トランプ流交渉術

トランプ流交渉術

大統領選挙の時から物議をかもしだしてきたトランプ氏が大統領になって二週間。

ニュースを読んでいる/見ていると、トランプ氏の破天荒ぶりはすごいものがあります。

いろいろ、批判はされていますし、何をするか分からないと言われていますが、よーく見ていると、そして彼が今に至る歩みを見ると、実はトランプ氏としては、常に同じやり口で自分を取り巻く周囲と対峙しているのがわかります。

忘れてはならないのは、彼はWin-Winの関係を築くいうネゴシエーションの基本のキを完全に無視して競合を薙ぎ倒し、食うか食われるかで命をかけて今の不動産王の地位を気づいたわけです。そう考えると、日本を含め世界のトップ・それを取り巻く完了たちは、同じ政治家を相手にしていると思うとかなり痛い目にあうのは間違いないと思われます。


最初にぶちのめせ!

トランプ大統領は、相手が各国のトップであろうが誰であろうが、とにかく最初に相手に喧嘩を売る・ぶちのめす。その後で、頃合いを見計らって少し柔らかな態度で、相手と話をする。最初の一発のパンチで怯んだ相手は、次に柔らかな態度で望まれると、つい相手の懐に入ってしまう。もろに術にハマるわけです。

ふっかけろ!

値付けの基本は、誰でもわかっているように値切られるのを勘案してふっかける。だがトランプ氏はこのふっかけるのがめちゃ高いようです。例えて言えば5億円で売れればいいかなと思っている不動産なら、20億円からふっかける。この最初にふっかけた額が今後の交渉のベースとなる。これがトランプの場合は半端なく高いというか、交渉においてはでかい。例えば、メキシコとの国境全部に壁を作り費用はメキシコに払わせる!とでかくでる。これはふっかけであり、理論的に考えてそんなことが出来るわけもないのですが、とにかく破天荒で相手がそのボールを取れるかどうかなんか気にしないで、ふっかける。当然、そんなものを受け取れないと相手は言う。ならば、少し値下げして、これならどうだ?いやだめだ、まだ高い!これを繰り返して、いつの間にか相手は合意してしまう。それが先の例でいえばいつのまにか10億円で契約している。売り手のトランプ氏は腹づもりの二倍で売れてほくそ笑む。

ハッタリをきかせろ!

高く売る基本は、複数の買い手を競り合わせること。これは商売の基本です。トランプ氏もそれに忠実なのですね、これが。本当の買い手は一人しかいないのに、いかにも他にも欲しい相手が居るように見せかける。オークション禁じ手のサクラの入札者を用意するとようなものです。どう考えてもNGなんですが、トランプ流の商売は自分が儲かれば良い、正しい・間違っているの基準は世間一般ではなく、自分が儲かるかどうかということに限られます。このやり方が今後の外交でどのように出てくるか見ものですが、中国を睨んで台湾に擦り寄る(ように見せかける)のも相手を苛立たせる手口です。交渉では苛立ったほうが敗けです。

絶対に弱みを見せない!

彼のTwitter砲撃を見ているとよくわかりますが、とにかく攻撃しまくる。自分に対する批判ももろともしない。何も話題にならないより、ネガティブであれ話題になるほうを取る。それが後々の交渉に役に立つ。常に強面で交渉に望むためにネガティブな評価は重要ですらあります。相手になめられないために必要なこと。目には目を、やられたら二倍・三倍でやり返してぶちのめせ、です。



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安倍首相は見透かしている?

こうして見ると前述の手口が選挙中から使われているのがよくわかります。日本は自国の防衛に関しておんぶに抱っこであり、全額負担すべきであり、さもなければ米軍を引き上げると言っていました。まあ、地政学的には今の中国の姿勢を考えるとあり得ないわけですが、駆け引きになれていない日本人政治家は大騒ぎ。このまま騒いで恐れるとトランプ氏の思う壺。

ここで気になるのが安倍首相へのトランプ氏の態度。各国のトップに対して、仲間であるオーストラリアに対してまで最初に牙をむくのは前述のとおりのやり方。

しかし、安倍首相に対しては今のところ直接攻撃姿勢を見せていません(日本の自動車市場とか製薬市場には牙を向いています)。これをどう解釈するか。

実は安倍首相はトランプ氏を非常によく研究し、彼のやり口を見抜いているのではないかと想像します。彼のやり口にハマらないためには、最初の一撃やふっかけに無反応でポーカーフェイスであること。彼が何を言おうが騒がない。入国規制に対しても日本人が規制を受けるのではない限りポーカーフェイスを守る。

日本人は外国人から見ると顔がないといわれます。誰と交渉すれば良いのかわからない、集団で交渉の場に出てくる、ネゴする相手が沢山居る。

これを安倍首相はうまく使っているように見えます。トランプ氏が日本に対してどうするのか戸惑っているのを見透かして、相手のペースを無視して安倍ペースで望む。トランプ氏は自分流の乱暴なやり方が通じない相手に困惑している。

そんな状況に思えます。

基準は支持者の利益

トランプ氏の交渉における判断基準は、今の大統領の立場では支持者に利益があるかどうか、この一点だけです。他国がどうなろうが、そこには関心がない。だからアメリカファースト。この言葉はトランプ氏支持層には心地よく響きます。アメリカファーストに反抗する奴らは売国奴であり敵ですらある、この感情をトランプ氏は上手く利用しており、逆に彼らが反旗を翻す時が自分の終わる時なのもよく分かっています。だから、何があってもアメリカファースト、世界との強調は二の次、協調することで支持者(=アメリカ国民全部ではないことに注意)に利益があるのなら協調する。利益がなくなれば即手を切る。ビジネスとして考えれば、痛手を被らなうちに切るのが当然ですから。

トランプ氏と交渉する上では、自分がどれだけ頑張っているかなんか説明するだけ無駄なので、そんなことはやめたほうが良い。そういうのは論理的に話が通じる官僚や側近相手にすれば良い。トランプ氏と対峙するときには、自分の案を採用することで、貴方の支持者にはこれだけのメリットがある、他社(他国)の提案ではここまでのメリットはあなた方には出ない!これを言い切れば、交渉がうまくいく可能性があります。ただし、メリットが継続しなくなったら即手を切りに来るでしょう。

自動車は根深い

ただ、自動車は違う。これは理屈ではなく、好き嫌いの問題。100%米国内で部材調達し労働力を調達しても、TOYOTAの銘柄である限り、憎むべきNIPPON車。そのような感性がまだまだアメリカ人にはあるようです。論理的にはどう考えてもアメ車でも、ブランドがTOYOTAなら憎むべき敵の車です。そういう国民感情の底流を上手く利用しています。なので、普通に対応しても勝てません。

日本市場は閉鎖的というがそんなことはない。ドイツ車はそれなりに売れています。それは彼らが日本市場や国民の嗜好を研究し市場開拓して、それに合う商品を投入しているから売れる。

一方、アメリカの自動車メーカーはそんなことはない。六本木にメルセデス・ベンツのひどくおしゃれでカフェ併設のショールームがありますが、そんなのフォードやGMで見たこと無い。

しかしその理屈は通じません。日本市場は閉鎖的であると叩き、支持者の感情を煽り売価を釣り上げるのが目的なので理屈はどうでもいい。ありえない話ですが、仮に日本政府が国内販売の30%をアメ車市場に開放し販売を保証するとかいうと、多分トランプは納得するか?いや、しません、100%アメ車で占拠しない限り納得しないし、支持層を納得させられない。

だから、自動車に関する限りはトランプ政権の間は合意点はあり得ない。自動車については、トランプ政権の間は貿易戦争状態が続くのはやむを得ない。その結果、日本車メーカーは米国市場でかなりの痛手を負う可能性が高いといえます。根源が数字の理屈では好き嫌いという感性の問題にあるので論理的解決は非常に困難です。

日本のメディアは偏っている

安倍首相は冷静で相手の挑発に乗らずに沈着冷静です。しかし、メディアはアメリカメディアと同様に大騒ぎ。これもトランプ氏の狙いの一つでしょう。各国のメディアにtweet砲撃をして追い打ちをかける。仮に彼が何と言おうと、どんな大統領令を出そうと、騒がず無視していれば、彼としても今までのトランプ流が通じなくて戸惑うでしょう。とまどいを見せるのは、トランプ流交渉術では敗北を意味します。

もう少し、トランプ氏を分析した報道もあって良いのではないでしょうか?記者を非難するときにトランプ氏は「You」といっただけですが、日本のメディアで「貴方」と訳したところは少なかったのではないかしら。下手すると「オマエ」とか翻訳していたりして、ステレオタイプを作り上げる手助けをしています。メディアがこういう放送を繰り返すのもトランプ氏の狙いでしょう。

ともあれ、今後どうなるのか、トランプ氏の言動から眼が離せません。



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