「あいちゃんの散歩道」

第10回 DVD/VIDEO


 前回書いたように、比較的高性能なデスクトップ(正確にはミッドタワー)PC2台を手元で使うことができるようになり、うち1台にDVD (Digital Versatile Disc = デジタル式多目的ディスク、とでも訳すべきだろうか) ドライブが搭載されているので、DVD/VIDEOのソフトを見ることができるようになった。

 昔は映像ソフトといえばビデオしかなくて、市販のビデオソフトといえば映画で一万数千円から二万円近くもして、とてもじゃないけれどそれを買ってまで鑑賞することなどできなかった。しかし、そのうちレンタルビデオ屋ができて、ソフト価格の高価さもあって私も大いに利用させてもらった。次に出てきたメディアがLPレコードほどの大きさの、今から思うと大きな光ディスクだが、こちらはビデオのVHSとβ同様、互換性皆無のレーザーディスク(非接触)方式とVHD(接触)方式の二つに分かれてしまい、プレーヤーが両者で全く別であり、それぞれに高価なことや、レンタルがほとんどなかったこともあって、私はもとより知人でもこれらを購入した人はほとんどいなくて、まずはVHDから下火になり、やがてレーザーディスクもプレーヤーも店頭からどんどん姿を消してゆき、またビデオの天下が戻ってきた。

 そして今の注目はDVDだ。これも最初は両面式か二層式かとかごたごたしていたが、今は片面一層、片面二層、両面一層、両面二層と出来て、プレーヤのほうがそれらをカバーするような形にもなって、今のDVD/VIDEOプレーヤーやDVD-ROMドライブはそれらのどちらでも再生できるようになった。人気のドラマ「ER(緊急救命室)」の七枚組みなどは、一枚目は片面二層式でレーベル印刷があり、二枚目から七枚目は両面一層式で中央部のごく狭いエリアに小さな文字の印刷があるだけだったりして、両者混在だ。

 さて、DVD/VIDEOの話しだ。最近のパソコンは安い機種でもDVD-ROMドライブを搭載しているし、自分でアセンブルする場合(単なる「アセンブル」であってパソコン雑誌各誌が書くような「自作」などと言葉を適用するには、その昔、趣味で回路設計・プリント基板設計・半田付け・組み立て・テスト・トラブルシューティングまで独力でやっていた私に言わせると、あまりにも低レベルすぎる)でもDVD-ROMドライブは一万円台で購入でき、ソフトウェアデコーダに至っては実売5千円前後で購入できる。まして最近PCを購入した人は、すでに何もせずともDVD/VIDEOを見る環境がパソコンにくっついてきているのである。そんなこともあってか、特にパソコンユーザの間でDVD/VIDEソフトが急速に普及しつつあるような気がするし、さらにPlayStation2がそれに輪を掛けたのは間違いないのではないか。とにかく、単機能のDVD/VIDEOプレーヤーをもっているのは、どちらかといえばAVマニア族に多くて、PlayStation2やPCがあるからDVD/VIDEOソフトを買って見るという人のほうがはるかに多いように感じる。実際私もその一人であり、わざわざDVD/VIDEプレーヤーを買ってまで見ようとも思わないが、手持ちのPCが偶然DVD鑑賞できる機能をすで持っているのだから、ソフトを買って見てみようではないか、と思ったわけだ。

 私の場合、DVD/VIDEOがついている私のPCは PentiumIII-733MHz にグラフックアクセラレータはDVD再生支援機能のついた Creative GeForce 256 という恵まれた環境であるから、ソフトウェアデコーダ(WinDVD2000 を使っている)でも全く問題なくPCの画面でフルスクリーンモードにして鑑賞可能だし、実際、当初はそのようにしていた。

 ただ、家族でDVD/VIDEOのソフトを楽しもうとするとこれはちょっと困ってしまうことになる。というのもPCの設置場所が居間の隅に置いたパソコンラックだから、普通のテレビのようにお茶を飲んでお菓子をつまみながらねそべって見るとか、水割りの入ったグラスを片手に寝転んで見るなんてことが出来ないのである。パソコンを使うときのように椅子に座ってきちんと見なくてはならない。それでもまだ椅子にすわっているほうはよいほうで、残りの家族はひどく見づらいポジションに甘んじるしかない。

 これはどう考えてもよろしくない。できれば居間のテレビに出したいところだが、そのために専用プレーヤーをかうのは馬鹿馬鹿しい。今の私のパソコンを使って再生するDVD/VIDEO映像をテレビに引っ張りこむ方法は二つある。一つはビデオカードのRGBモニタ出力をスキャンコンバータを通してテレビに写すやり方だ。これはPCの画面はなんでもかんでもテレビに写してしまうが画質が悪いことおびただしく、DVD/VIDEOの鑑賞など論外であろう。もう一つは、DVD/VIDEOのハードウェアデコーダをPCに取りつけることだ。こちらのほうはS端子出力とか、5.1chのAC-3対応デジタルサウンド出力とかもあり、先々AV側の拡張にも耐えられる。この二つはもはや比べるまでもなく、後者のハードウェアデコーダの圧勝である。

 というわけで、テレビに写すために "I.O.DATA" の DVDデコーダカード(GV-DVD2/PCI)を導入した。これは、グラフィックアクセラレータカードのRGB出力を取りこんで、それにデコードしたDVD/VIDEO映像を重ね合わせてモニタに返す「アナログ・オーバーレイ」機能もあるものだ。

 しかし、アナログ・オーバーレイをかけると通常のPC画面もどうしても甘くなってしまい画質が低下してしまう(当たり前である)し、再生される色の具合もPC画面で見る分には、ソフトウェアデコーダのほうが何倍も綺麗だったりするから、PC画面で見るには私の環境では役立たずだ。だから、私はグラフィックアクセラレータのRGB出力はそのままモニタにつなぎ、デコーダカードのビデオ出力をテレビに、音声出力をステレオにつないだ。つまり、PC画面で見るときは、ソフトウェアデコーダ(WinDVD2000)を使い、テレビで見るときはハードウェアデコーダ(GV-DVD2/PCI)を使うという使い分けである。ちょっぴり贅沢だが現状ではこれが一番ベストだ。

 現状の GV-DVD2/PCI にはいくつか問題もある。まず、アナログ音声出力の出力レベルが極端に小さくて、そのままステレオアンプにつなぐと、チューナーやCDとの音量レベルに相当な開きがあることだ。したがってDVDをみたあと、ボリュームを下げないでビデオデッキやCDにすると、大音響が部屋に響き渡ることになる。これを回避するには GV-DVD2/PCI からのアナログオーディオ出力とステレオの間にアンプを噛ませるしかない。そのためには、例えば GV-DVD2/PCI のアナログオーディオ出力を サウンドカードの AUX/IN にいれて、サウンドカードの LINE/OUT 出力をステレを入れるくらいしか簡単な解決策は内。I.O.DATAのサポートに言わせれば「増幅回路をもっていないから仕方ない」と半ば開き直りともとれるのだが、使い方を良く考えるべきであって、DVD/VIDEOのハードウェアデコーダのアナログオーディオ出力とビデオ出力はAVシステムにつなげられることが大いに決まっているのだから、他のオーディオ機器(カセットデッキ、CDプレーヤー、チューナーなど)の LINE/OUT とレベルをあわせるべきである。オーディオ機器ならカタログに当たり前に書いてある LINE/OUT のレベルもまったくどこにもかかれていない。このあたりは、所詮PC関係のメーカーのやることで、片手落ちもいいところだと言われても仕方有るまい。そういう意味ではオーディオメーカーとしての経験も豊富なソニーあたりのほうが、同じ事をやると仮定したらずっとまともにやってのけるかもしれない。誠に残念ながら、I.O.DATAは所詮PCパーツメーカー以上のものではないということかもしれない。

 次に、付録のサポートソフトウェア(Ver1.0)には結構致命的バグがあることだ。このデコーダには、サポートソフトウェアがついていて、デコーダカードのドライバと、DVD/VIDEOのコントロール(再生や停止)などができるのだが、私の環境では、出力をテレビ側にしておいて、コントーラーのGUIの停止ボタンを押すと、次に再生ボタンを押しても、出力がテレビのままではエラーになって再生できないのだ。これはディスクを変えても同じだし、リブートしても同じ、ドライバとコンロールソフトの両方を再インストールしないと治らない。同じ状況が@NIFTYのI.O.DATAステーションでも報告されている。しかし不思議なことに出力をPC側に切りかえるとこの現象は発生しないし、一旦この現象が出てしまった場合でも出力をPC側に切りかえることで解消する。実に不思議なのだが、大いに困ることでもある。何故なら、PC画面でみるには、GV-DVD2/PCI なんぞ使うよりも、WinDVD2000のほうがずっと綺麗な画像を得られるからで、このカードを導入したのは、DVD/VIDEOをテレビで見るためだからだ。なのに、その状態で停止ボタンを押したらそれ以降再生できないというのは問題外だ。この状況をサポートに伝えると、向こうでも認識している現象らしく、修正プログラムの試用版があるというので早速送ってもらったところ無事この憎むべきバグは解消した。しかし、今のところこの版は公開されていないので、私と同じ目的で GV-DVD2/PCI を導入した人はハマる可能性があるからご用心。ハマったらためらわずにI.O.DATAのサポートに電話するか、Webページから連絡をいれるか、あるいは@NIFTYのI.O.DATAステーションにトラブル報告をするしかない。

 ともあれ、こうして我が家のテレビでもDVD/VIDEOの鑑賞ができるようになった。DVD/VIDEOの一番のメリットは、米系映画作品や米系ドラマ(ERなど)のほとんどは、音声はオリジナルの英語と吹き替えの日本語、字幕は英語・日本語・字幕無しが自在に切りかえられることではないか。一般のビデオテープだと、ほとんどのタイトルは音声については通常は原語(多くは英語)か吹き替えを選ぶしかなくて、二ヶ国語のテープだとステレオでは無くなってしまったりして悲しいことこのうえない。さらに字幕については英語音声のものには日本語字幕が入っているが、英語字幕のタイトルはクローズドキャプションに対応したもの以外は日本ではまずみかけない。

 日本語と英語の音声・字幕がそれぞれに切りかえられることの最大のメリットは、私のように第二言語としての英語学習者(ESL) のヒアリングトレーニングにある。そのタイトルを頭を空にして母国語である日本語吹き替えで楽しむこともできるし、ヒアリングトレーニングで字幕無しの英語音声にすることもできる。何度聞いてもわからない部分は英語の字幕を出して見てみることもできる。DVD/VIDEOのタイトルを選べばかなり有効な英語学習ツールになること間違い無い。CS放送や一部ビデオテープのタイトルではクローズドキャプションに対応しており、アダプタを使えばテレビに英語字幕を出すことができる。しかしメディアとしての操作性の良さ、何度でも簡単に繰り返すことができることなどを考えると、英語学習の道具としてはDVD/VIDEOの勝ちだと思う。

 残念ながら、私の自宅のテレビにはS端子はないが、S端子のあるテレビであれば私の今のPCからかなり美しい画像を鑑賞することができる。現在は残念ながらコンポジットビデオ信号を経由してみているが、それでもビデオテープのタイトルとは画質がまるで違う。音声は映画などだと5.1chのオリジナルデジタル音声を2chステレオにミックスダウンしたアナログオーディオ出力をステレオコンポに入れてで聞いているが、それでもそれなりに素晴らしい音響を楽しむことができる。購入するということを考えた場合、今の大きなVHSビデオカセットテープはかなり場所を取るのも狭い我が家では問題だ。

 画質を問わず気軽に一回見て終わりにするなら、あるいは録画したいならビデオテープを使うべきだが、気に入ったタイトルで何度も見たくなるようなもの、サラウンドで楽しみたいタイトル、高画質で楽しみたいもの、英語の勉強に使いたいものなどがあるなら、これは絶対にDVD/VIDEOを使うべきだろう。

 DVD/VIDEOで残念なことは、映画会社の一方的な馬鹿馬鹿しい都合によりリージョナルコードが組みこまれてしまったことだ。世界を六つの地域にわけて番号をつけ、DVD/VIDEOプレーヤにもその販売対象地域にあったリージョナルコードが組みこまれ、一方でタイトル(ソフト)のほうにもその販売地域にあったリージョナルコードが焼きこまれており、その両者が一致しないと再生できない仕組みになっている。つまり米国で購入した米国向けタイトルを日本で購入した日本向けプレーヤーでは再生できないし、逆もまた不可能である。どうも映画会社が自国で先に販売したDVD/VIDEOソフトが海外に流出して、海外での映画の公開より先にDVD/VIDEOソフトが出回ったりすると、映画の売上に響くことをおそれてこのような規格を付加させたらしい。プレーヤーを製造・設計するメーカー側としても映画会社からタイトルの供給をうけられなければ、プレーヤーの普及は望み得ないから、映画会社の言うなりなのだろう。実にばかばかしいく完璧に消費者無視の仕様だが、そういうものが現に存在しており組みこまれているのは紛れも無い事実だ。

 日本市場に関して言えば、一般の消費者が日本語字幕も日本語音声もないものをいくら新しい映画だからといって、わざわざ米国から取り寄せてまで購入して見るだろうか。また仮にそうして先行購入したとしても、DVD/VIDEOで鑑賞したから劇場ではもう見ないとは限らない。よい作品ならやはり劇場の大きなスクリーンと迫力有る音響効果を楽しみたくなるものだ。少なくとも日本市場に関して言えばリージョナルコードは無意味な存在であるといえる。ただ、英語を解する人が多い欧州では話しは違ってくると思われるが、実は米国と欧州ではテレビの方式が違うので、仮にリージョナルコードがなくても

 このように困ったところもあるが、価格的にビデオテープソフトと差が無いこと、保存性の良さ(コンパクトである)、音声と字幕がマルチランゲージであること、まき戻し・はや送りが不要であること、ドルビーサラウンドといった高品質の音声に対応していること、画質がビデオよりずっと良いこと、などのメリットがあるのがDVD/VIDEOだ。

 DVD/VIDEOの今後の普及は、タイトルの販売状況(もちろん価格も)にかかっているが、もうひとつ、ビデオ同様にレンタルとして扱われるようになることだ。以前レーザーディスクが普及しなかったのは、プレーヤーの価格もさることながら、ソフトの少なさと高価さに加えてレンタルがなかったことにある。DVD/VIDEOについてはレンタルビデオ/CD大手の「TSUTAYA」がすでに多くの店舗であつかっており、今後のレンタルDVD/VIDEOの普及を期待している。レンタルDVD/VIDEOが普及すれば、それだけプレーヤーも普及が早くなるし、そうなるとますますDVD/VIDEOソフトが充実してくると期待できるからだ。

 家庭内の娯楽道具の一つとして、外国語学習のツールとして、こいつは強い味方になりそうだ。 


Copyright (C) 2000, あいちゃん, All rights reserved.
筆者に無断でこのホームページの全部もしくは一部を転載、複写、再配布することを堅く禁止します。