健康をよぶ寝具 (No.472〜473 1996/10/18-10/19掲載)


 またもや寝具の話で恐縮である。というのは先日NHKで寝具の番組をやっていたから、またぞろ寝具のである。私がインターネットのWWWを利用して、アメリカから羽毛(ダウン)の枕を個人輸入して使い初め、早くも二月近くたったので、そのあたりの使い心地も含めて書いてみようと思う。

 特に夜更かししたわけではないのに、朝起きても寝足りた感じがしないとか、肩がこったり首が痛かったり腰が痛くなったりした経験があるだろう。自宅ではそんなことはなくても旅行等で寝具がかわったときにそういう思いをした人も多いと思う。これらの原因のほとんどは寝具が自分の体型にあっていないからだ。もちろん重大病気が潜んでいる可能性も否定できないが、可能性としては寝具があわないほうが遥かに高い。

 目覚めて腰や背中が痛いというのはベッドのマットレスあるいは敷布団が自分の体にあっていないのである。一時期ベッドのマットレスや布団は堅い方が良いと言われ、スーパーハードなどというかなり堅い感じのマットレスまで出ていた。だが、今は堅すぎるのも柔らかすぎるのも良くないことがわかっているという。寝たときに一番快適なのはさきの番組によれば、尻と肩から背中上部にかけてが少ししずむようなカーブが一番心地がよいらしい。

 横になったときに体がこのカーブをえがくようにすればよいが、実はその為に必要な布団やマットレスの堅さは体の部位により、人により大きくことなるという。だから堅めがいいという人もいれば、すこし柔らかい感じのほうが良いという人もいるわけだ。一般には朝起きて腰(腰の骨の上部あたりの柔らかいところ)が痛いとか重いという場合には布団やマットレスが柔らかすぎる。ちなみに、腰(いわゆるウェストの後ろ部分の骨のないやわらかなところ)が重だるく、午後から夕方にかけて熱がでるのは典型的な腎う炎の症状であり、決して布団のせいではないから直ちに内科医の診察をうけたほうがよい。一方背中やら尻(一番膨らんでいるところ)が痛い場合は布団が堅すぎるのである。

 前者は筋肉に長時間無理がかかって出る痛みで、鈍痛で長時間続くのが特徴であり、後者は堅い物に圧迫されたために起こる圧迫痛であり、比較的短時間で痛みが引くので区別ができると思う。どちらにせよ布団やマットレスには工夫をしなくてはいけない。柔らかすぎる場合は尻の部分に薄いクッションやいくつかに折ったタオルを引き、尻のしずみ込みを防ぐようにする。後者の場合は布団なら下に薄くて堅めのマットレスを敷く、ベッドならすこし厚手のベッドパッドにするなどをすればよい。もちろん長い間使っていて尻のところが落ちくぼんだベッドや布団は買い替えねばならない。ベッドではマットレスだけ販売されているので堅さや構造ですきなものを選べばよい。

 こうした眠っている最中の問題の他に、人には好みというものがある。好みにあわないと入眠に差し障りがでてくる。いわゆる布団があわないのでなかなか寝られないという状態だ。好みにせよ体型から来る寝具の適否にせよ十人十色なので、どれが良いなどということはできない。現状の寝具でさきのような不満を感じているなら、まずクッションやタオルで調節してみるのがよかろう。買い替えてもそれが体や好みにあっている保証は全くないのだ。トライアンドエラーで自分の好みや体型にあった堅さを見つけてから、買い替えても遅くはない。

 さて、朝起きて肩がこる首筋が痛むなどの症状があれば、明らかに枕があっていないのである。これも高すぎず低すぎないものを使用するのは言うまでもない。枕の上に頭を乗せたときに、肩と頭全体をしっかり支えることが大切だ。一般に販売されている43cm×63cm以下のものなら、ぎっしりと中身が詰まったものよりは、頭を乗せる事で中の詰め物が枕のなかを自由に動き回り、頭を平面で支えるのではなく、凹面のくぼんだ部分全体で頭をささえるようにするのがよい。

 そばがらなどは頭を乗せただけでは中身が動いて後頭部の形に自然にフィットすることはないので、中身を少な目にして眠るときに真ん中をへこませるようにするとよい。

 私が一番問題だとおもうのは普通店で売られている羽枕である。何の鳥からとったのか正体不明の羽根(ダウンではなく軸があって堅めのスモールフェザー)を「びっしり」と詰めたものだ。これは堅くて高さもあり枕としてはほとんど失格であると断言する。

 私がアメリカから個人輸入で購入した物はグース(がちょう)のダウンだけを適度な量詰めた物で、頭をのせるとダウンが自然に動いて後頭部の丸みにフィットし局部的に圧力がかかることがない。またサイズも大きい(20"×36")ので首だけを枕に乗せるのではなく、肩のあたりから自然な形で支えてくれる。日本では羽毛枕について歴史が浅く、製品を作る側も使う側も間違っているという。フェザーだけを思いきり堅く詰めた羽根枕などは具の骨頂であろう。欧米の枕が大きいのは、頭だけではなく肩から上を枕に乗せる為だ。だから奥行きは20"あるし、ヨーロピアンサイズでは26"の正方形である。

 そこいらの正体不明の羽根枕を騙されて買うくらいなら、最近よくみかける科学の枕、つまり合成素材で粘り着くようでやわらかな独特のクッション性を持つ枕や、中身を少な目にしたそば殻枕のほうが数十倍マシである。いくら歴史が浅いとはいえ、これほどひどい製品が多いとは悲しい限りだ。

柔らか目の枕が好きで今の枕に満足していない人は、米国Pacificcoast社の"DownEmbrance"をお勧めする。同様のものは米国Landsend社(インターネットのWWWでカタログを請求できる)でも扱っており同社の生活雑貨カタログ(LandsendHome)に紹介されている。送料を入れると枕としてはかなり高価であるが、二ヶ月間使ってもう日本の枕は使えない体になってしまった。やはり羽毛寝具の歴史の長い欧米ならではの製品だ。

 人生の三分の一だか四分の一は眠って過ごす。眠りは健康の源であり明日へのエネルギーの充電時間だ。睡眠時間は足りているのに、どうも朝起きても頭がさえないと言う人は、寝具や寝室環境を見直した方がよい。そして朝はシャキッと目覚めたいものだ。


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