8月31日、セブン&アイ・ホールディングスはグループ傘下の百貨店「そごう・西武」を9月1日付けで投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に売却すると決定しました。百貨店は全国で閉店が相次いで、売り上げも減少している業態。今の時代において百貨店という業態が適しているのでしょうか?
百貨店のかげり
EC台頭による消費行動の変化
日本の消費者の消費行動を変えたきっかけの一つにAmazonを筆頭とするECビジネスの存在があるのは間違いありません。
もちろん全ての年代でECが受け入れられているわけではなく、デジタル・ITの活用に全く抵抗がないどころか生まれた時からデジタルに囲まれている世代から見れば、ECサイトでお買い物をして自宅に届くのはごくごく当たり前のことです。
一方中高年とざっくり呼んで良いかどうか疑問は残りますが、とにかく中高年以上でデジタル・ITに縁のない方はECにも縁がないわけで、買い物といえば地元のお店かスーパー、あるいは百貨店になるようです。
昭和40年代の百貨店
筆者が子供ころですが、百貨店といえば「ちょっとよそ行きを着るおでかけ先」だったように思います。
子供の頃は百貨店の食堂というのが楽しみの一つだったように思います。滅多に連れて行ってもらえないだけにゴージャスなイベントに感じました。
それから昭和が終わるまでは百貨店はまだまだ元気でありまして、高級ブランドや宝飾品、家電製品定価販売、高級家具販売など今から思えば考えられないようなものを販売していたのですが、それは家電量販店や家具量販店もほとんどない時代でしたのでまあそうでしょうねと思います。
さすがの百貨店もこれは理解していたようで、家電量販店や大型家具量販店が出てくることによりこれらの売り上げは激減し扱い品目から外れていきました。
データで変化を見る
日本百貨店協会のデータを見てみましょう。
売上高推移グラフ(データ出典:日本百貨店協会、グラフ化は筆者)
データが公開されている2008年と2022年を比較します。
2008 | 2022 | 2008年比 | |
売り上げ(千円) | 7,381,364,215 | 4,981,230,097 | 67% |
社数 | 91 | 71 | 78% |
店舗数 | 280 | 185 | 66% |
総従業員数 | 101,466 | 54,321 | 54% |
総売場面積 | 6,818,712 | 4,840,472 | 71% |
コロナの影響で2020年は激減しその後回復傾向にありますが、店舗数は三分の一、総従業員数は半減、総売場面積も三割減になっています。
今でも利用する売場は?
消費者として現在の百貨店で買いたいものは何があるでしょうか。
食品売場
いわゆるデパ地下。これは不滅の人気を誇るわけで、地元や全国の有名店の菓子や惣菜からお弁当に至るまでワンストップで買えるのはデパ地下以外にはなかなかありません。
筆者も百貨店に行った際には、買う買わないは別にして必ず立ち寄ります。
スーパーのお惣菜売場よりは単価があがりますが、スーパーでは買えないお惣菜や菓子が買えるのが大きなメリットです。
コスメ売場
女性の場合は、やはり百貨店の化粧品売場が魅力なようで、妻に聞いてみると海外ブランドとか国内の高級品などはやはり百貨店になるようです。
日常的に使うものは、地元の化粧品店とかショッピングセンターのコスメコーナーなどのようです。
中高年女性向けの洋服・靴・バッグ
男性の立場では全く気づかなかったのですが、ショッピングセンターに入っているレディース衣類や靴・バッグなどは若い女性ターゲットであり、いわゆる妻のようなオバサン世代は眼中にない品揃えなので買えるものがないそうです。
その点、百貨店の洋服や靴、バッグはギャルではなくワーキングウーマン〜中高年をターゲットにしている品揃えだそうで、それはそれで中高年のご婦人は百貨店の洋服売場などが無くなると困るそうです。
男性の場合、お金持ちの人は別とすれば百貨店の高いスーツを買うような贅沢はしません。昔はセールのときにイージーオーダーを作っていましたが、それもピーク時でも2年に1度程度でしょうか。
負のスパイラル?
少なくともファッションに関して若い男性・女性は百貨店で買うものはほとんどないそうです。
客が減ると店舗が減り品揃えが減る。そうなると魅力が無くなるので客が減るという負のスパイラル。
都心の百貨店は駅直結が多く集客力は抜群なので百貨店から複合商業施設に変わりつつあります。
店内の1フロア全部に家電量販店が入ったり、家具生活雑貨のニトリが1〜2フロア入ったり、ユニクロが入ったり、ダイソーが入ったりするようになりました。その結果として若い年齢層の客が増えてきたそうです。
そごう・西武の売却により池袋西武にヨドバシが入る可能性が濃厚になりました。
反対する声は多いですが、旧態依然たる高級イメージでは商売は成り立たない時代です。高級ブランドが並ぶ銀座ですらユニクロやダイソーがオープンする時代です。
池袋西武の今後の業態がどうなるか見物しましょう。
ただ開業したのは1940年で途中増改築しているとはいえ60年以上経過した古い建物です。駅と一体化しておりさらに北はPARCOと繋がっているため、解体もままならないように思います。
そんな中でも新宿西口エリアでは小田急百貨店を筆頭に今後は京王百貨店も解体再開発になるそうです。東京駅周辺は再開発のスピードがものすごくて街が激変しています。池袋エリアは完全に置いてけぼりを食っている気がしますし、防災上も新宿同様に見直し時期にきているのではないでしょうか。