快適寝具講座 (No.92〜97 1997/10/04-10/09掲載)



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ベッドと布団

 布団が良いかベッドが良いか、これは現代日本人の論争の的である。と、まぁ、かなり大げさな書き出しだが、日本にはベッド派と布団派がいるのは確かである。だがベッド派が終生ベッドで通せるかというと決してそんなことはないし、逆もまたしかりである。

 例えば、ずっとベッドで通してきた人が、独立して一人暮らしをするとき、部屋が狭くてベッドを置く場所などないというケースがある。あるいは結婚相手が布団派でそれに妥協したというのもあるだろう。新居が全てフローリングで板張りに布団はちょっと、とい事で不本意ながらベッドにした人もいるかもしれない。いったいどちらが良いのだろうか。

 人が住む部屋の中には必ずほこりが漂っている。このほこりが一番多いのは床から20〜30cmの範囲だと言われている。これはちょうど布団に寝るときの、顔のある位置だ。ところがベッドの場合は少なくとも50〜60cmになる。つまりほ就寝中の室内のほこりに関してはベッドが絶対に有利である。なお、悪いことに寝る前には布団をひくが、この作業は多大な量のほこりを産出するのだ。部屋中のほこりがおちついて、下の方に沈んだ頃にそれを吸って寝るのだからたまらない。喘息やアレルギー体質の人には布団は敵なのだ。

 さらに気温でも不利だ。冬場では絶対にベッドの方が暖かい。エアコンやファンヒーター、ストーブなどで暖められた空気は、床に近いところを暖めることなく上の方に行ってしまう。もちろん床暖房が理想的だが、まだまだ一般的ではない。

 また、お年寄りの場合、起きあがるのは絶対にベッドの方が楽である。いや、年齢に関係なく、ベッドの場合は足を床に下ろすことで無理なく自然に起きあがることができるが、布団では「どっこいしょ」となってしまう。

 このように書くとベッドに決まったように感じるが、まだ結論を出すには早すぎる。それは寝心地だ。横になれれば良いという人も少なくはないが、それは誤りだ。睡眠は疲労回復の為のもっとも基本的かつ重要な手段だ。睡眠が十分でないと、たとえ自分では気付かなくても、回復しきれなかった疲労がつもりつもって、いつかは破綻をきたす。睡眠は非常に重要でありベッドメーカーのコマーシャルではないが、人生の三分の一は寝具の中で過ごすのだ。衣服の選択に時間と金をかけるのと同様に、寝具にも気を配りたいものだ。

 さて、敷布団はどれを選んでも寝心地に極端な差はない。マットレスを使うときはそこに適度な固さのものさえ選べば、あとは好みとどのくらい長持ちするかの差である。ところがベッドはそうはゆかない。フレームの素材やマットの材質などにより寝心地がまるで異なる。ベッドは布団よりはるかに慎重に選ぶ必要がある。

 当たり前の事だが、部屋数が少ないあるいは狭いときは布団が有利だし、ベッドは不利だ。ベッドにも折り畳みやソファ兼用などがあるが、客用のエキストラベッドならともかく、常用するには扱いにくく、何より寝心地が劣るので止めた方がよい。万年床にならない自信があるなら狭い部屋では布団がよい。

 万年床になりそうであれば、ベッドの方が少しはマシなようだ。だが、そもそも万年床に寝具を選ぶ必要はない。高級な寝具は不要なのだ。万年床にされた寝具が哀れである。ディスカウントショップの何千円とかの敷布団で十分だ。

 好みの問題はさておいて、眠る環境を作る道具として優れているのは、ベッドであることはさきのような理由で明らかである。だが、理想通りにゆかないのが世の常で、世界に冠たる兎小屋がそう簡単にベッドの導入を許すわけがない。結局は住まいの広さと好みで決めるべきだという、当たり前の結論になってしまう。ただし、住まいの広さと好みが許せばベッドを選んだ方がよい。

 これで終わってしまってはあまりに下らないので、せめて次回の予告でもしておこう。次回以降で各寝具の選び方などを説明して行こう。


ベッドの選び方

 まず最初に、ベッドを選ぶ場合にどういう点に気をつければよいか考えてみよう。ベッドといっても、木製あるいはスチールパイプ製のフレームに板張りやい草張りの床をひいたいわゆる畳ベッドとかパイプベッドと呼ばれるタイプ、ソファと兼用のタイプ、スプリングマットを使うタイプ、マットレスに水を使うウォーターベッドなど様々である。

 畳ベッドは、寝床といえば畳と布団以外は考えられないが、寝起きの楽さや布団の上げ降ろしをしなくて良い、ほこりが少ない、暖かいというベッドのメリットだけを享受したい人向きである。当然クッション性には欠ける。

 パイプベッドは丈夫で分解可能であるが、ごつごつして部屋の雰囲気がハードになりがちである。たとえ柔らかい色を選んでもその雰囲気からのがれることはできない。クッションもベニヤ板に数ミリのウレタンを張った物が多くおあまり良くはない。スプリングマットだけを購入してひくことで少しは改善できる。引越の多い独身向きである。

 もっともポピュラーなのがスプリングマットを使ったベッドである。構造から大きく二つに分けると、ダブルクッションタイプとシングルクッションタイプがある。違いはスプリングマットを置くボトムの構造だ。前者はボトムにもスプリングマットを使ってあり、衝撃をやわらげる。後者はボトムがベニア板や、木製のすのこ、あるいはスチールネットになっていて、この順に衝撃吸収力が大きくなってくる。寝心地から言えばダブルクッションに軍配が上がるが、価格は高い。シングルクッションは寝心地ではダブルクッションに劣るが、価格を抑えることができ、フレームは分解可能な物が多いく移動しやすい。ベッド下に収納がついているのもこのタイプである。シングルクッションタイプは商品の種類も多いが、予算や好みが合えばダブルクッションの物をお勧めする。やはり寝心地には歴然たる差があるからだ。

 スプリングマットのタイプではスプリングの構造もいろいろあるが、比較的優れているのはひとつひとつのコイルスプリングが独立しており、振動を他に伝えにくくしてあるものだ。当然価格も高くなるが、どちらかといえばこの方がよい。

 どのタイプでも体で確かめて欲しいのが硬さである。尻だけがめりこむような柔らかいものは論外であるのは当然だ。だからといって固ければいいという物でもない。あまり固いスプリングマットは意外と寝心地が悪い物だ。このあたりは体が納得行くようなものを、実際に店頭で横になって確かめねばならない。手で押しすあるいは座るだけでは絶対にわからない。横になり寝返りを何度もうってみるのだ。シングルマットタイプではマットだけを他の物と取り替えてくれることもある、というのは知っておいて損はない。

 マットのタイプとは関係なく、最近良く見かけるのがベッド下が収納スペースになっている物だ。引き出しになっている物が一番多いが、ベッドの床全体が持ち上がるようになっており、大きな物を収納できるようにしたものもある。筆者にも経験があるが、ベッドの下の引き出しというのは、非常に湿度が高くほこりもたまりやすい。肌着や替えシーツを入れるとなんとなく冷たくて、さらりとした気持ち良さがないのだ。場合によってはかびの原因になる。仮にしまう物が湿気やほこりに関係ないものであったとしても(あまり考えられないが)、ベッドの下は風通しを良くしておかねばならない。そうでないと、マットが乾燥せず、最悪の場合はかびが生えたり、スプリングが錆びたりする。

 部屋が狭いという理由で下部収納付きベッドを買うくらいなら、素直に布団にしたほうがよほど利口である。極端に言えば下部付き収納ベッドは体{テイ}のよい万年床である。これから購入する人には、くれぐれもこのタイプは勧めない。すでに使っている人は天気の良い休日には、窓を開け引き出しを取り出して風通しを良くするしたほうが良い。

 最後にウォーターベッドだが、経験的にこれがいちばん熟睡できる。最初は慣れないかも知れないが、すぐに手放せなくなるだろう。昔は高価で重量もかなりのものであったが、最近は人気がでてきているせいか、価格もスプリングマットの中の上クラスのものとたいして変わらない。軽量化も進み昔のように床の補強などは必要ない。ただし一度設置すると移動は素人では無理だ。引越の多い人は止めた方がよい。だが、ベッドの中では一番のお勧めである。ホテルの中には、ウォーターベッドを使っている部屋もあるようなので、機会があれば予約の時に聞いてみると良い。ちなみに大阪梅田のホテル阪神も予約の時に言えばその部屋にしてくれる。

 夫婦の為のベッドでは、ダブルはあまりお勧めできない。やはり寝返り等の振動がもろにとなりに伝わるからだ。十分なスペースがあれば、ダブルを二台もしくはセミダブルとダブルがよい。シングル二台は別に寝るときはよいが、仲良くしたい時に何かと不都合がある。スペース的にシングル二台ならばOKという場合は、クィーンサイズあるいはキングサイズをお勧めする。これはシングルあるいは少し幅の狭いマット二枚を並べて一つのフレームにセットしたもので、隣の振動はほとんど伝わらないし、なおかつ何時でも仲良くできるというものだ。ダブル一台しかおくスペースしかないようであれば、ベッドそのものを考えなおしたほうがよい。片方が病気の時等ゆっくり休みたくても休めないからだ。

 独身なら何でもよさそうだが、やはり広い方が熟睡できるので可能であれば一人身でもダブルベッドなどを使った方がよい。ここで良いものを買っておくと結婚したときに、セミダブルを買い足せばよいし、新婚しばらくならそのままダブルを使っていても良いからだ。

 ベッドは一生物だ。これからの住まいや人生設計を念頭に、あまりけちらずに良い物を選んで欲しい。人生の三分の一はベッドで過ごすのだから。


ベッド用品あれこれ

 ベッドの中では一番ポピュラーな、スプリングマットのタイプについてみてみよう。本格的なベッドメイキングでは、下からマット、ベッドパッド、アンダーシーツ、アッパーシーツ、ブランケット(毛布)、ベッドカバーとなる。だが布団文化が浸透し、室内暖房設備も貧弱な日本の住宅では、体の上に掛けるものはこれにこだわらない方がよい。

 まずベッドパッドである。薄いキルティングのパッドであり、マットの汚れを防ぎ汗を吸い取る役目がある。ポリエステル綿を使った物が一般的だが、羊毛を使ったものもある。湿気を吸いやすくまた放出しやすいのは羊毛素材であり、価格はすこし高くなるが羊毛のベッドパッドをお勧めする。たまにスプリングマットの上に普通の敷き布団を敷いている人を見かけるが、あれは良くない。体の重い部分が局部的に沈み混み寝返りがうちにくく、深い眠りを得ることができない。せっかくうまく作られているマットの硬さ加減も台無しにしてしまう。一見柔らかで心地よさそうだが、実は大違いなのだ。

 シーツは和式のシーツよりずっと大きなベッド専用のシーツを使う。大きさの目安はマットのサイズに80cm程度を加えた物が、ベッドメイキングに適している。幅100cm、長さ200cmのシングルベッドなら、シーツは幅180cm、長さは280cmというわけだ。こういったフラットシーツでは、眠ってもしわのでないようなメイキングをするには、かなりこつが必要だし、手間もかかる。そこで生まれたのがボックスシーツである。周囲にゴムが入っていて、マットをすっぽりと包むようになっている。フラットシーツより価格は高くなるが、こちらが簡単で良い。シーツ交換が面倒だと洗濯も億劫になりがちだからである。素材はもちろん綿100%に限る。ここまでが体の下に敷く部分だ。

 ウォーターベッドでは専用のシーツなどがある場合も多いのでそちらを利用すると良い。特にパッドは薄手のものがよい。せっかくのウォーターマットのよいところ(体に良くなじんで体の局部に圧力が集中しにくい)をパッドが殺してしまっては何にもならないからだ。

 さて、体の上に掛ける物は日本ではアッパーシーツにブランケットという西洋式より、素直に掛布団を用いた方がよい。暖房が行き届いている欧米の寝室では毛布で十分だが、日本の家屋の場合そうではないので、真似をしないほうが良い。掛布団の選び方は後述の布団編を参照していただきたい。

 よくある悩みが、寝ているうちに掛布団だけがベッドからずり落ちるという事だ。ずり落ち防止柵なども市販されているが、あまり格好の良い物ではないし、ベッドメイキングもやりにくい。お勧めするのは掛布団全体を覆うような袋状のカバーで、足元にはマットの下に巻き込んで、布団を足元でベッドに固定できるようになっているものだ。これならパッドとシーツを掛けた後、布団を掛けて足元を巻き込めばよい。丁度敷布団にシーツをかけて、上下の余った部分を布団の下に巻き込むようなものである。

 残るは枕だ。幅70cm、奥行き50cmくらいの大きいものが使いやすい。ヘッドボードによりかかって読書をする際の背当てにもなるからだ。布団の場合より低めで柔らかな物が眠りやすい。畳と布団では体は沈みやすいが、ベッドの場合は尻や肩がより自然な形で沈み、相対的に頭の位置も低くなるからだ。低くて柔らかいものと、低くて少し固めの二つを用意して、気分や体調で二つを使い分けあるいは重ねて使うのも良い方法である。

 詰め物は色々あるが、ベッドの場合一番相性が良いのは羽毛の枕である。ベッドの歴史が長い欧米で古くから使われているだけのことはある。ただし羽毛枕でもデパートのバーゲン等で販売されているものや、小さな寝具売り場にあるものは、フェザーやスモールフェザーをぎっしり詰め込んで固くした物が多い。こういうものは余りベッドにはそぐわない。ダウンを混ぜてふんわりとやわらかに羽毛を軽く詰めたものがよい。パンヤはすぐにひしゃげて固くなるし、ポリエステル綿は一度へこみ癖がつくと戻らない。ただし羽毛アレルギー体質の方はポリエステル綿を使った人工羽毛のようなものを詰めた枕があるので、それがよいだろう。枕の話は後で詳しく説明する。


和式寝具

 日本人ならやはり畳に布団に限るという方も多かろう。だが、そんな人に限って布団はよれよれの煎餅で、カバーの洗濯もしていなかったりで、皮肉なものだ。和式寝具を選ぶの場合はベッドほどシビアにならなくても良い。

 では、ベッドの時と同様に下から順番に考えてみよう。

 まず最初は、一般的にはマットレスであろう。畳の上に直に敷布団ではやはり寝心地はよくない。マットレスは柔らかい物は避けた方がよい。すぐにひしゃげてしまい、本来のクッション性が失われて衝撃吸収の役にたたないからだ。また体が沈みすぎて寝返りがうちにくくなり、深い眠りを得にくい。三折りで重量のかかる中央部を固めに作ったものがよい。厚さはあまり分厚い物だと収納が大変なので4cm〜6cm程度のもので十分だろう。

 次は敷布団だ。詰め物にはもめん綿、ポリエステル綿、羊毛、羽毛(フェザー)などがある。昔から使われているのはもめん綿だ。吸湿性に優れているが乾きにくいのが難点だ。また重量も4〜6kgほどあるので上げ降ろしが大変だ。定期的に打ち直しをしないとすぐに煎餅布団になってしまうのも欠点だ。ポリエステル綿は軽いが吸湿性には劣り、敷布団には適していない。羊毛は吸湿性・放湿性にすぐれ重量も2kg程度ともめん綿の三分の一ほどで、打ち直しも不要である。ただし重量がかかるとフェルト状になりやすいのが大きな欠点である。最近は羊毛の繊維を蒸気などでカールさせて布団綿にし、フェルト化しないように加工されているものがある。最後に羽毛であるが、敷布団にはフェザーやスモールフェザーという固い部分の羽根を使うが、それが意外と重い。通気性の面ではかなり優れているが、あまり一般的ではない。

 さて、どれが良いかというと、私は羊毛の敷布団を勧める。それもバーゲンなどで入手可能な一万円前後のものではなく、フェルト化を防ぐ加工を施した物だ。価格は少し高くなるが、これがないと重量のかかる部分がすぐにぺしゃんこになってしまう。敷布団は思っているよりずっとくたびれやすいので、良い物を求めた方が結局は長持ちをする。

 日常の手入れであるが羊毛の敷布団では、あまり神経質に干す必要はない。起きた後すぐにたたまず、掛布団をどけて三十分から一時間ほど放置しておくだけでよい。あまり直射日光の下で頻繁に干すと、羊毛綿がもろくなってくる。多くても週に一度程度干せば十分だ。もめん綿の場合は湿気を除くためにも、まめに干さねばならないのはご存知の通りだ。

 ベッドと異なり、失敗しても買い替えが比較的簡単だし、一生物というわけには行かないので、気楽に選べばよいだろう。買い替えならば古い布団を処分してくれる寝具店もあるので、それらを利用するのも良い。たまに、ごみ集積場所に布団を捨ててあるのを見かけるが、あれは見苦しいし多くの自治体ではルール違反だ。例えば東京ではふとんは粗大ごみであり、事前に清掃局に連絡して、有償で引き取ってもらう必要がある。買い替えの際にはくれぐれも古い布団の処分には注意して欲しい。


掛布団

 日本の住宅では、ベッドでも毛布一枚より普通に布団を使った方が良いことは、すでに書いたとおりである。ここではベッドと和式の両方の面で掛布団について考えてみよう。掛布団の綿の素材としては、もめん綿、ポリエステル綿、真綿(絹)、羊毛、羽毛(ダウン)がある。

 もめん綿の掛布団は昔は主流であった。だが重いこと、打ち直しが必要なこと、放湿性に劣ること、へたりやすいことなどから、最近は見かけることが少なくなってきた。

 ポリエステル綿は、軽いし安価であるという理由であっというまに掛布団の主流となってしまった感がある。ポリエステル綿の掛布団には、もめん綿のように、平たい綿を重ねたものと、特殊な加工を施して人工羽毛のようにしたポリエステル綿を入れたものがある。前者は綿切れを起こしやすくへたりやすいが、後者は布団の中で羽毛のような綿が自由に動き回ることができるため、へたりにくく、間に空気を含んで保温性に優れるという特徴をもつ。たたむと羽毛布団同様コンパクトに圧縮できるので、常用しない布団でも保管場所をとらなくてすむ。ポリエステル綿の掛布団では、後者の人工羽毛タイプをお勧めする。

 真綿は保温性に優れているが、非常に高価なものが多く常用する人は少ないようだ。筆者も真綿の掛布団には縁がない。

 羊毛はもめん綿より少ない量で、保温性を確保できるので、掛布団としては薄くてコンパクトになる。吸湿性と放湿性にも優れているので、お勧めできる。ただしもめん綿と同じで、長年使うと綿切れを起こしやすく、打ち直しもきかないことが多い。

 近頃利用する人が多くなってきたのが羽毛である。昔は非常に高価なものであったが、円高の影響もあってかなり求めやすい価格になってきた。保温性にすぐれ、へたることもないし、軽いので上げ下ろしも非常に楽である。またドレープ性(体にフィットすること)にも優れており、寝返りをうっても体との間に隙間ができにくいのが特徴だ。

 もめん綿やポリエステル綿、羊毛掛布団などは選択に失敗することは少ないが、羽毛掛布団は十分吟味して選ぶ必要がある。生地は超長綿(繊維の長いもめんを使った生地)か絹を使ったものが、柔らかくて羽毛の特性を発揮できる。中身の羽毛は、ダウン90%以上のものを選ばねばならない。よく数千円などで販売されているのを見かけるが、あれは枕などにつかうフェザーをつかったもので、掛布団には全く適さないものだ。まともな品を安価で求めるならば、年二回ほどデパートで開けれる寝具バーゲンをねらうのがよい。そこでメーカー希望価格8万円〜10万円程度のものが4万円〜5万円で販売されていることが多いので、この価格帯で生地に超長綿あるいは絹を使ったもので、ダウン90%以上のものを選べばまず無難な選択ができる。

 羽毛布団をえらぶ時は、必ず自分で確かめることだ。生地のなめらかさや縫製を自分で確かめること。中綿(羽毛)をみることはできないが、ぐっとつかんだ時の復元具合をみて、ちくちくとした手触り(フェザー)がないことや臭いがないことを確認する。羽毛布団を通信販売等自分で確かめることができない方法で買い求めるのは、あまり感心しない。

 羽毛布団を使うとき、真冬で羽毛布団一枚では寒いという場合、お勧めするのは羽毛の肌掛けを内側に使うことだ。つまり羽毛肌掛けを掛けてから、羽毛布団を掛けるわけだ。人間が普通の格好で暮らせる気温であれば、これで十分暖かいはずだ。毛布を使う場合は必ず羽毛布団の外側に掛けること。これは羽毛布団はできるだけ肌に近く使った方が暖かいからだ。羽毛布団を掛けてその上から毛布を掛ける、この方が逆の順序よりはるかに暖かである。

 羽毛肌掛けと羽毛布団の組み合わせを勧める理由は、この二枚があれば一年中過ごせるからだ。夏は肌掛け一枚、春秋は羽毛布団、冬は両方をつかうことで一年中快適に眠ることができる。

 最後に、羽毛布団は直射日光にあてて干してはいけない。羽毛の蛋白質が直射日光でもろくなるからだ。羽毛はそのままでも十分放湿性があるので、使ったあとは、かるくはたいて羽毛の中に含まれている空気をいれかえてやるだけでよい。どうしても干したければ、日陰干しにすることだ。羽毛布団をベランダに干している風景をよく見かけるが、あれはあまり適切な手入れとは言えない。たまに干すのは良いが毎日のように干すものでないことは心得てほしい。

 掛布団としてお勧めできるのは、第一に羽毛、次に羊毛、最後に人工羽毛の加工をしたポリエステル綿の掛布団である。価格は羽毛が一番高い。次が羊毛だ。持ちの良さもこの順であるし、使い心地の良さもこの順であることを、覚えておいてほしい。


 「まくらが変わると眠れない」、「枕を高くして眠る」、「枕言葉」など枕にまつわる諺や言葉は多い。それほど枕とは重要なものなのである。実際、出張や旅行などで、布団の種類やベッドの堅さ(おおむねホテルは堅めのマットを使っている)が違ったりして眠れない経験をした人は多いと思う。また普段使っている枕と、堅さや高さが違ってなかなか寝付けないで、いらいらした人もいるはずだ。

 現在よく使われている枕には、大きさや詰め物によっていろいろな種類がある。昔は頭をのっけることができれば何でもいいといった傾向があったが、近年枕の重要さが見直されて、百貨店などではピローショップといった多種の枕を専門に扱うようなコーナーも出来ている。

 枕を大きさで分類すると、日本の場合は35cm×50cmの和式サイズ、43cm×63cmの大きめの和式サイズ、50cm×70cmのベッドサイズがある。一般的にはある程度の大きさがないと寝返りをうったときに外れたり、肩口から冷えたりする。望ましいのは最低でも43cm×63cm以上のものだ。ベッドではさらに大きめの方が使いやすい。

 詰め物は、近頃非常に種類が多くなってきた。堅さは好みで決めてよい。昔ながらのそば殻、小豆、あるいはパンヤ、ポリエステル綿、羽毛、羊毛、ウレタン、最近流行のビーズやパイプの枕である。

 そば殻は通気性がよいが、なれないと頭をうごかす度にがさがさ音がして、それが気になるという人もいる。パンヤは柔らかく保温性があるので、夏には向いていないし、すぐにへたってしまう。ポリエステル綿はクッション性がありすぎて、頭を動かすとふわふわと弾む傾向があり、吸湿性にも劣り癖もつきやすいが、あたりが柔らかいのが特徴だ。アレルギー体質の人にも向いている。羊毛は吸湿性・保温性にとみ寒い時期には良いだろう。羽毛は詰め物の質と量により、かなり差ができる。これについては後述する。ビーズやパイプの枕は堅くてあたりが悪いが通気性は抜群で、かびや虫がわく心配もない。よごれたらざばざば洗うことができるのも特徴だ。やわらかい枕が好きな人はやめた方がよい。

 そば殻の通気性とひんやりとした感じにパンヤやポリエステル綿のクッション性をあわせたものも多い。半パンヤとか半そばなどと呼ばれる枕がそれで、スーパーの寝具売場などでは九割方がこのタイプで、大きさも43cm×63mが一番多いから、これを使っている人もかなり多いだろう。万人向きの無難なものである。

 羽毛は、掛布団でも慎重に選ぶ必要があったが、枕でも同様だ。堅めが好きな人は、フェザーやスモールフェザーを100%使用して、比較的ぎっしりと詰め込んだものが良かろう。柔らかめが好みの人は、ダウンを最大50%ほど混ぜてふんわりと少な目に詰めたものがよい。ただ頭をのせると低くなってしまうので、好みにより二個重ねて使用するのも良い。外国映画で良く見るシーンだ。

 避けた方がよいのが、ウレタンのものだ。クッション性がありすぎて頭が弾みすぎて、落ちついて眠れない。また通気性もわるく湿気が頭と枕の間に溜まってしまう。クッション性がある割にはすぐにへたってしまう。枕としてはあまり適した素材ではない。

 肩がこるような仕事はしていないのに、肩がこるなどという場合は、枕を変えてみるのもよい。仰向けでもうつ伏せでも横向きでも適当な堅さと高さを得ることの出来る素材を選ぶべきだ。小さなものを使用している場合は大きなものに変えると良い。ダブル用の長い枕を夫婦で使うのは良くない。すすめられる素材は、ここでもやはり羽毛である。ベッドの場合は柔らかめのマットの場合は枕も柔らかめを、堅めの場合は枕も堅めが寝たときの高さが良くなる。堅めが好きな人は大きめの半そば枕が無難である。

 寝具については、書き始めるときりがないのだが、自分でまめに足を運んで選ぶ目を養うこと。買うときはたかが寝具などと軽視せず、人生の三分の一を過ごす道具、明日へのエネルギーを回復する道具でもあることを忘れずに、あまりけちらず、ファッションや住居に投資するのと同じくらいの気力で投資して欲しい。良い寝具はすぐにはその効果は現れないが、気づかぬうちに体と心を休ませる効果を増大させてくれるのだ。


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