「あいちゃんの散歩道」

第24回 モバイルギア2に至る道


■ HP100LX/200LX以降

 私はこれまで少なからぬPDA(Personal Digital Assistant)をとっかえひっかえ使ってきたが、HP100LX/200LXを越えるPDAが存在しなかった。いや、HP100LX/200LXも単独のPDAとしてはかなり秀逸ではあったが、デスクトップPCのPIM(Personal Information Manager)ソフトウェアとのデータのワンタッチかつ完全な同期・連携という意味では、まったくの役立たずで屑そのものと言っても良かった。

 実際問題、会社のデスクには自分専用のデスクトックトップPCがいつでも使えるような環境において、スケジュールとかアドレス帳の参照・修正を行うのに、何を好んでちっぽけなHP100LX/200LXを使うことを強いられなければなからないのか、これは、HP100LX/200LXを使っている時代、大いに疑問を感じたところだ。だれが、どう考えても、在席時は、ちっぽけなこの機械よりも、画面もキーボードも大きくて速度も格段に速いデスクトップPCを使う方が遙かに効率的であり、そうして登録・変更したデータが直ちにPDAに反映され、一方オフラインというか、PDA側で登録・変更したデータがデスクトップPCと接続した時点で、デスクトップPC側に直ちに反映されるほうが使い勝手が抜群に良い。

 こういう使い方をしたくなったとき、私の中でHP100LX/200LXは完全にその役割を終えて、過去の遺物になってしまった。だが、それからが苦労の始まりだったといってもよい。HP100LX/200LXのコンパクトさと軽快さ、完璧で矛盾のないデスクトップPIMとの連携、連携できるデスクトップPIMに求める機能、屋内はもとより外出時にも文章入力をしたいので使いやすいキーボードなどが条件となって、新たなPDA探しが始まった。

■ さまよえるPDA

 それ以来今に至るまでいろいろなものに手を出した(散財したといってもよい)。今でも世間様では人気のあるPalmPC (IBM Workpad C3)、Palmsize PC (CASIO E-55)、Handheld PC (CASIO A-60, HP Jonrnada680)などだ。

 まず、PalmPCはいくつかの理由ですぐに手放した。Palmのメリットは多くて、動作は非常に軽快、メーカー製アプリは少ないが小さくて使い勝手の良いオンラインソフトが多数存在するし、シャツの胸ポケットに入るサイズと苦にならない重量は秀逸だ。

 だが、しかし、裏を返せばそれだけのメリットしかない。私が求める機能に対して、Microsoft Outlookとは、サードパーティソフトを使っても完全同期はできない(項目不一致)し完全同期できるPalmDesktopは恐ろしく低機能、クレードルにさしていても同期ボタンをおさないと同期しない(これが往々にして押し忘れて困ったことは数知れず)、日本語フォントが恐ろしく見づらい、事実上メールやエッセイなどの長文入力は不可能、ときにメモリが飛んでしまう(バックアップバッテリーがないので何らかの理由でバッテリーローに気づかったり、バッテリー交換に手間取ったりすると非常に危険で、フラッシュメモリがないから出先でメモリが飛んだらPCがないから復活不可能なので、出張などでは全く信頼がおけないというおよそ玩具の域を脱しない代物だ。まあ、これらのディメリットは一般的な意見ではなく、あくまで私のニーズに基づいたものであるが、私と同じ方向を求める人には同じディメリットとなることは自信を持って断言できる。

 もうひとつの手のひらものがPalmsize PCだ。こちらはMicrosoft WindowsCEを搭載した物で、デスクトップのMicrosoft Outlookとの相性は抜群で言うことなし。日本語フォントの見やすさも、Palmの玩具のような日本語フォントに比べたら比較にすらならない。コンパクトフラッシュも装着できるから、コンパクトフラッシュにバックアップをとっておけば最悪メモリがとんでも、出先でなんとか最低限の復旧は可能だ。バックアップバッテリーがあるから、メインの電池がローになったところであわてる必要はない。だが、いかんせんキーボードがないという点ではPalmと同じでメールを読むにはいいが、書いたりすることはほぼ不可能だ。またPalmに比べたらその動作はウサギとカメであまりにも鈍足で投げつけたくなる。電池の消耗もPalmとは比較にならないくらい早くて、すぐになくなってしまう。こういうわけでCASIOのE-55も今やお蔵入りだ。

 残ったのはHandheld PCだ。大きさはHP100LX/200LXよりちょっと大きい程度のものから、ノートPCサイズまでさまざまだ。私の用途だとノートPCと同様の価格、同様のサイズ、同様の重さのものは全く無意味なのでこの場合は問題外である。あくまでそこそこ楽に持ち歩けないといけない。WindowsCEベースのHandheld PCならば、PIMの同期はMicrosoft Outlookと完璧な相性だし、コンパクトフラッシュを装着できてバックアップ/リカバリソフトも(機種依存だが)存在するから万一メモリが飛んでもバックアップの状態には復旧可能で、ただの箱になってしまうPalmとは訳が違う。何らかのバックアップバッテリーがあるのはこれはもう当たり前。さらにキーボードがあるから、メールを書いたり文章を書いたりするにもキーボードそのものの使い勝手はあるにせよ、PalmやPalmsizePC現実的に可能である。

■ WindowsCE遍歴

 こうした理由で、私の目がWindowsCEに向いたのは二年前の1998年10月だ。実はそれまで東芝のLibrettoを使っていたのだが、正直なところを言うと、これは実に中途半端な機械であった。PDA代わりに使うには、起動速度はもとよりサスペンドやハイバーネーションからの寝起きに時間がかかりすぎるし、バッテリーが持たなさすぎる。それに他のPCより圧倒的に軽いとはいえ、毎日通勤で混雑した電車に乗って持ち歩くには十分重い。その上PCとしては画面も小さくて使いやすいとは言い難い。ならば、いっそWindowsCEのようにできることを限定して割り切ったほうがすっきりするというものだ。PCでも仕事でも中途半端になんでも「できそう」なのは、結局「なにもできない」ということだというのが持論だ。とにかく、こうして、最初のWindowsCEに手を出したが、それはCASIOのCASSIOPEIA A-60だ。

■ CASSIOPEIA A-60

 1998年10月 CASIO CASSIOPEIA A-60と40MB CFを同じ区内の"PC DEPT"にて購入した。合わせて約9万円也。初めてのWinodwsCEということで、物珍しさもあっていろいろさわりまくった。当初アルカリ乾電池で使っていたのだが、持ち時間はメーカーのカタログ値の半分にも満たないという電池食いで、あまりにもひどいので途中でオプションのリチウムイオン電池を購入した。

 これでかなり電池問題は解消したけれど、キーボードが結構お粗末なことに日増しに不満が募るばかりだった。所詮電卓の延長程度にしか考えていないのではないか。キーボードは私にとっては非常に重要な要素であり、はっきりいってA-60のこの玩具よりひどい超劣悪・劇悪キーボードにほとほと愛想がつきるまでにさしたる時間はかからなかった。そしてフリーウェアやシェアウェアのたぐいでも、画面がカラーであるときに見やすいように作られたものが増えてきて、この面でも白黒のA-60が嫌になってきた。本来白黒のメリットはバックライトが不要だからバッテリーの持ち時間が長いはずなのに、こいつときたら全然長くないのである。唯一のメリットは晴天の屋外でも見えることだけだ。

■ Jornada 680

 それでも10ヶ月ほどA-60をつかっていたが、ついに堪忍袋の緒が切れて、A-60をかなぐり捨てて我が懐かしきHPに逆戻り。1999年8月 HEWLETT PACKARD Jornada680を池袋ビックカメラにて購入。約11万円也。CFはA-60から奪い取った40MBをそのまま使用する。CPUもSH3のままなのでソフトウェアもそのまま使えたのはありがたい。

 これはA-60の地獄の苦しみのウルトラスーパー超劣悪キーボードにウルトラスーパー超劣悪電池駆動時間とはことなり、最初からリチウムイオンであり、朝充電して行けば一日は余裕で使える。付属のクレードルと追加で買ったもう一つのACアダプタは会社のデスクに設置し、会社に着いたらバッグからJornada680を出して、クレードルにガチャポンするだけで、充電され自動的に同期もされる。接続している間自動的に同期されるのはPalmにはないメリットで、Palmを使っていた経験からいうと、結構SYNCボタンを押し忘れて帰宅してしまい、デスクトップに入れた予定がPalmに反映されていないことが多くあって閉口したのである。

 Jornada680のキーボードはLibrettoサイズに近いため、特段の不満もなくすぐになれてしまった。キータッチなどもかなりよいほうで、電卓一つをとってもキーには気を使っているHPの精神がちゃんと生きているのがうれしい。

 だが、しかし、このキーボードが一度壊れて、あるキーを押すとカチカチと音をたてるようになってしまい、反応も鈍くなったので修理に出したが、このときは二週間ほどで戻ってきた。そして2000年9月、購入時から不安に思っていたPCカードスロット付近のギミック部分が破損。正確にはPCカードスロットではなく、CFカードスロット付近つけられているバックアップバッテリーが認識しなくなったのである。10月の旅行がひかえていることもあって、いそいで修理に出すがちょうど保証が切れたところで、修理上限を20,000円に設定する。だが、修理所用期間はパーツ不足のため最低二ヶ月とのことで開いた口がふさがらない。

 この言葉でJornada680が一気にいやになる。HPはいいものをつくるのだが、こうした小物については修理体制がおそらく同業他社の中では最悪最悪なことだ。LXのときにもこうしたことはあったようだが、未だに改善されていない。WorkstationやServerは一級の修理体制なのに、小物は日本の家電製品にすら勝てないお粗末な修理体制だ。HPの小物を買うときは、修理をあてにしないか、壊れたら捨てる覚悟は絶対に必要であるとあらためて実感した次第である。

■ Mobile Gear II MC/R530

 10月22日からの「おじさんマウイ+オアフ一人旅PART2」にはJornada680の修理は間に合いそうもないので、別のマシンの購入を決意。後継機のJornada690も考えたが、やはり故障したら終わりなウルトラスーパー超劇悪お粗末修理体制はかわりないし、壊れやすいギミックもそのまんまであるし、何より価格的にも高すぎるのでJornada690はやはり問題外で検討の余地は皆無。使われているCPUの早さ、電池の持ち時間、キーボードの打ちやすさ、評判の良さを総合的に考慮して、2000年10月 NEC Mobile Gear II MC/R530を購入した。

 NEC系のネット直販ショップやT-ZONE新宿店1F店頭で74,800円の価格で出ていたので、通販はともかくとして、T-ZONE新宿店の店頭価格をビックパソコン館本店三階のモバイル売場の店員に告げて、「他店より一円でも高かったら...」という看板を確かめるべく、同じ値段に落ちるかどうか訪ねた。するとその店員氏は「さあ、私の判断ではちょっと...」と言うだけで、ぼーっとその場につったっているウルトラスーパー超馬鹿者。「自分に判断権限が無いなら、さっさと権限のある人を呼んでくれ!」というと「そうですね、少々お待ち下さい」と売場の彼方へ消えるウルトラスーパー超間抜けさ。これでは先が思いやれると思ったが、その予感は的中。結論からいうと、還元分ポイント込みのキャッシュ支払いなら同じ値段(同じ値段と言うが現金支払い額は当然一割ほどビックパソコン館のほうが高い)になるという。それではポイントなんかいらないから、というと、それはできませんという。それでは現金支払い額ではT-ZONE新宿店の方が安いんだね?と周囲にの客にもよく聞こえるように嫌みったらしくいうと、「その通りですと」開き直る始末。結局のところ、「他店より一円でも高ければ...」なんてのはここに限らずごくごく限られた条件だけの話であると、わかりきったことを確認できただけの話。そして121ware.comというNEC系ネット直販で購入した。価格もT-ZONE新宿店と同じだし、こちらはソフトケースがおまけについてくるし、ユーザ登録も自動的に行われるので手間いらずだ。

■ ようやくMobile Gear II MC/R530の話

 さて、ようやくMobile Gear II MC/R530の話だ。結論からいうと非常に満足している。重さ・大きさはハーフVGA搭載のHandheld PCとしては日立のペルソナといい勝負だが、あちらのはなぜか未だにCEのバージョンがちょっと古く、速度的にもかなり見劣りしている。どうも日立はCEには本気ではないと見える。その点Mobile Gearシリーズは、CE以前のモバイルギアシリーズからプロの執筆家や記者に支持層が厚い。その理由はこの大きさと引き替えに得られた優れたキーボードと携帯性である。本体の横幅はA5ファイルサイズのLet's note mini/CF-M32より大きいが、それだけのことはある。キーボードサイズは少なくともB5ファイルサイズのノートパソコンと同じくらいのピッチを確保しているし、キータッチも軽すぎず堅すぎずでちょうど良い。プロの記者に支持が厚い理由がよく理解できる。

 動きも軽快で、一度これになれるとJornada680が結構亀足であったことが体で理解できる。タスクバーのスタートメニュー一つとっても、何というか体に感じる速度が違うのである。全体的にみるとパフォーマンスという点では結構な差を感じる。だが、何よりうれしいのは、この入力しやすいキーボードである。趣味とはいえこんな風な長い文章をバシバシ書く人間には大変ありがたい。

 内蔵モデムでの通信速度も同じ回線事情でもJornadaとはかなり異なり、こちらのほうjが実質速度はかなり高速である(というよりJornadaが遅いのである)。私がインターネットメールをWindowsCEで扱うときは、WindowsCE内蔵のタコな受信トレイなんか使わない。そもそもOfficeでもExchangeServerは業務用には使っていないから、受信トレイを同期させる必要はさらさらないし、メールに限って言えばCE側を削除したからPC側も自動的に削除されるなんてのは困るのである。また、機能は豊富かもしれないが設定がおそろしく面倒なQMAILなども論外の論外。EudoraPro for CEに至っては、テキストペインでのインライン変換入力が耐え難いほどの遅さであり、こんなものが有償でそれも商品として販売されているというのは、メーカーの良識を疑うものだ。メールを読むだけならともかく書くときに使うツールではない。そうすると残るのはPocket Wzの機能の一つであるPWZ MAILである。

 Wzシリーズは非常に多機能の割に軽快に動き、メーカー側のVillage Centerもユーザの意見取り込みには積極的で、どちらかといえば商品というよりシェアウェアというアプローチに近い。このPWZ MAILだが、たかがテキストエディタの付録機能などとあなどってはいけない。機能的には前出のどれにも引けを取らないどころか、優れているし、速度に至ってもWZ譲りの軽快さは無くしていない。また、他にはないメリットであるが、メールボックスのローカルファイルはデスクトップ版のWZ4.0付属のWZ MAILと完全互換があるのも見逃せない。つまりCF容量さえあえば、出張前に必要なメールボックスをごっそりPCからMobile Gear IIにコピーしておいて、続きをモバイルで取得したり参照したりすることも当たり前にできてしまう。その上メールボックスはOutlook系のような特殊なフォーマットではなくて、単なるテキストファイルだからどうにでも加工できるのもミソである。Pocket WZは、WindowsCE Handheld PCを買ったら、不可欠なツールであり、標準的にROM搭載してもいいくらいだと思う。

 PWZ(WZ)はインターネットメールだけにとどまらず、@NIFTYのフォーラムの会議室も扱えて、会議室巡回や発言などもできてしまうから、私が普通に使うコミュニティーの出入りはほとんどこれで間に合う。

 唯一間に合わないとしたら、Web上のBBSであろう。これはWindowsCE2.11内蔵のブラウザがIE3相当とバージョンが低いため、かなりのBBSでは表示はできても投稿はできないことが多いし、下手すれば表示すらできない。何よりハーフVGAでは、最近の大きな画面を前提に作られたBBSを扱うのは無理がある。またBBSの巡回ソフトなどもいくつかあるようだが、BBSはCGIのカスタマイズをしたものも含めると星の数ほどのバリエーションがあり、簡単に追従できる巡回ソフトは皆無といってよいから、BBSについては素直にあきらめたほうが得である。画面が大きいノートサイズのWindowsCEにしても、ブラウザの動きはデスクトップPCとは比較にならないほど遅いし低機能だから、やはりWindowsCEで高度なWWWの扱いは無理である。

 こうした機種共通のWindowsCEの難点以外のMC/R530の難点はというと、正直なところあまり思いつかない。IMEにしてもMicrosoftの純正IME98 for WindowsCEは当たり前として、ATOK PocketもROMで内蔵されているから、日本語入力にも不自由はないどころか、ROMにATOK Pocketを内蔵しているから、他のCEのように貴重なメモリを辞書に割り当てなくてもいいし、低速なCFに辞書を入れてのろまなFEPに甘んじる必要もない。

 ACアダプタにしても、Jornada680のは本体と同じくらいともいえるほどの大きさがあり、最近のノートPCのそれよりはるかに大きかったのだが、Mobile Gear II MC/R530のは100V〜240Vのユニバーサル対応でありながら、手のひらの半分くらいのサイズしかないACプラグ一体型で、私のように海外旅行の友とする人間にはありがたい。アメリカならそのままプラグインするだけでメーカー保証はともかく、定格上は問題がないし、欧州やオセアニアなどでもプラグアダプタだけですむはずだ。

 どうも欠点をあげようとしたのだが、すぐに長所のほうに話がながれてしまうくらいすばらしいマシンである。本当に欠点をあげるとしたら、その大きさであろう。これはキーボードの使いやすさ、広くて大きなフォントの見やすい文章書きには最適のツールであることの裏腹なので、必ずしも欠点とはいえないのだが、やはり混雑した電車の中でポケットから出して片手でメールのニュースサービスを見るというわけにはゆかない。

 この大きさとそれの裏側にある大きな見やすい画面と大きな打ちやすいキーボードとは完璧に表裏の関係にあり、現時点においてそれらを両方取るのは不可能だ。どちらを取るかは、利用者の用途と価値観次第であり、片方を取る以上もう片方がディメリットとして現れてくるのは最初から覚悟すべきで携帯機器の宿命であろう。これになっとくできなければ、こうしたモバイル機器を使おうなんて考えは捨てた方が身のためだ。

 こんなふうに褒めちぎっていても一年後には別のマシンを手に入れて、今のモバイルギアをけなしまくる自分が見えるようだが、それは技術の進歩の証なのだからやむをえまい。


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