車を追い抜く。むこうは通勤地獄の真っ只中なのに「へへへ、こちらはこれか
ら海外旅行だぜ、マウイだぜ」などという妙な優越感を感じてしまう。これが
普段ならば追い抜いてゆく成田エキスプレスをみるたび、旅心がそそられて胸
がキュンとなるのだが今日は逆である。ざまあみろだ。

(続く)