やはり柔らか枕が好き (No.1413〜1414 1999/05/17〜18掲載)


 最後に枕の話を書いたのは低反発ウレタンを使ったテンピュール枕の時で、99/09/08(No.1162)〜 99/09/10(No.1164)「気になる枕」である。このときに購入したテンピュール枕であるが、私に言わせればダウンピローに次いで寝心地がよい。我が家ではこれを「爆睡枕」などと読んでいるが、その性能はまさにニックネームの通りの代物である。

 店頭で手に取るとクニャクニャしていて、指で押してへこんだ部分は通常のウレタンのようにすぐに戻らず、じっくりやんわりと元に戻る。手で触ったり掴んだりしていると非情に柔らかではあるが、実際に頭に宛ててみると手の官職とは反対にかなり堅いのである。さほど減速することなく頭を枕に落とすと結構痛くて頭にガンと響く。寝心地は良いのだが、やわらかな枕に埋もれるのが何より好きな私の好みではないというのが正直なところだ。肩や頸がこっているときは良いが、それ以外のときにはあまり使おうという気持ちにならない。やはり私にとって最良の素材は、やわらかなダウンを使ったダウンピローである。

 私が枕にこだわり始めてからかなりの年月が立つが、今だかつて良質なダウンピローが販売されているのを日本では見たことがない。アメリカ(ハワイ)でもスーパーに置いてあるのは、ポリエステル綿(ダクロン)や、ダウンとフェザーをミックスしたローコストなタイプであるが、デパートのベッド用品売り場に行けばちゃんとダウンだけを使った枕を売っている。価格にすると使っている羽毛の質や量にもよるが、店頭や通信販売でU.S.$70〜$100程度(20インチ×26インチのスタンダードサイズの場合)であろう。しかしこれが日本では一般の寝具店やデパートでは絶対といって良いほど売っていない。良くてダウンとフェザーが50%:50%程度のものだが、その品質は非情に怪しい物だ。多くの場合はスモールフェザー100%という粗悪なものが、一万円近くで売っているのだから飽きれてしまう。まさに暴利をむさぼっているといってもよい。

 とにかく、私が好きなのは、頭を乗せるとふわりと沈み込み頭がやわらかなダウンに埋もれるような枕だ。それも小さい物ではなく、横に長いキングサイズが好みだ。キングサイズというのは20インチ(約56cm)×36インチ(約91cm)というものだ。サイズだけいえば二人で一つの枕を使うらしいダブルサイズ(約120cm)という奇妙なものが日本にはあるが、あれは頭を乗せる枕としてはクズだし、抱き枕にするには短すぎて役に立たないというどうしようもない代物だ。

 キングサイズというと大きすぎるように思うが、実は幅36インチというのは、中身のダウンがふっくらと入った仕上がり寸法で行くと、日本のシングルサイズの敷布団やシングルベッドの横幅にほぼジャストフィットなのである。これにどういうメリットがあるかというと、寝返りをうって布団(ベッド)の端に頭がきてもほぼいつも枕があることになり実に都合がよい。特に寝返りをうって横向けになり、体が布団の端よりにきたときに枕がないのは最悪である。横向けに寝るときには絶対に枕が必要なのだ。

 キングサイズに似たようなサイズとしては日本ではベッド用と称しているサイズのセミダブルサイズの枕がある。あれは50cm×90cm(通常は50cm×70cm)と、サイズはよいのだが中身が屑の屑である。半蕎麦だとか半パイプだとか反発力の強いありふれたダクロンだとかそうしたものしかないのだから、結局は私にはそんな屑枕は存在しないのと同じだ。やわらかでふんわりと頭を包むダウンの感触、頭の動きにあわせてダウンが泳ぎ適切に頭と頸を支えてくれる。この快感はダウンピロー以外にはありえない。

 とにかく、そんなわけで日本のデパートや寝具店では、ホワイトグースのダウン(whitegoose down)だけを使った、私好みの柔らかでふんわりした枕は入手不可能である。いろいろな合成素材を使ったギミック(gimmick:一口で言い表せる適切な日本語が見当たらないが、要するに人目をひくPR戦術とかトリックとか宣伝のための企画とか、そうした意味だ)的な珍妙な枕ばかりが目に付いてしまいろくなものがない。私の目には付加価値というものをはきちがえて妙なギミックだけをもりこんで価格を上げたものにしか映らない。

 では、日本以外の国ではダウンピローは購入しやすいのだろうか。手近なところでWebの検索サイトを使って探してみるととても沢山の寝具の通信販売サイトがひっかかる。YaHoo (http://www.yahoo.com/)やAltaVista(htt://www.av.com/)、MSN(http://www.msn.com/)などで、キーワードに"down"、 "pillow"、"standard"、"queen"、"king"などをAND検索で指定してやると、かなりよいヒット率で釣れるし、そのほとんどは日本への通信販売もひきうけてくれる――ただし、送料はU.S.$20程度で$100ととんでもない金額を要求するところまでさまざまだ。商品を決めて送料を尋ねれば(電話でもメールでもどちらでもよいが、アメリカの会社なら当然英語に限られる)調べて 教えてくれる。

 どうやら、私が今後新たに枕を買ったり、買い換えたりする購入先は米国かカナダのショップしかありえないようだ。


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