「あいちゃんの散歩道」

第17回 ハワイ隣島のガイドブック


 大きな本屋に行くとハワイのガイドブックというのは実に多くの種類があることがわかる。しかし、前回(第16回)に書いたように、それらのほとんどは良くも悪くも有名な、かのワイキキや日本人観光客の買い出しツアーのメッカとなっているアラモアナショッピングセンターが中心となって書かれているオアフ島についてのものだ。ガイドブックのタイトルが単に「ハワイ」となっているものは間違い無くこのタイプだ。私がよく行くところ、そしてこの夏に行くところはいわゆる隣島(ネイバーアイランド、あるいは単にネイバー)と呼ばれるハワイ諸島の中で行政・商業の中心となっているオアフ以外の島だ。ちなみに、聞くところでは米国人たちもオアフに行くときは「ハワイに行く」と言い、マウイに行くときはハワイではなくわざわざ「マウイに行く」というらしい。

 私がこの夏に家族で行く予定なのはビッグアイランドであり、秋に一人で遊びに行く予定なのはマウイである。前回も書いたが、こうしたネイバーの情報は日本では極めて少なくかつかなり偏っている。「ハワイ」と銘うったガイドブックで紹介されている本の中のビッグアイランドやマウイは極めて限られ偏ったものばかりだ。どのガイドブックでも必ずカバーしているのは、高級リゾートホテルやブランドショップのある、ビッグアイランドのKOHALAやWAIKOLOA、マウイ島のKAANAPALIやWAILEA、あとはブランドショップなどはないけれど、メジャーなところでハワイ島のVOLCANO NATIONAL PARK、HILO、KAILUA-KONAであり、マウイ島のLAHAINAやHALEAKALA NATIONAL PARKであろうか。しかしどれをみても各地域に一ページ、よくて二ページくらいを割いているだけで、一般のレストランなどについては、本当に限られた店しか出ていない。

 オアフのおまけに日帰り観光とか一泊くらいを隣島で過ごそうという人ならともかく、ハワイ滞在中の一週間なり十日全部を隣島で過ごす私には、秋らかに情報不足であることを何度かのマウイ・ビッグアイランド旅行で感じた。だから私は今回からは、米国から通信販売(www.amazon.com)で購入したビッグアイランドやマウイのガイブックを参照することにした。もちろん初回のハワイからそんなことが出来たわけではなく、最初のうちは大多数の日本人ツアー客同様、これらの偏った情報からなるガイドブックだけを頼りにしていた。現地入りしてから情報を集めることも可能だが、短い滞在時間を情報収集に費やすのはもったいない。やはり可能な限りの事前情報収集はしておきたいと感じたのである。

 日本製の日本語ガイドブックとアメリカ製の英語ガイドブックの最大の相違点は何だろうか。書いてある言語が違うという当たり前の事実はさておき、まず気づくのは日本のガイドブックにはカラフルなものが多いことだ。もちろんアメリカのそれにもフルカラーで写真集かと思うようなものもあるが、多くは黒一色の単色で、せいぜいあっても限られた2色刷りとか3色刷りだし、紙質にしても日本のほうがはるかに良い。中身についていえば、最初に気づくのは日本のガイドブックには比較的地図が多いことだ。それも大抵はカラー地図で、黒一色や2色刷りの地図はあまり見かけない。

 また、レストランやショップの紹介ページでは、説明(その説明の出所と信憑性は日米を問わず個人的には疑問をもちあまりあてにすべきではないものだ、と思っている)と住所、電話番号、営業時間、レストランであれば時には価格帯などが書いてあるのは日米に共通だ。違いは日本のガイドブックでは、ほとんどの場合地図ではどこにあたるかというのが書いてあることだ。たとえば、「P.120 Map12 C3」といった具合で、それにしたがって120ページを開いてMap12をみて、C3の場所を探すとその店が載っているという具合だ。しかしアメリカ製のガイドブックでは原則としてそういう記述が見つからなくて、店のロケーションを知る手段は電話番号、店名、ストリートアドレスだ。

 これは、単に習慣の違い、システムの違いといってしまえばそれまでだ。日本の場合住所は町名、字名、番地などからなっており、地元でよく知った人でないかぎり、これらの住所から場所を探し出すのは地図無しには不可能である。一方アメリカの住所は原則として道路をもとにつけられている。例えば、「900 Front St.,Lahaina, HI. USA」といった具合で、たったこれだけの住所表記で地球上の特定の地点をさすわけで、同じように表記すれば「1-2-3, Higashi-Ikebukurom Toshima-ku Tokyo JAPAN」(住所は架空)とは随分長さが違ったりする。とにかく米国のアドレスは最初の番地と通り名をあわせたストリートアドレスで、場所が特定できてしまう。映画なんかでも、警察官に住所を聞かれて「パーキンス通りの1867」などと答えるシーンが山ほどあるが、実際これでわかってしまうのである。さらに日本の場合、番地は通りにそって順番になっていることは少なくて、渦巻き状についていたり、どういう順序でついているのか皆目見当がつかなくて、現地で5番地を探すと今いるのは4番地で隣は6番地、いったい5番地はどこにあるのだ?なんてことも珍しくは無いのが現実の日本のアドレス表記だ。だから詳細な都市地図が多数でて、それらが売れているのかもしれない。

 ストリートアドレスのシステムに慣れているアメリカ人の場合、旅先では通り名がわかる地図さえあればなんとかなるのであろうが、日本人からみるとこれはやはり慣れていないからよくわからない。通り名を地図で探すのはさほど難しいことではないが、その通り沿いの番地を探すのは簡単ではない。ごく短い通りならともかく、普通は長い通りで番地も3桁とか4桁あったりする。狭い路地を歩きながら探すならそれでもよいが、少々広い通りを車にのって探すのは簡単ではないのではないか。それに通りのどちらの端が若い番地なのかもわからないし、この通り沿いに何番地まであるのかがわからないと、例えば124番地が通りのどちらよりにあるのかすら皆目見当がつかないから不便である。しかし、知人のカナダ人に言わせるとそれだけで十分だとのことなのである。このあたりはもう少し追求して見る価値がありそうだ。

 さて、ストリートアドレスであるが、最近は住所を入力すると場所をしめしてくれるようなWebサイトが "Yahoo Maps" (http://maps.yahoo.com/)をはじめ他にもあるから、事前にストリートアドレスがわかっていれば、これは結構なんとかなるようになってきた。そうなると、なおさらいろいろな店や場所が数多く載っているガイドブックが欲しくなってくるというものだ。

 ビッグアイランドというのは太平洋では最大の面積をもつ島であり、その面積はハワイ諸島のビッグアイランド以外の島をすべて足したよりも広く、コネチカット州とほぼ同じ大きさの島である。さらに世界に存在する22の気候のうち21の気候がこの島に存在するらしく、事実、島を一周するとその風景や自然の多様さに目を見張るばかりとなる。いわゆる南の楽園の島でこんなにも豊かな自然・多様な気候をもっているところは、他のリゾートアイランドでは見かけないのではないだろうか。最近日本人観光客に人気があるらしい東南アジアのリゾートアイランドでは、ほとんど考えられないことではないかと想像する。

 こうした多様な気候・自然を持つ島に行って、人工的に作り上げられたリゾートエリアだけに居て過ごすのはもったいない。もったいないというと語弊があるが、単にリゾートでのんびりするだけなら、もっと近くて安いところが他にも多くあるからそこへ行けばよい。私は、ビッグアイランドの良さはその多様な自然を肌で感じることにあると思うし、活火山であるキラウェアは今も溶岩を流しつづけハワイ島の面積は日に日に大きくなっていることや、溶岩によって一つの町がいとも簡単に消えてしまったことなど、大自然の力を肌に感じることにあると考えている。もちろんそれらを感じた上で、リゾート地でのんびり過ごすのは結構なことでそれに異論は無いが、ビッグアイランドへ行ったらまずはその自然の多様さと偉大さを肌で感じるような旅をしたいと思うし、それがビッグアイランドの姿なのだから、本来の姿を知っていて損はしないであろう。

 ともあれ、島とはいえ決して狭くは無く、四国の半分ほどの広さがあるから、ぼけーっとしていては、多様な自然を味わう以前に、ホテルやコンドミニアムのプールだけで日程が終わってしまう。広い島を味わうにはやはりそれなりの事前調査とプランニングは欠かせない。

 私の場合今年で連続2度目のビッグアイランドになるから、様子もある程度わかっているからプランはたてやすい。前回はすべてKailua-Konaを起点に行動したため、Hiloの街をゆっくり楽しむこともできなかったし、Kilauea Volcano National Parkでも、帰り自国が気になってそうそうに引き上げてしまい、Volcano Wineを調達することができなかった。そういうこともあって今回の予定では最初はHiloに入り、そこで2泊して、その後車でKailua-Konaに向かいそこで5泊することにした。そしておもなポイントの訪問スケジュールを日程にあてはめて、また皆の疲れを考慮して遠出と身近なビーチを交互に組み合わせたり、何もプランを入れない予備日程を最後に作ったりした。

 Hiloは普通のホテルだから昼食や夕食は外で取る必要があるが、Kailua-Konaのほうはコンドミニアムなのでそのときの成り行きで、備え付けのフルキッチンを使って作ったり食べに出ることも可能だが、これはその時の皆の気分や体調で考えれば良く、夕食に行きたい店の候補を考えておくだけでよい。問題は長距離移動中の昼食である。問題というほど大した事はなくて簡単に済ませようとすれば、途中どこかの店でプレートランチでも調達すればそれで済んでしまうが、そればかりでは悲しい。といって日本のガイドブックをみても、Kailua-KonaやHilo以外の店はほとんどといってよいほど載っていない。そこで活躍するのが先に書いた米国から買った英語のガイドブック達だ。

 これらのガイドブックの多くは、前述の通り見かけは単色刷りとかせいぜい2〜3色刷りで紙質も日本のより優れているとは言えないものだ。また地図と解説との関連付けについては、ほとんど無いいっても良い。しかし、解説の豊富さでは日本のそれとは比較にならない。日本のガイドブックでは触れていない地域についてもどれも当たり前に触れているのは大きな差である。少ない情報からは取捨選択をしようがないが、情報が多いとそれだけ内容を吟味し取捨選択する余地が出てくるというものだ。

 ページ数に大差無くても情報量に雲泥の差があるのはどこが原因なのかと、両者をしげしげと眺めて見た。まず、日本のガイドブックには文字よりも写真や絵が多いことだ。表現力豊かな日本語という優れた言葉に恵まれている割には、文字を読むことを好まない現代人の嗜好が反映されているのか、はたまた写真で旅心をそそろうというのか、とにかくどのガイドブックを取り上げても、平均的には日本のガイドブックのほうが写真が多い。

 また、米国製のガイドブックの場合は、同じ国内の観光地ということもあるが、日本の場合はハワイは外国だから、渡航手続きやその注意、いろいろなシステムの違いなどについて手取り足取り記載されており、これが結構頁数を食っているようだ。慣れるとこんなものは全く無用の長物であり邪魔なだけだから、その分頁を減らして価格を下げるか、他の現地情報を盛り込んで欲しいと思うが、ガイドブックの読者はむしろツアーを使って始めての海外旅行という人も多いだろうから、やむをえないところでは有る。実際、出国の書類の作成(代書)と称して、出国審査の際に出す横長の紙に代わりに書き込むのに数千円とかを支払う人もいるらしいから、ガイドブックに渡航に関する冗長な記述があるのもやむをえまい。どうもツアーといい、ガイドブックといい、手取り足取りでないと嫌がる人が多いのかもしれない。もっと自立心を持てば良さそうなものなのに、面倒なことはすべて他力本願的な傾向が否めない。

 何の話しだか訳がわからなくなってきたのし、愚痴ばかりが続きそうなのでこのあたりで矛を納めたほうが良さそうな雰囲気だ。


Copyright (C) 2000, あいちゃん, All rights reserved.
筆者に無断でこのホームページの全部もしくは一部を転載、複写、再配布することを堅く禁止します。