「あいちゃんの散歩道」

第15回 分譲マンションを選ぶポイント


 私が住んでいる地域では、バブルの絶頂期には安くても数千万円、平均的には七千万円とか八千万円、ちょっと広くて便利だと一億円近い価格の新規マンション分譲の広告が、新聞の住宅販売折込広告の大半を占めていた。それからバブルが崩壊し、住宅販売は冷え込んで、価格も一千万から三千万円くらい下がったようで、三千万円台〜六千万円台が中心となった。多いのは四千万円台後半から五千万円台で、広さはせいぜい70平米台だ。

 70平米台で五千万円台というマンションの価格を安いと感じるか、高いと感じるかは人それぞれだが、平均的サラリーマンの場合で、親の遺産や資産・手持ち不動産も一切無い場合、これを「安い」と言える人は昔から相当の高級取りで貯蓄もたっぷり有るか、支出が少なくて済む人(物価や家賃が都心に比べて安いかなり遠方の郊外居住者)であろう。

 私のように都心近くでこの上なく便利であるが、家賃や物価も安くない地域に住んでいると、そうそう金もたまらないし、何より給与だってそんなに高級取りではないから、五千万円台なんてのは高値の華で、とてもじゃないけれど手が届かない。バブルな住宅価格で麻痺した感覚には五千万円なんて珍しくは無いが、USドルに換算すると何と四十七万ドルという目の飛び出る金額である。それも広い一戸建て住宅ならともかく、土地は共有で広さは70平米台のちゃちな物件である。70平米というと約750スクェアフィートと馬鹿狭で、私が最低ラインだと思う1000スクェアフィート(約92平米)にも満たないのである。700スクェアフィートで50万ドルなんて、そうそうお目にかかれるものではない。

 まあ、日本の都市部、とりわけ東京の異常な住宅事情は企業の一極集中が続く限りまだまだ改善の見こみは無いから文句を言っても始まらない。より積極的な解決策は、もっと田舎のほうに引っ越すか、こういう住みにくい国とはサヨナラして、海外移住するかであろう。どちらにせよ、ほどほどで首都を見捨てるのが一番の解決策であることは間違い無い。私は関西圏で生まれ育ったが、東京は父の故郷であるし、かれこれ十数年以上練馬区の住民であるので、住みなれた練馬区や池袋ターミナルは大好きである。だが、しかし、ずっと住みつづける場所ではないと思うし、ましてここで死にたくは無いと思うのも確かだ。

 コンピュータ関連の仕事をしている私にとっては、昔は東京というのは情報の中心であったが、ネットワークが発達した今となっては、それはほとんど無意味になってしまった。コンピュータ関連企業は比較的早期に、東京やその近隣から郊外のほうに場所を移しているところもある。ADSLなどの高速・定額な通信が日本全国で使えるようになるのは、まだまだ先の話しだというのは一つの問題ではあるが致命的な問題ではない。ネットワークをうまく使えば、東京にいなくても良い仕事は沢山有るのではないだろうか。それこそマウイに居ても良質な通信環境さえ確保できれば仕事の大半は可能になるのではないか。

 話しがそれてしまったが、とにかく広い家に移りたい、静かで空気の綺麗な場所に移りたいといった思いは多くの人に共通であることは間違い無く、涙ぐましい努力の結果、あるいは非常に幸運に恵まれて新しい住まいを手にする人が大勢いる。しかし中には多額の借金を抱えて購入したマンションに後悔している人が少なくないのも確かだ。

 後悔する理由はいくつかあるだろうが、近隣との対人関係・勤務先との関係(転勤など)の個人的な理由を別にすれば、

  1. 借入返済以外の月々の住宅支出が思ったより大きかった
  2. 管理が悪い
  3. 居住者のモラルが悪い
  4. 入居後に日照や風通しをさえぎる建物ができた
  5. 入居後に近くに高速道路や大きな道路が出来ることがわかった
  6. 土地の問題で湿気が強かったり沈み込みがあることがわかった
  7. 建物の欠陥が出た

などがあると思われる。私自身はマンション購入経験はないが、親が何度かマンションを買い換えており、それらの様子を粒さに見てきたので、自身はそれなりによくわかっているつもりで、少なくともずっと親元で一戸建てに住んできて、始めてマンションなるものを購入する人よりは良くわかっているつもりだ。

 まず、「借入返済以外の月々の住宅支出が思ったより大きかった」という点を見てみよう。この原因は資金計画の甘さ・見とおしの甘さ意外の何物でもない。不動産を購入するということは、その維持管理の直接責任も自分にあるあけで、マンションの場合はそれらを事実上共同所有であるから、共益費や修繕積立金も必須である。共益費はいつまでも固定ではないし、修繕積立金については不動産販売会社は、客が買いやすくさせるためにこれを非常に安くすることが多い。中には修繕積立金が数千円にも満たないものも見かけたりする。修繕積立金を安くすることは可能だが、マンションの建物の質を維持するためには、外壁塗装、金属部塗り替え、屋根部補修、共有設備(ポンプなど)補修・交換、などが必要でこれには莫大な資金が必要になる。これらが必要になる時期は決まっているから、必要な資金額は決まっているのだが、月々の修繕積立金が安いと、それだけこれらの修繕地に必要な不足分一括支払額が多くなり、下手すると軽く百万円単位になる。父がマンションの理事長をしていた時期もあったので、そのあたりは有る程度知っているのだが、実際に建物価値を維持しうる補修を行おうとすると、月々の修繕積立金は最低でも二万円前後は必要(マンション規模などのより当然変わってくる)だという。それを五千円で住ませていると、単純計算で一戸当たり十年間で百八十万円の資金不足に陥るため、二百万円近くを一括支払いしなくてはならなくなる。つまり、共益費や修繕積立金については、いくら徴収されてちょうとも、最低でも月々三万円〜四万円は覚悟しておくのが無難というわけだ。もちろんマンションを転売するつもりもなく、住み捨てるつもりなら修繕はしなくてもよいが、それは共同住宅一個人の意思で決められるものではない。

 次に管理の問題。分譲マンションでは建物の維持管理は専門の管理会社に委託され、建物の売買契約に続いて管理の委託契約も交わすことになる。管理会社は建物を建てた建設会社や販売会社の関連会社であることも多いが、そうでない管理専門会社の事もある。これは信頼のおけるきちんとしたところから、そうでない怪しいところまでさまざまだ。多くの購入者は購入前には気にもとめないようだが、できれば売買契約を交わす前に管理委託契約書の内容をチェックすべきである。聞くところでは売買契約後でないと、管理委託契約書を見せてくれないところも多いらしいが、こんなのはもってのほかである。見せてくれないというのは、売買契約を交わす前に見せるとまずいことが書いてある(売買契約を客が考え直すようなこと)「かも」しれないので、そういう業者は要チェックかもしれない。基本的にマンションを購入するというのは、単に建物を購入するだけではなく、建物と管理を購入するのだと考えるべきだ。いくら素晴らしい建物でも管理がずさんでは10年もたたないうちにスラムになってしまうのは確実だ。建物さえまともであれば、管理がきちんとなされていれば、その住み心地は維持できるし、資産価値の目減りも減らすことが可能だ。繰り返すが分譲マンションは、建物と管理の二つが車の両輪であることを忘れてはならない。そのためには、最低限、管理委託契約書を売買契約を交わす前に必ずチェックすべきだし、それをガンとして拒否するような業者なら、そのマンションの購入を見送ったほうがよい。

 次に居住者のモラルの問題。これは新築分譲マンションでは事前に知ることは不可能だろう。居住者同志の交流がほとんど無い日本のマンションでは、神に祈るしかないかもしれない。だが、一つ二つ事前にチェック可能なこともある。それは居住者層が同じくらいの年代・社会層を狙ったものであることだろう。極端な話し、家族で住まうのに独身向けのワンルームや1DKが一緒に有るようなところは絶対にさけたほうがよい。はっきりいって独身者と所帯持ちは一緒に同じマンションに住めるものではない。また、自分がサラリーマンならやはり同じようなサラリーマン世帯を狙った物件にすべきであり、一般の昼間勤務のサラリーマンと生活時間帯が違う職業が同じ建物内に多くいると、騒音などで互いに迷惑を感じることが多いし、これは常にもめごとのタネになる。賃貸なら管理人でもめごと解決という手もあるが、分譲だと当人同志の解決しか道はないし、嫌だからといってそう簡単に引っ越すわけには行かないから大変重要な要素だ。その結果過去にあったような殺人や傷害事件に発展しないとも限らない。

 そして、入居後に日照や風通しをさえぎる建物が出来た場合だが、これも事前に予測するのは難しいが不可能というわけでもない。日本の場合、伝統的に家屋への日当たりの良さを重視するから地理的に南側が空いていないといけない。したがって南側を要チェックである。注意すべきなのは、南側に田、畑、空き地、駐車場、ちょっと敷地の大きな家屋がある場合だ。これらがいきなりつぶされて高層マンションになったり、ワンルームマンションになったりすることがあるからだ。賃貸なら日当たりが悪くなったからということで引越し費用を覚悟すれば簡単に引っ越せるが、分譲はそうではないから要チェックである。

 さらに、入居後に近くに高速道路や大きな道路ができる場合だが、これは100%近く避けることができる。高速道路などがいきなりできるわけはなく、相当以前から計画されているのである。これは市町村役場や都道府県庁などに出向いてその地域の都市計画図を閲覧すれば良い。特に一戸建て住宅では重要で、それをしらないと自分が買った家が道路になる土地の上に立っていて、すでに遠くない将来には立ち退きを余儀なくされたり、増築ができなかったりすることもあるし、何より転売ができなくなる。ちゃんとチェックしておけば自分のマンションのすぐ南に大きな道路が通って排気ガスと騒音で悩まされるようになり、引っ越そうにも買い手が見つからない、なんて悲劇も避けることができる。似たようなことでは、過去の土地利用図も調べるべきだ。もともと畑であれば問題無いが、田をつぶした土地だと湿気が高いし、沼や湖を埋めたてた土地だと湿気はもちろん高いし、土地の陥没なども多いに考えられるからだ。

 最後に建物の欠陥だが、これは専門家でも完成した直後のマンションでは仔細に状況を知ることは不可能だ。一戸建て住宅なら建築中に専門家に見せるという手もあるが、これも完成済みの家屋を買うとなるとなかなか難しい。これは建設に携わった業者が信頼のおける業者であること、くらいしかないだろうが、これも知るのは難しい。一次業者は信頼のおけるところでも、実際に携わる下請けが資材や工法をごまかしたりしたらどうにもならないからだ。はっきりいってマンションを購入するなら、何らかの欠陥は覚悟しておいたほうが良い。欠陥が無いマンションなんか存在しないのではないか。ただ欠陥には程度の差が有ってそれが居住に差し支えるほどか、気づかないほどかといった差があるだけの話しだ。自分が住み始めた時にはわからなかったけど、転売するときには欠陥が明らかになって転売できないという可能性も最初から覚悟すべきである。

 マンションにせよ戸建て住宅にせよリスクは覚悟すべきだ。買い物が大きいからそれだけリスクも大きくなる。特にマンションでは事実上土地は手元に残らないから、天災などで建物が半壊状態になったら、戸建てのように自分の意思で勝手に建てかえることもできないので、下手をすると半壊状態の住めない部屋しか手元に残らなくて、なおかつ半壊だから保険もろくに出ないし、もちろん戸建てのように上物は壊して土地だけを売るなんてことも不可能だ。再悪はコンクリートの屑しかないのに、何年もローンだけを支払うことになることは、購入前から覚悟すべきだ。個人的にはマンションは買うものではなく借りるものだと思っている。買うなら転売など考えずに、買い捨てる覚悟が必要だし、再悪はローンだけが残るような覚悟もすべきだろう。

 一つの策としては、新築ではなく築後数年程度の中古物件を買うことで、リスクのいくつかは避けたり予知することが可能だ。どういうことかというと、まず日常の管理や居住者のモラルを知ることができるからだ。チェックすべきは、ごみ捨て場、自転車置き場、集合ポスト、エレベータ内、階段、玄関ホールなどの共有部分だ。このあたりがきちんと清潔にかつ整然と保たれていれば、日常の管理もしっかりしているし、居住者のマナーもそこそこ良いと思われる。

ただ、管理といっても日常外の保守・定期修理などは別だ。築年数、築後に行われた補修(外壁塗装や屋根の保守点検など定期的にやるべきこと)がいつどのくらいの規模でどういう内容で行われたかを調べ、修繕積立金の額(過去およびこれからの)も調べる必要がある。これらを知ることで、次に定期補修をする際に、どれくらいの不足額がでるか比較的簡単に知ることができる。自分でわからなくとも、専門家に見てもらう基礎データを得る事は可能だ。ここでも繰り返すが、マンションは建物と管理の両方を買うのであり、建物だけを買うのではない。

 また、築後数年経過することで建物自身の欠陥はある程度見えてくるようになるから、この点でも欠陥だらけの建物をちょっとした設備とペンキと壁紙でごまかしたものよりは相対的にまともな物件を選ぶことができるチャンスは多くなると思われる。

 中古マンションを買う場合リフォームされていることがほとんどだが、個人的にはこれは疑問だ。売却側としては、例えば百万円かけてリフォームすることで、売却額が百五十万円上がるならそれに越したことは無いのは明らかだ。しかし、時にはリフォームすることで建物のあらを隠されてしまうことだってあり得るだろう。かなり亀裂が入った壁を暫定的にパテなどで埋めて壁紙を張りかえれば、短期的には外観上は全くわからなくなる。建物の問題点を隠す隠さないは別にしても、自分が気に入るかどうかもわからないようなリフォームをされるよりは、その分買値を安く叩いて買い手が自分の好みに合わせてリフォームしたほうがよいのではないだろうか。それにそのほうが、リフォームの手を抜くところときっちり仕上げるところといったメリハリをつけることができ、そうすることでリフォームに必要な当座の費用を抑える事だってできるだろう。とにかく、リフォーム済みという言葉にあまり信頼をおかないほうが無難だと思う。

 マンションにせよ戸建て住宅にせよ日本の住宅事情では猫の額ほどの広さを、一生ローンを背負って買うわけだから、少しでも賢い買い物をしたい。


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