ここで私が言う羽毛寝具とは、羽毛布団と羽毛枕(ダウンピロー)である。フェザーベッドというのもあるが、とりあえず日本ではあまり一般的ではないのでここでは話から外しておこう。
日本は古来の生活習慣的背景、すなわち狩猟民族ではなく農耕民族であること)から、寝具に関しても羽毛や毛皮といった動物性の素材より、そば殻とか藁とか綿といった植物素材がいまでの我が国では一般的だ――といってもさすがに現在では藁は見かけなくなったが。それらを寝具につかった場合、保温力・吸湿性・放湿性・耐久性では大きな差がでてくる。どれをとっても藁や綿などの植物素材より毛皮や羽毛といった動物素材のほうが数段上手{うわて}なのである。この中でも掛布団と枕の充填素材としての羽毛(ダウン)はかなり優秀であり、他の素材の追従を許さない。
良い羽毛布団を使ってみればわかるが、スーパーなどで安くで売られているポリエステル綿の掛布団とは保温・吸湿・放湿性では格段の差がある。真冬になるとポリエステル綿の掛布団では寒くて、毛布に加えて掛布団を二枚重ねにしたり、電気毛布やアンカをつかったりしないといけないことが多いが、良質な羽毛布団を使えば毛布や電気毛布などとは、おおよそ無縁になるのである。
近年中国産の安い羽毛が入手できるようになったので、羽毛布団の価格が随分安くなり、デパートのバーゲンでは四万円前後から買えるようになった。しかし、デパートや寝具店で中身の羽毛のまともな羽毛掛布団を買おうとすると十万円近くするのが現状である。安い物は重さを稼ぐために、掛布団には不向きなフェザーを混ぜている。一羽のグースからダウンは少ししかとれないが、フェザーは沢山とれるから価格がまるで違う。国産では良質なダウンやフェザーが確保できない我が国の場合、どうしても原価を押さえて売価を下げるしかないのだ。だから、デパートでは1万円近く出しても、安物のフェザーのピローしか買えないのである。
ただ、知識としてしっておかねばならないのは、ダウンとフェザー(スモールフェザー)は機械で振り分ける限りどうしてもダウンに若干のスモールフェザーが混じってしまうことだ。アイダーダウン(今や絶滅寸前の種だそうだ)などのように特別希少で高価なものは手で分けるとしても、量産用のものはダウンといっても少量のスモールフェザーが混じっている。だから日本では100%ダウンという品質表示はありえない。100%ダウンという表示が数万円程度の掛布団であったとしたら、それはあきらかに嘘の表示といってよい。アメリカの場合は品質表示でこうした割合を示す必要はないが、やはりダウンの表示であってもある程度までもスモールフェザーの混入は許されている。
一般に物を安く買う・安く売るには、原価を下げる以外に、流通経路をシンプルにし途中での利益の上乗せの機会を減らすことだ。簡単に考えれば工場からの製造直販が一番安く買えることになる。これは羽毛布団でも同じ事が言えて、一般的には大手メーカーの羽毛布団を小売店で買うと高いに決まっているのである。ならばメーカーから直接買えば良い、とは理屈の上での話であって、日本ではそれは簡単ではないのはご存知の通りだ。
日本の羽毛掛布団の価格が高いか、安いかを知る手段として、アメリカやカナダのWebを使った通信販売、カタログ通信販売の価格と、日本でのデパートの通信販売や店頭販売の価格を比べてみるとよくわかる。アメリカでは店頭より通信販売のほうが主力で製品の種類もずっと多い。日本は逆で通信販売より店頭のほうが種類や業者の数もずっと多い。それらの互いに主力な販売方法で見てみると、日本で言ういわゆるシングルサイズの掛布団で、カタログ販売では、ホワイトグースダウン使用で250〜500ドル程度。同じような品質の物を日本のデパートや寝具専門店などの店頭でみると、だいたいその倍以上の価格帯になるようだ。羽毛掛布団を買うときに、良い物を安く欲しければ国内だけに目を向けずアメリカやカナダにも目を向けたほうがよい。
ただし、その場合、日本の寝室のほうが暖房不備で寒いので、羽毛の充填量は多いものを選ぶべきである。どこの通信販売でも中身のダウンの種類と充填量(重量=オンス(oz)であらわされている)とフィルパワーは最低限のチェックが必要だ。
フィルパワーとは慣れない言葉で、日本の羽毛製品では使われることがないのだが、これはダウンの品質の目安である。日本だとダウンとそれ以外のフェザーなどの希望的な割合(実際に測定され完全に保証された割合ではないことに注意)しか表示されていないから、ダウンの良し悪しは分からないが、このフィルパワーがあるとダウンの品質の目安になる。どういうものかというと1オンス(約28.3495グラム)のダウンが何立方インチに広がるかというものだ。良質なダウンほど嵩高{かさだか}になるから、理屈にかなったメジャーメントである。ちなみにフェザーだとフィルパワーは300程度、これがダウンになると600以上になるが、羽毛布団には700程度以上のものが望ましい。アメリカやカナダの羽毛布団のカタログを本やWebで見ていると、このフィルパワーが書いてある。当然の事ながらフィルパワー800くらいになるとそれなりに高価であるが――とは言え日本よりずっと安い、価格ランクをそれでつけているのが明確になっている。
ところが日本の羽毛布団をみると、5万円と10万円の羽毛布団で充填されているダウンに具体的などういう違いがあるのか、客観的な数値が何もない。品質表示をみても、どちらもダウン95%で1.3kgとか書いてあったりする。いったいこの価格差はどこから来ているのか、客観的かつ納得できる説明が何も無いし、店員もそれはできない。「やはり高いものはダウンが違うんですよ」としか言えないのが情けない。
ともあれ、より良い羽毛布団をかうならやはり歴史が長くて原材料も安い海外製品を買うのが良い。私が通信販売を使うとき、最近は本ベースのものではなくて、Webベースの通信販売が多い。理由は簡単で送料見積もりなどが電子メールで出来るから簡単に済むのである。
二週間ほど前に、キングサイズのダウンピローを購入すべく、Webで検索していくつかの通信販売サイトを選び出した。その中で明確に国内販売だけをうたっているところ以外に送料見積もり依頼の電子メールを出してみた。結果的には全部の会社から返信があったが、その返信が実にさまざまであった。なかには日本向けには販売しないなんてところもあったりしたのだが、多くは事務的に送料だけを通知してきた。その中に注目すべき会社が2社あった。一つは、「A−1 VALUE」というアメリカの会社、もう一つは「Old Europe Euvet」というカナダの会社である。注目した理由は、どちらもメールでの対応が非常に丁寧だったからだ。どちらも製造直販の会社である。ただ、羽毛布団となると「A−1 VALUE」のほうは日本の寝室用としては屋や充填量が少ないかもしれない。「Old Europe Duvet」のほうは、充填量を追加オーダーできる。実はこの会社の設立者の方と何度かメールのやりとりをしているが、大変丁寧な方で日本への販売にも大変強い関心をもっている。他に「Cuddle Down Of Maine」というのは比較的有名なところである。ダウンピローだけなら他にもあるが、羽毛掛布団となると、私がお勧めできるのはこのあたりだろうか。もちろん他にも多数あるので、Webで、検索してよさそうな商品があるところは、片っ端から送料問い合わせメールを出してみると良い。
A-1 Value
http://www.a-1value.com/
Old Europe Duvet Co.
http://web.onramp.ca/oldeurope/
Cuddle Down of Maine
http://www.cuddledown.com/
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