インターネットとは本来大変広い意味をもった言葉だが、時がたち技術が広く一般に知れ渡り浸透するにつれ、インターネットに対してイントラネットとかいう不思議な言葉も出てきたし、今では一般の人が考えるインターネットとは、WWWサイトのブラウジング(いわゆるネットサーフィン)や電子メールの読み書きといった恐ろしく狭い範囲のことをさすようになってしまった。私などは昔からの人間だから、インターネットというと広義のそれしか思い浮かばないが、これでは一般の方と話が合わない。多勢に無勢で意地を張ってもつまらないから、最近は話す相手によって広義のインターネットと狭義のインターネットを使い分けるようにしている。
こうした用語の意味の変化はどの分野でも時の流れとともに出てくるものだが、元の意味から大きく変えてしまう、あるいは曲解してしまう、意味するところを狭く捕らえてしまうような変化がおこるきっかけはある程度限られている。すなわち、一つは元来外国語だったものが、日本語にとりいれられて外来語となった時点で意味するところもかわってしまうもので、もう一つは元々専門用語で専門家しか使わなかった用語が、一般に普及する時点で意味するところも変化してしまったものだ。
コンピュータ関係では前者の例としてはちょっと思い浮かばないのだが一般の用語には数多くある。後者の例はたとえばさきのインターネットもそうだが、ハッカーなんてのもある。ハッカーとは今ではコンピュータシステムへの不法侵入者をさすのが洋の東西とわずあたりまえになってしまったが、元々はそうした悪いやつのことをいうのではなく、コンピュータのソフトやハードを解析したりするマニアのことをそう呼んだのである。それがいつの間にやら米国においてすらコンピュータシステムやネットワークに不正侵入するやつのことをさすようになってしまい、マニアのことを指す言葉がなくなってしまった。本来はそういう悪いやつのことはクラッカーといい、不正侵入行為のことをクラッキングと呼んだのだが、もはやほとんど死語になってしまったようだ。
とにかく、いまや「インターネット」といえばWebやWeb関連システム、Web関連アプリケーションのことをさすようになってしまった。今の大学四年生、来春卒業就職の学生たちの中でも特にコンピュータ関係の職業につくことを願う者はほとんど100%に近い割合で、自宅にパソコンを持っていてインターネットにアクセスでき、学校で使えるものも入れると100%がインターネットにアクセスできる(私が実際にコンピュータ関係の仕事を希望する大学四年生数十人と話をした結果知ったことだ)。これは皆が皆インターネットが好きというわけではなく、企業によっては昔のように印刷物としての会社案内をつくらなくなっているところも増え、すべての採用活動情報は企業のWebページでのみ公開するという傾向が出てきたからだろう。私の勤務先もその一つで広く学生に配布するための印刷物は一切作っておらず、Webページでのみ採用活動を知ることができるようになった。
ちなみにこのWebページという言葉だが、日本でよく使われるのはホームページだろうと思うが、最近ではHPという妙な略語まで氾濫する始末だ。本来ホームページとはWebサイトにアクセスしたときに最初に開くページのことを指し、Webサイト全体を指すのは、WebサイトとかWebページとかいう言い方をする。英語の場合も同じで "web page" は通じても、サイト全体やこのしくみをとらまえて "home page" とは呼ばないし、つかってみるとわかるが普通はその意味としては通じないであろう。私はこだわりをもって仕事でも趣味でも必ずWebページもしくはWebサイトと呼んでいる。最近では"Web master"とよばれるWeb管理者ですら、web siteとかweb pageとか呼ばずに何もかもひっくるめてホームページとか、ひどいのになるとHPとか省略してしまっている。HPなどいうのは私が思いつくのは「HEWLETT PACKARD社」か「馬力」といったことばで、間違ってもホームページは出てこないから毎回悩んでしまう。
言葉の適・不適の話はこのくらいにして、Webサイトへのアクセス、つまりインターネットを簡単に誰もが使えるようになってくると、今度は自分でもそういうWebサイトを作ってみたくなるのが人情というものである。個人が自分でWebサイトを持つというのは、一昔前まではそれはそれは大変なことであった。ところが、今ではインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)とダイヤルアップ契約などをすると、ほぼ自動的に数MB〜10MB程度のWebページの領域の割り当てを受けることができる。個人が広く世間に向けて情報を発信するというのは、昔はほとんど限りなく不可能に近いことだったのが、ここ数年の急速なインターネットの普及によって、クレジットカードとパソコンさえあれば誰でもWebページを持ち情報発信が出来るようになった。
こうして作られた個人のWebサイトを見ていると、実にさまざまな分野にわたってさまざまな内容のものがあり、その数に至ってはほとんど無限とも言える。内容もほとんど何も無いものもあれば、これが個人の仕事だろうかと疑いたくなるようなすばらしいデザイン・内容のものまで様々である。企業のサイトだとそれなりに人とお金をかけて、目的をもって作ってゆくからある程度の範囲の水準に収まるものだが、個人の場合は企業サイトなどよりはるかにすばらしいものから、単にトップページに絵があるだけで他には何も無いものまで実に多種多様、玉石混合だ。
かくいう私だってWebサイトを持っているわけで、一つはこの雑文「あいちゃんの散歩道」を掲載しているメインのWebサイト「あいちゃんの部屋」であり、もう一つはハワイ方面への旅行記や実用情報を中心にしたサブのWebサイト「旅路の部屋」である。これが玉{ぎょく}なのか石{せき}なのかは読者の皆様が決めることであるが、多少なりとも自信があるから公開していることに間違いは無い。
さて、私が自分のWebサイトを作るにあたって留意していることがある。それは他人はもとより自分のプライバシーへの配慮だ。Webサイトに自分の本名はもとより、自分の写真や家族の写真までも掲載している人がいるが、私に言わせれば信じられないくらい無謀である。
残念ながら、世の中は成人君子ばかりではなく、悪い心をもって悪い行いに走る人が後を絶たない。今は知らないが、昔は(どこから調べあげるのかわからないが)宝くじの一等当選者には嫌がらせの電話などがかかってきたというし、最近ではストーカーなるものまであらわれ、特定個人に徹底的につきまといいやがらせをする人まで出てくる始末だ。とにかく今の世の中では不必要に名前が出てしまうと、最初から名前を売る目的で無い限りはメリットはほとんどなくて、ディメリットばかりが出てくる。
私は自分のWebサイトでは自分のプライベートな情報はほとんど出していない。Webサイトのどこをみても、本名は出てこないでニックネームの「あいちゃん」しか載っていない。当然本人や家族の写真は皆無だし、たまたま写真に載ってしまった赤の他人も、顔にはモザイクをかけるなどの配慮をしている。いかなる事情があろうとも、自分や家族の写真や名前は絶対に乗せないし、Webサイトなどでの公開を前提とした写真撮影には絶対に加わらないことにしているし、万一不幸にして私の同意無く撮影されてしまった場合は、写真の公開を遠慮していただくか(本人が駄目だといっているのだから、それを無視して公開するのは明らかに肖像権の侵害であり限りなく犯罪に近い行為だ)、顔だけではなく衣服などで特定できる要素も排除するために体と顔全体にモザイクなどをかけて判別できないようにしてもらうことにしている。
実社会にストーカーがいるように、ネットワーク社会にもネットストーカーがいる。別段の理由はないとおもわれるのに、ネットワーク上のコミュニティ(Mailing List、WebのBBSなど)を追いかけては嫌がらせ書き込みをしたり、嫌がらせのメールを本人に出したりするものである。この手の被害者になりやすいのは、今のところ女性のほうが多いようだ。
私のWebサイトの「あいちゃんの部屋」というタイトルからは、若い女性が運営するWebサイトを連想するらしく、プロフィールのところで男性であることを知ってか、「なんという紛らわしい名前をつけるのか、とんでもない話だ」というメールを何度かもらったことがある。どういう下心があったのかわからないが、Web内の情報が目当てなら、運営者が女性であろうが男性であろうが基本的には関係無い話だ。掲載内容が男性にかかわる話とか女性にかかわる話のどちらであるかが重要だというのは有り得ることだが、運営者そのものには関係無い話だ。それをわざわざ女みたいだと怒るのはどうかしている。何か下心があったか、ストーキングしてやろうとでも思ったに違いない。
一般の社会、とりわけ日本以外の外国の一般社会では、日本より治安が低いところが多く、日本人はつい日本国内と同じつもりで油断をしてしまい、スリから殺人にいたるまで様々な被害に合うことが少なくないらしい。身の安全を守るという意味ではネット社会も実社会と同じであり、それどころか実態も見えないだけに、実社会より始末が悪い。特に狙われやすいのが女性であり、女性が多く集まるサイトや女性の個人Webサイトを狙っては嫌がらせメールを送りつけたり、ネット上でつきまとったり、さらにそれらの中に個人を特定できるような情報があると、現実の社会でもつきまとわれたり、犯罪にまきこまれたりすることだってありうる。
そういう意味では、個人のWebサイトでは非常に無防備なところが多いのには驚く。実名に写真、時には住所あらましなどまで掲載されていたりして、プロの探偵でなくとも比較的容易に個人の住まいまで調べることが可能な人が少なくない。第三者が自分のプライバシーをあきらかにすることには神経質なくせに、自分で自分のプライバシーをばらまくことには無頓着ということなのだろうか。名前と顔を売るのが商売である人ならともかく、そうでない人はWebサイトなどに、自分や家族の写真、名前、住所などは掲載すべきではないだろう。とくに若い女性の方は、いかにも女性らしいWebサイトにしたり、女性らしいハンドル名(ニックネーム)にしたりしないほうが無難だ。BBS(掲示板)に書きこむ際にも、やたらと自分のメールアドレスを記載すべきではない。仮に記載するにしてもそうしたところに載せるのは、すぐに捨てられるアドレス、たとえばフリー(無料)のWebメールのアドレスなどにしておくべきだ。
実社会のなかでも自分の身は自分で守るように、ネットワーク社会においても自分の身は自分で守るべきだ。実社会には法律や警察があるが、ネットワーク社会には今のところ法律整備も無いも同然で、したがって法違反を取り締まる警察もない。実社会以上に自分の身は自分で守るしかないのである。
もうひとつ気になるのは権利、特に著作権の尊重の問題だ。MP3のアングラサイトが問題になって久しいが、他人の著作物を無断で掲載しているサイトは実に多い。ある個人サイトでは航空会社からもらった機体の写真(絵はがき)がそのままスキャンされて掲載されてたり、旅先で購入した風景の壁紙CDの内容(おそらくはその一部であろう)が掲載されていたりする。これらは立派な著作物であり、こうした場所での掲載・公開に許可不要と歌っていない限りは著作権を侵害していることになる。あるいは許可を得て転載しているならその旨もしるすべきであろう。その方は写真好きの方のようだったが、写真好きであれば、なおさら自分のとった写真が無断で掲載・公開されることの腹立たしさを理解できると思うのだが、どうもそうした配慮はないらしい。
私のWebサイトに掲載されている文書はすべて私自身が書いたものだし、部分的に引用しているのもはその旨引用として明記している(これは著作権法の定めるところだ)。グラフィックスは全部自分で作ったか、著作権フリーの素材のものしかつかっていないし、写真もすべて自分で撮ったものか、知人が撮ったものを知人の許可を得て掲載している(掲載コメントには許可を得ている旨もちゃんと書いている)。ガイドブックの紹介では本来なら表紙をスキャンして掲載すればなお効果的であるのはわかっているが、無断で表紙をスキャンして転載するのはやはり著作権を侵害することになろう。出版社に交渉すればおそらくは許可してもらえると思うが、そのような暇もないので表紙無しで権利を侵害しないように配慮している。自分自身がこうした配慮をしているから、さきのように配慮の無い個人Webサイトやその運営者である個人には非常に腹が立つ。
仕組みや手続きの面では、個人が簡単に世界に向けて情報発信できるようになり、使い方によっては大メーカーを相手に戦うこともできる威力をもっている。しかし、こうした便利な道具を使うには、自身の安全のために配慮すべきことがあり、他人の権利を侵害しないための配慮もまた必要であることを忘れてはならない。
Copyright (C) 2000, あいちゃん, All rights
reserved.
筆者に無断でこのホームページの全部もしくは一部を転載、複写、再配布することを堅く禁止します。