「あいちゃんの散歩道」

第5回 咳の風邪、その後


 1月23日(日曜日)から出始めた咳は、最初は軽いものだったので、近所の内科医でもとくに咳の処方もなく総合感冒薬と抗炎症剤、抗生物質(気管支や肺へ細菌性の炎症が及ぶのを防ぐ意味はあるのだろうが、どうも日本の医者はやたら抗生物質を使いたがる、ウィルスには抗生物質は無効であるにもかかわらず、とにかく抗生物質を出しておけば安心とでも思っているのだろうか)を処方してもらい服用していたが、咳のほうはひどくなる一方で、特に夜布団に入ってからと、電車の中など暖かくてもわっとした空気の所がだめで、咳が発作的に連発してえずきそう(吐きそう)になるのである。

 電車の中でそうした発作的な咳を避けるためにのど飴でもなめているうちはよいのだが、飴の切れ目が発作的な咳の出始めである。一度出るともうだめである。ついにはあまりにも気持ち悪くなったので、降りるべき自宅最寄駅の一駅手前の駅で降りてしまったくらいだ。降りてからも気持ち悪さはおさまらず、自動改札を抜けたあたりで本格的に嘔吐しそうになった。もうだめかと思ったが幸い嘔吐はせずにすんだ。しかし苦しさのあまり目には涙が浮かんでしまった。さすがにこれに耐え兼ねて、丁度薬がなくなるころでもあり、さきの内科医を尋ねてあまりにも咳が苦しいことを訴えて、強力な咳止めを処方貰った。これは風邪の後の気道が敏感になった咳にきくという漢方、一般の咳止め錠剤、咳止めシロップ、そして抗炎症剤と抗生物質(これは前回とはかわり気管支系の炎症に聞くという奴になった)と薬漬けになった。

 しかし、さすがは医者の処方する薬であり、あれほど辛かった咳発作もピタリと収まり、金曜日にはかなり楽になった。薬は「楽になる草」と書くというが、医療の原点はまさに苦しい症状がぴたりとおさまることに、医師の有りがたみがあるのだと痛感した。

 ところが、楽になったと思ったのもつかの間、今度は熱が出てきた。土曜日の午後から熱が出始めて日曜日には38.1度になった。その後翌日の月曜日には37度台に下がったがこうなるとやはり心配である。再度件の内科医を訪ねて、症状を話すとぶりかえしたのではないかということであった。また熱が下がるときに寝汗をかくのは当然としても、熱がさがった後もしばらく寝汗を少々かく夜が続いた。

 咳、微熱、寝汗となるとこれは「結核」の典型的な症状ではないか。そう思い始めると気になって仕方ない。件の内科医は聴診では異常は無いからレントゲンの必要も無いという。そういわれても「結核」は聴診でわかるものではないことくらいは私だって知っている。厳密には痰の培養検査が必要だが、とりあえずはレントゲンくらいはとらないと安心できない。

 自分の身を守るのは結局のところ医師ではなく自分自身だ。医師を信用しないわけではないが疑問が解決できないなら他の医師に相談すべきだろう。そう思って、娘が耳鼻科医、母親が内科医をし両方の看板を掲げている近所の別の医院で、まずは耳鼻科の診察を受けた。

 耳鼻科はさすが上気道の専門家であり、鼻からファイバースコープをつっこんで、気管(声帯のすぐ下)あたりまで医師自らの目で確認したところ、ひどい炎症があってただれたようになっており、熱もそこの炎症から来ているのだと思う。咳は気管部の炎症からだろうということだったが、お願いをして内科の診察も受けさせてもらった。母親の内科医のほうは聴診・打診をして、とくに問題はないと思うがと告げてくれたが、さらに心配なのだというと、そんなに心配ならレントゲンをとってあげてもよいが、といってくれたので待っていましたといわんばかりにお願いをした。

 結果は無罪方面で聴診・打診・レントゲン写真による診察では気管支、肺には異常はみとめられないということで、引き続き耳鼻科の診療だけで済むことになったのありがたかった。やはり心配なときにはきちんと調べてもらうのが一番である。

 咳が出はじめた翌週の金曜日、熱もすっかりさがって咳もおさまり再度耳鼻科医の診察を受けた。そこで再度ファイバースコープをつっこまれたが、ひどかった炎症もきれいになおっており、ポリープなどの異変も見うけられないとお墨付きを頂いて、一連の風邪治療から開放された。

 今回は二箇所の医院にかかっただが、後からかかったほうには、最初の医師の名前こそださなかった(これは妙な先入観をあたえてしまうこともあるし、知らなくてよいこともある)が、処方された薬や経過などを詳細なメモにして情報として耳鼻科医のほうに差し出した。それをみて耳鼻科医は自分で診察し、薬はその医者にもらっているこの薬をそのまま飲みつづけるようにとの指示をくれた。このあたりはきちんと話しておかないと薬の妙な切替や重複が出たりすることも有り、何より無駄な出費になることもあるから、きちん説明すべきだろう。そういう意味では患者が薬の内容をよく知ることができるようになった、近頃の医薬分業はありがたい。

 また、私の場合は咳、微熱という症状で特に咳がきつかったのだが、この冬の風邪は咳がひどかったり、気管支や肺を痛めるケースも例年より多いようだ、とは私が診てもらった耳鼻科医の話しで、さらにぶり返す人も結構多いと聞いた。しかし、この駄文を読んだ方で、自分も同じような咳ができるからといって、私と同じ風邪だと思うのは危険である。しつこい咳は、気管や肺、あるいは胸膜になんらかの炎症などがあることが多いから、しつこい咳が続くときは必ず医師の診断を仰ぐべきだろう。特に近年は若い人で「結核」にかかる方が増えているそうなので油断大敵である。おかしいと思ったら医師に診てもらい心配ならレントゲンもとって調べてもらうくらいの用心はしてもよい。


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