ソニーのWALKMANに代表されるヘッドフォンステレオカセットプレーヤー、その後に出てきたポータブルのMDプレーヤー、そしてMP3やWMAのメモリ携帯プレーヤー(俗に言うMP3プレーヤー)と現状で量販店店頭でポータブルオーディオの場所を占めている三横綱がある。
この中で、売り場面積を見ると、カセットプレーヤーは縮小の一途をたどり、これはこの手のポータブルオーディオとしてはいずれほとんどなくなってゆくものと思われ、大ボスとして台頭しているのはMDプレーヤーである。メモリ携帯プレーヤーのほうは、日本市場では大手メーカーも参入しているが、今ひとつ盛り上がりに欠けているようだが、亀足ではあるが着実に売り場面積を広げつつある。というか、PC売り場とポータブルオーディオ売り場の両方で売られることが多いので、それら両方をあわせると、すでにカセットプレーヤーを凌いでいるのではないだろうか。
これらポータブルオーディオに欠かせないのがヘッドホンだ。当然プレーヤーには最初から何らかのヘッドホンがついているのだが、これが自分の好みに合うケースというのは非常に稀であり、製品としても偏見かもしれないけれど、あまりぱっとしないヘッドホンしかついていないのが現状だ。だから、私などは最近はこの手のプレーヤーを買っても付属ヘッドホンについては袋すらあけないことも珍しくない。
筆者の知る限り、日本のメーカーから出ている唯一の密閉型インナーイヤータイプのヘッドホン(イヤホン)である。
経験的には、インナーイヤータイプ(イヤホン)の最大の欠点は、耳にぴったりと合うものが非常に少なくて、すぐに耳からポロリとはずれたり、耳とヘッドホンの間に隙間が大きくできて、そこから音漏れがひどかったりすることだ。
とくに、イヤホンタイプの音漏れは以前は若者のヘッドホンからひどく聞かれたたのだが、最近は非常に少なくなった。そのかわり、若者のヘッドホンからの音漏れをとりわけうるさがっていた世代、中高年のおじさんさまたちが、胸ポケットいに入れて聞いているラジオのイヤホンからの音漏れがひどかったりするのは、なんとも皮肉なことである。
そう、ポケットラジオ愛好者の方は、そのイヤホンからかなりの音漏れがしていることを知るべきである。とくに、コードリール内蔵でイヤホン収納タイプのものは、イヤホンを他のものに交換できないから、さらに車内では要注意であろう。昨今では、若者のヘッドホンステレオのヘッドホンからの音漏れより、ポケットラジオのイヤホンから音漏れのほうが気になることもあるのだ。
音漏れを気にするなら、オープンエアータイプではなくて密閉型を使うべしとうのが定石だが、密閉型は室内にはともかく屋外で使うにはちょっと大げさであるし夏は暑くて仕方ない。そこで、このインナーイヤータイプだけれど、密閉型になって外からの音もかなり軽減させるが、ヘッドホンの発する音の漏れも防ぐというすぐれものの登場だ。
写真でいうと、左右それぞれのユニットが二段重ねの鏡餅のようになっているが、写真内側になっている餅の部分が、やわらかなシリコンラバーになっていて、これが外耳にぴたりとはまり込むのである。音漏れの最大の原因は耳とヘッドホンの間の隙間だから、それをぴったりなくそうというわけだ。
効果のほどは抜群で、音漏れはほとんど無い。そのかわり外部の音もかなり軽減されるので、地下鉄の中で静かな音楽を聞いたり、外国語のヒアリングの勉強をしたりするにはもってこいで、自分の世界に浸れることうけあいである。
ただ、外耳に汗をかきやすい人には向いていないかもしれないし、歩きながらつけていると自分の足音が体を伝わってくるのが必要以上に感じられてしまう。また、コードが衣服に擦れ合う音もかなり耳障りになる場合がある。また、密閉型全般に言えることだが、これをつけている場合に、バッグの中の携帯電話やPHSが鳴ってもわからない場合があることで、頻繁に着信があり、なおかつ電話を身につけてマナーモードにできない(つねにバッグの中に入れている)場合は要注意だ。
音のほうは、あくまで屋外で使うことを考えると、これはかなり優秀ではないだろうか。私の持っているポータブルオーディオ用のものとしてはもっともすばらしいように思う。また、コードの二股部分にはソニーのロゴが入っているのも、ソニーファンにとってはちょっとおしゃれかもしれない。
つぎに紹介するのが、折りたたみ式のネックバンドタイプだ。ネックバンドタイプ(左右のユニットの接続アーチが頭頂部ではなく、後頭部の下、首の後ろにくるためヘアースタイルを乱さないですむ)は、ある意味では画期的な存在だと筆者は思う。
ネックバンドタイプは、ちょうどメガネをかけるのを前後逆にした感じに近い。したがってメガネ着用の方には、耳に二重にアームが来ることになり、おそらく(というのも筆者はメガネは着用してないので)かなりやっかいに違いない。
このタイプもソニーをはじめ数社から多く出ており、一時は売れ筋ナンバーワンのタイプだったらしいが、今は別のタイプにその道を譲ったようだ。
頭頂部で支える従来のものと違って、耳の部分だけでヘッドホンを支えるから、耳の部分へのフィット感が大変重要になり、ばねの強さなどもあいまって装着感の良し悪しの評価に個人差が大きくでるタイプであろう。
筆者が持っている写真のタイプは、さらに折り畳みができるもので携帯に非常に便利である。広げたところは左上の写真のとおりであるが、折りたたんだ状態だと右下の写真のようになる。
装着感のほうは、筆者の好みと頭と耳の形では、なかなか快適で長時間の装着もあまり気にならない。NO.18で紹介したFMラジオ付きのヘッドホンもネックバンドタイプだが、あちらはアーチのバネがかなり強いためしばらくしていると耳がいたくなってくる。その上、パッド(ユニット)の角度が耳の部分の顔の角度とぴったりでないため、下部に隙間があり正直なところ、お世辞にも快適とはいえない。しかし、この場合MDR-G72SLは、バネの強さは強からず弱からずで、顔(耳)への角度も私にはぴったりで、とても快適な存在だ。また、左右がひとつのアームでつながっていて、コードが片方からしか出ていない片出し式だから、バッグに入れておいてもコードが複雑に絡み合うことはまずありえない。着用していて一時的にはずしたときも、胸元でユニットがブラブラしないのもメリットだ。
音のほうも、ポータブルオーディオ基準においては、しっかりした低音とクリアな中高音で語学でもポップスでも無難にこなせるだろう。ただ、オープンエアータイプの常として、 外の音もかなり聞こえるから、地下鉄の車内で静かな音楽などを聴くのにはあまり好適であるとはいえない。
ともあれ、音のほうはポータブルオーディオ用として考えると、かなりいいほうではないかと思われる。
最後に、今人気があるらしいセパレート式のオープンエアーの耳かけタイプである。このモデルとしては、標準というかレファレンスというか、ベーシックなものであるMDR-Q33の、2001年冬季限定モデルを筆者は所有している。
普通のMDR-Q33と違うのは、価格が高いこと(笑)だが、それ以外ではイヤーパッドに、標準のものも付属しているが、出荷状態ではフェイクファーのイヤーパッドがついていることだ。
フェイクファーといえばそういえなくも無いとは思うが、実物は単なる「アクリルボア」のイヤーパッドである。このイヤーパッドがついているだけで、およそ千円の価格アップは高すぎると思う。それなら買わなければよいと思うが、それがフカフカもの、フワフワものに弱い筆者であるから、我慢できずについ衝動買いしてしまったものだ。
これは、上記二つのヘッドホンの中間的な感じだ。バッグに入れたときのコードの絡み方はそれなりで、左右別々のセパレートタイプの宿命であるが、それに耳にかける部分があるから、そこにコードがひっかかったりしてちょっと面倒なことになる。しかし、コードが普通のインナーイヤータイプように、細いものではなくて、どちらかというと「紐」みたいな感じなのでまだマシである。
音のほうは、はっきりいうと大したことはない。MDR-G72SLのほうがはるかに音としてはまともであるといえよう。
装着感もいまいちで、耳たぶへのあたり方もMDR-G72SLのほうが、ソフトでなおかつしっかりしている。MDR-Q33のほうは、いまいち引っかかりが不安定な感じがして、耳へのフィット感もMDR-G72SLのほうが上である。
まあ、無理して買うほどのものではないのだが、筆者の場合は、この季節限定モデルのフカフカ感に負けてしまったのである。
ちなみに、MDR-G72SLのフカフカバージョンである、MDR-G72Fもあるので、こちらのほうはフカフカマニア(笑)の満足度と音と装着感が満たせるのでよいかもしれない。器用な人なら手芸材料店で毛足が短めのボア生地を買ってきて、MDR-G72SLをMDR-G72Fにすることはさほど難しくないかもしれない。
最後にお断りしておくが、これらのヘッドホンはあくまでポータブルオーディオで屋外で気軽に聞くことを前提にした評価であり、室内で高級な再生装置で使うことを前提には評価していない。筆者の考えでは、ヘッドホンに限らず、メディアひとつ(MDやCD, DATなど)とっても、室内でまっとうな再生装置で聞く場合と、ポータブルオーディオで気軽に屋外で聞く場合は、選択基準もまったく異なるということである。
Copyright (C) 2001, あいちゃん, All rights
reserved.
筆者に無断でこのホームページの全部もしくは一部を転載、複写、再配布することを堅く禁止します。