2月18日午前零時から、日本でもWindows2000が発売された。Windos98にしても、Windows2000にしても、ユーザインタフェースが従来のWindows3.1から劇的に変わり、ネットワークが飛躍的に簡単に使えるようになったWindows95の時ほどの騒ぎにはならないのは当たり前かもしれない。
いまさら言うまでもないが、Windows2000はWinowsNT 4.0の後継バージョンとなるオペレーティングシステムであり、WindowsNTの時代から、「カーネルモードとユーザモードの使い分けによるOSの安定駆動」、「プリエンプティブなマルチタスク」、「ネットワーク(LAN)接続を前提としたサーバー・クライアントモデルの採用」、「完全な32ビットOS]など業務用として使うには必須である条件をクリアしており、それはWindows2000にも確実に引き継がれている。
では、Windows2000で何が変わったかというと、詳しいことは専門誌に譲るとして、大きな変化は「広域化する企業の大規模ネットワークへの対応」のための機能と「プラグアンドプレイ機能を中心としたモバイル(ノート)パソコンへの対応」であろう。
これまでのWindowsNTのNTドメインによるマイクロソフトネットワークは、基本的には非常に狭い範囲内、たとえば同じネットワークセグメントで楽につかえるように作られてきており、それをベースにつぎはぎのような形でより大規模なネットワークにも対応してきた。しかし、それも主としてネットワーク管理や運用管理上の問題で限界に達しており、そこでディレクトリサービスである「アクティブディレクトリ」を全面的に導入したのがWindows2000だ。といっても別にWindows2000が初めてこのようなことをしていたわけではなく、こんなことはとっくに他のオペレーティングシステムで実現できいていたわけで、WIndowsがその面に関してはあまりに前時代的であり、貧弱すぎただけの話しで、別段感激したり驚いたりするほどのことは全く存在しないといってよい。感激するほうが変なのであり、今や当たり前の考えがWindowsでも当たり前にできるようになっただけだ。
「アクティブディレクトリ」でも「従来のNTドメイン」であっても、ユーザから見れば大きな変化はなくて、やりたいことが出来ればどちらでもよいわけなのだ。こうしたネットワークシステムの変更というかディレクトリサービスの導入は、完全に管理者側の都合で考えられたもので、管理をいかに容易かつ簡素にして管理コスト(TCOともいう)を削減するかが問題になっていたのでである。「アクティブディレクトリ」の導入で本当に管理コストが削減できるかどうか賛否両論が存在するところで、導入が軌道に乗るまで、特にドメイン構造やOU(Organization Unit 構造)の設計は一度決めると変えられないから大変に手間と高度な知識が要求される。しかし一旦軌道に乗れば管理権限の委任などで、これまでごく特定の一人もしくは二〜三名の管理者に集中していた管理の負担が分散できるのは確かであろう。
ともかく、このような背景をもったオペレーティングシステムであるから、用途は当然企業ユーザ向けとされてきた。しかし発売日が見えてくるにつれ、マイクロソフトのアナウンスは一変し、個人向けとしても勧めるようになってしまい、主要なPC雑誌に Windows 2000 RC2版をつけて何百万枚もRC2をばらまいたのである。
その結果当たり前なことに、超初心者向け、初心者向けPC雑誌までWindows2000の特集記事を組むことになってしまい、今までWindowsNTとは無縁だった個人初心者ユーザまで、Windows2000に興味を示すようになってしまった。慌てたのはマイクロソフトの成毛社長らしく、リリース当日の会見では「企業向けOSである」と断言し、「購入している個人ユーザはかなりPCに詳しい人ではないか」とも言った。巷に存在するかもしれない「Windows98の後継OSはWindows2000だ」という妙な誤解(最終的にはWindows98の流れとWindows2000 Professionalの流れは統一される予定だ)にも釘をさし、「Windows98の後継は今年中に発売予定のWindows Millenium (正式名称は Windows Me に決まったようだ)だ」ともいい、さらに釘をさした。中にはこの猫の眼のようにかわるマイクロソフト社の態度に腹を立てている人もいるようだが、WindowsNTやWindows2000を正しく理解していれば腹などたたないはずで、むしろ「個人向けでもある」としたマイクロソフトのアナウンスに疑問を呈するはずなのだ。
実際問題として、Windows95/98を使っていたユーザがWindows2000に乗りかえるには超えなければならない壁がいくつもある。まず、これまで使っていたソフトウェアが商品版のWindows2000で問題がないかどうかだ。これは基本的にはソフトベンダーに確認するしかないが、Webなどをみても大手ソフトベンダー以外は対応が遅れており、下手すればWindows2000対応の予定すら出ていないところもある。対応の予定があっても、それは次期バージョンからであり、そのためにはバージョンアップの出費を強いられることも有るし、フリーウェアやシェアウェアでは対応などはおぼつかない可能性も高い。
また、使っているハードウェア側の対応も問題で、Windows2000がネイティブでデバイスドライバをもっている物以外は、ハードウェアベンダー側で何らかのデバイスドライバを用意する必要がある。これもソフトウェア同様、古いものは「対応せず」とかになっていることも多いし、下手すればWindows2000という言葉さえ、そのメーカーのWebサイトには出てこない。速いものはすでに対応ドライバがリリースされたりしているが、遅いものは対応予定はあるけど、具体的リリース日程は未定というのも多い。
自分が使っている環境で、Windows2000に対応していないものがあるかどうかを調べる機能がWindows2000のインストールプログラムにはあって、実際にインストールせずとも有る程度対応レベルを知り、致命的な問題は事前に知ることができる。これも初心者はもとより販売店の担当者も知らない人は多いであろう(もちろん私は知っている)。
インストールについても、実際にはインストールウィザードで「推奨」される上書きアップグレードインストールより、別パーティションにインストールするクリーンインストールのほうが、経験的にははるかにトラブル遭遇の可能性が小さいがそうした情報も初心者レベルではなかなか入手できないか、意味が理解できないであろう。
アップグレードインストールはもとより、別パーティションへのクリーンインストールでも、インストール途中でトラブルが起こった場合は、そのままではWindows95/98は二度と起動しないことにもなる。もちろん、その理由(つまりWindowsNTやWindows2000、Windows95/98のブートのしくみ)を理解していれば対処は難しくないが、このレベルを期待できる個人ユーザの数は少ない。大抵はWindows95/98をすっぴんで一からインストールすらしたことがないのではないだろうか。
こうした個人初心者ユーザの方が、どうしてもWindows2000を使いたいなら、安全な道は唯一つ、Windows2000 ProfessionalがプレインストールされたPCを新たに購入することであろう。あるいはWindows95/98/NT/2000に詳しい人で相談できる人が身近にいることが前提だ。Webの掲示板やら@NIFTYのフォーラムなどをあてにしてはいけない。
とはいえ、Windows95/98から移行するメリットも存在する。例えばメモリが128MB以上あれば、多くの場合はWindows98にくらべてGUIの動作はきびきびとするようになる。ブートに必要な時間は三倍くらいかかるが、一旦起動すれば多くの場合Windows98より速いと感じるであろう。また、メモリを沢山つんでもWindows95/98ではあまり役にはたたないのだが、WindowsNT/2000ではメモリは多いほど良い。最低でも128MB、できれば256MB以上というのが経験的には欲しい数字だ。
またWindows95/98のようにリソース制限がないのもメリットだ。Windows98のSecondEdtionではOSだけを起動してもすでにリソースの残りが60%台になっていたりして、非常に厳しいのだが、Windows2000ではそれがない。
よく言われる安定性も魅力だ。Windows95/98では一つのアプリケーションエラーがOS全体の障害をまねき、「OSごとお亡くなりになる」ことが多かったが、NTや2000ではそういうことはまずない。正しいドライバソフトウェア(MSの認定テストをパスしたものに限る)がただしくインストールされていれば、2000のバグに寄らなければ、そのアプリが死ぬだけである。
こうしたメリットやディメリット、必要条件を総合的に判断してから導入をすべきであろう。あるいはドライバソフトやソフトウェアの対応がそろってくるであろう春頃に導入の可否を決めてもおそくはない。現状で不満がなければ、知識がない人、知識のある人のサポートを受けられない人は手を出すメリットはない。何より個人レベルでWindows98で特に問題無い使い方をしている人が、Windows2000に移行したからといって何がかわるわけでもないし、とびぬけて新しいことができるわけでもないのである。
実際に販売店店頭に平積みになっているWindows2000が売れているかというと、大手量販店でしばらく見ていても、手に取る人はいるがそれを持ってレジにゆく人は非常に少なくて、大抵はパッケージをみてそのまま戻して他の売り場に去ってゆく。現状でのハードウェアドライバの対応の遅さ、ソフトウェアに至っては有償アップグレードになるものも少なくなくてWindows2000の代金だけではすまない現実がある。やはりそこにメリットとディメリットを天秤にかける人が多いのは、ちょっと安心の要素だ。
しかしその一方では、量販店の係員にパッケージを手にとって「これは自分のPCで動くのか?」と尋ねる人もいるらしい。使っているソフトや構成が千差万別なのだからそんなことが店員にわかるわけがない。そもそも店員にそういうことを聞かねばならない人は絶対に手を出すべきではないと思う。
ともあれ、ソフトやハードの対応が実用的なレベルでそろうのは春頃になるだろう。私も自分の環境につかっているものが対応するまでは様子見である。
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