「あいちゃんの散歩道」

第3回 WindowsCEのメリット


 私はこれまでいくつかのPDAやパソコンで動くPIM(個人情報管理)ソフトウェアを渡り歩いてきた。PDAのほうは記憶にある範囲では主なものには次のようなものがある。

 また、パソコン上で使った(試した)PIMソフトはすぐに思いつくものでは、つぎのようなものがある(試用版も含む)。

 機能的にはどれも悪くは無いが総合的な操作性という意味では「Oranizer」シリーズは好みではない。デスクトップの大きな画面でフルスクリーンで使うならともかう、800×600ドットのノートPCで使うには、手帳を真似たGUIは無駄なスペースを食うばかりで肝心の情報量が少なくなってしまい一覧性を損ねるのである。紙のシステム手帳ユーザからの移行を狙ったのかもしれないが、紙の手帳には手帳ならではのスタイルがあり、コンピュータ画面での管理にはそれに適したやり方があるというものだ。さらに「Organizer 2000」に関しては、動作が非常に重くなっており、愛用の「Let's note mini/M32」(MMX Pentium/166MHz)で使うと起動時点からして、もうどうにも我慢ができなくて、インストールした試用版は数分後にはアンインストールされることになってしまい使い勝手をみる以前の問題だった。

 PC上のPIM単体として機能と自由度の両面で私を満足させてくれたのは「ECCO PRO」と「SIDEKICK」である。どちらも日本ではマイナーどころかショップでもほとんど見かけないソフトウェアになってしまったが、手帳の見かけなど下らぬことに無駄なことをせず、シンプルなインタフェースでありながら、PIMの本質をきちんと抑えたすぐれものだった。

 一方PDAのほうはといえば、HP100/200LXを卒業してからはPCとの連携を重視するようになった。つまりデータのシンクロナイズである。そういう点では、WorkPadやWindowsCE(上記のリストでいえば、E-55,A-60,Jornada680)はシンクロナイズそのものを最初から大前提して設計されている。これがLXとの大きな違いだ。LXは強力な自立型PDAである反面PCと単なるデータ交換ではない密接な連携は事実上不可能だ。

 これはどういうことかというと、デスクにいる間のPIMデータ操作は、操作性と一覧性に優れたデスクトップパソコンの大きな画面と入力しやすいキーボードを使い、離席するときにはデータ同期を(最悪でも)ボタン一発の操作で瞬時にとるだけで、それらのデータがそのままPDAにも反映する。逆にデスク以外の場所でPDAに入力したデータは、デスクに戻ってPCとつないで同期一発でPCに反映する。この同期操作は一日何度もあるものなので、時間がかかったり煩雑な操作が必要だったりすることは絶対に許されない。しかしこういった高度密着型連携は残念ながらLXでは不可能なのである。

 PCとの連携に優れたWorkPadとWindowsCEだがそれらの連携の様子はかなりことなる。まずWorkPadのほうをみてみよう。私が使っていたWorkPadはPCとの連携はグレードルに乗せただけではだめで、クレードルのボタンを押すことで同期が行われる。同期が必要な場合だけボタンを押せば良いのだが、逆に言えばボタンを押さない限り同期しない。つまり押し忘れたら同期ができないのだ。また同期相手のPalmDesktopのほうは、私のニーズを満たしてはくれない。WorkPadのPIMは最低限必要な項目は存在しているが、電話番号やメールアドレスをいくつももっている友人が多くいる私のような人間にとって、LXの高機能で柔軟なPIMから比べれば恐ろしく機能と項目が不足している。その結果PC側では現行の有名どころでは高機能であり、他の対応ソフトも多いOutlookを求めることになったのだが、高機能・多項目なPC側のOutlookと、比較的単純なPIMのWorkPadでは所詮完全に同期がとれるわけがない。IntelliSyncという同期ソフトをつかっても、WorkPadでは対応できない項目が多いし、何かと矛盾や不都合を引き起こすことがわかった。

 そうなると残るのはWindowsCEだ。PC側にOutlook97/98/2000を使う限りにおいて、PocktOutlookを搭載したWindowsCEとのデータ同期の相性は他の組み合わせの追従を許さないのは当たり前だろう。同期は設定にもよるがPCとシリアル/赤外線もしくはLANで接続中にはずっと同期を取りつづけることができる。つまりデスクで作業中は、同じ項目を両方で編集するような明らかに矛盾を招くことをしないかぎり、PCでのデータの変更は直ちにWindowsCEに反映し、WindowsCEの変更は直ちにPCに反映する。PCとつながっていないときのそれぞれの変更は、次回接続時に直ちに同期がとられる。管理項目も良くも悪くも同じマイクロソフト製品なので矛盾は生じない。

 かくのごとく、これまでいろいろなPIM、PDAを渡り歩いてきたが、近頃の私のように、PDAとPCでPIMデータの同期を完璧に取りたいニーズを持つ人には、その管理内容のレベルに応じてWorkPadかWindowsCEしか存在しないのだ。これらのどちらを選べばよいかは、対応する連動PIMソフトの機能で決めても差し支えない。PIMはどうでもよいというならともかく、PIMを重視するなら、そしてPC連携を重視するなら、PC側のPIMの機能で決めても良かろうと思う。ちょっと変わった決め方かもしれないが、特にWindowsCEの場合、先にPIMの機能で決めてからでもハードの選択肢はWorkPadよりはるかに多いので問題は無い。

 どちらにせよ、自分にフィットしたものに最初から出会うのはかなり難しいことだと思う。使っては嫌になって、買い替えて、また使っては嫌になって、これをくりかえしてだんだん自分が求めるもの、譲れない条件、あればよいが無くても妥協できる条件が見えてくるのである。もちろん最初からぴったりあてはまるものに出会うかもしれないがまあ稀であろう。そういう意味ではPDAとの出会いは男女の出会いに通じるところがあるかもしれない。


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