Samsung DeXとは何か
Samsung DeXとは、Galaxy端末を大画面で使用するためのデスクトップモード機能です。スマートフォンやタブレットを外部モニターに接続することで、PCのような操作環境を実現できます。有線接続・Wi-Fi接続両方に対応しており、キーボードやマウスなどのアクセサリーを同時接続することで、DeX画面上での快適なナビゲーションが可能です。
筆者はGalaxy S25 UltraでSamsung DeXを使い始めました。結構便利ですがトラブルの壁にもあたりましたので、その対応方法もあわせてお伝えします。

Samsung DeXのメリット
1. PCライクな操作性
リサイズ可能なマルチウィンドウ表示、タスクバー、複数アプリの同時操作などが可能で、PCで行うような作業などをPC不要で行うことができます。
2. ワイヤレス接続にも対応
USB Type-C(DisplayPort v1.2 over USB、DisplayPort Alt Mode)で外部モニターと接続します。Miracast対応のテレビやモニターであれば、Wi-Fiによるワイヤレス接続にも対応します。ただし遅延が発生することが多いようです。
3. 柔軟な入力デバイス利用
マウスはBluetoothやUSB接続のキーボード・マウスを使用しますが、マウスがなくてもGalaxy端末をタッチパッドとして利用できます。
4. 旅行時のラップトップ代替
ホテルのテレビで利用者がHDMI接続やDisplayPort接続を使えるようであれば、ノートPCがなくても、Galaxy端末と折り畳み式の携帯キーボードがあれば、PCライクな作業をこなすことができます。
効果的な活用方法
PC代替としての使用
PCがあるならPCを使えばいいじゃないか、という声が聞こえてきそうです。
最近はかなりの調べごとやオフィス業務、勉強などをスマートフォンで済ませている方も多いのではないでしょうか?
外出時はスマートフォンで作業を行い、自宅に帰るとPCを使う。これは自然な流れではありますが、一部のことはデータをPCに移動して作業をする必要が出てきますし、スマートフォンでしか動かないアプリで作業をしていることもあります。Samsung DeXならば心配無用です。

モニターやTVに接続することで、より大きく鮮明な画面でDeXのデスクトップを利用できます。ExcelやPowerPointなどのオフィスアプリの利用にも最適です。数多くのメール処理であっても、マルチウィンドウや大きな画面での読み書きができるため作業効率が格段に向上します。
Microsoft Officeアプリを複数開いて、それらを参照しながら修正するというのは、スマートフォンだけではかなり無理がありますが、DeXではPCライクなマルチウィンドウが使えるので問題なく対応できます。そのためにPCを持ってきてあるいはPCのところへ行って、スマートフォンからデータを移して作業し、終わったらスマートフォンに戻すといった煩雑な作業は無用になります。
プレゼンテーションでの使用
スマートフォンの画面を映すならミラーリングでいいじゃないか?という疑問もあるでしょう。しかし、ミラーリングは手元のスマートフォンと大画面に映す画像は同じものになります。聴衆に見せてはいけない資料をその画面で見ることは不可能です。
DeXを使えば、手元のGalaxy端末にはそうした資料を出しておいて、大画面にはプレゼン資料だけを映すことが可能になります。
ディレイの問題に注意が必要ですが、ワイヤレスDeXを使えば手元のGalaxy端末でプレゼン関連資料や進行表を見ながらプレゼンし、大画面にはプレゼンテーション資料だけを表示することも可能です。これにより、プレゼンター(発表者)はPCの場所にとどまる必要がなく、聴衆のほうに歩いて行ったり、身近で反応を見ながら効果的なプレゼンテーションが可能です。
ARグラスとの併用
DeXを使えば大画面でスマートフォンが使えるようになる、とはいえ、自宅や職場はともかく移動先や移動中にモニターがなければDeXを使えません。そのためにモバイルモニターを持ち歩くのは本末転倒です。
そこで登場するのが「XREAL Air 2 Pro」というARグラスです。これは接続がUSB Type-C(DisplayPort Alt Mode)でPCやスマートフォンと接続します。
あいにく筆者はまだ試していませんが、これであれば持ち歩きが不便なモバイルモニターなども不要であり、本当にARグラスとケーブルとDeX対応のGalaxyがあれば、どこでも大型デスクトップ環境が手に入ります。プレゼンテーションには使えませんが、ノートPCより機動性が高いかもしれません。
これは財布に余裕ができたらぜひとも使いたいです。DeXだけではなく映画鑑賞にも魅力的です。
有線接続時のカーソル遅延問題
有線接続では接続方法により、カーソルの遅延が発生します。
すなわち、マウスの動きにカーソルが敏感に反応しない、ほんのわずかに遅れて追従するわけです。PCやMacであれば、マウスの動きに瞬時に反応しますので、これはすごく違和感があります。細かい場所をポインティングしようとするとなかなかうまくいきません。
これは相当ストレスです。
だから「DeXは玩具だ、使えねぇ!」というのは早計です。ちゃんと対策があります。
まずは遅延が発生する原因が何かを考えましょう。
ドッキングステーション経由の接続では遅延する
筆者は現在4K60pで使っていますが、モニター(4K)との接続によってはカーソル遅延が発生します。
カーソル遅延が発生する場合、モニターのOSD(On Screen Display)でリフレッシュレートを見ると4K30pになっています。カーソル遅延が見られない場合は4K60pになっています。
これはGalaxy端末がUSB Type-C Display Port v1.2 Alt Mode(DIsplayPort over USB)であることによる制約です。
ドッキングステーションを使えば、外部SSDでも外部モニターで接続OKと思いがちです。たしかに繋がるのは繋がるわけですが問題は速度です。
ドッキングステーションとの接続では4レーンあるUSB Type-Cの伝送路を2つずつに分け、2レーンを映像、2レーンをデータ転送に使用します。その結果、データ伝送はUSB 3.2 Gen1の理論値5Gbpsが上限、映像は約10Gbpsが上限となり、映像では4K60pが通らないため、Galaxy側で自動的に4K30pに落とします。
結果的に、ドッキングステーション経由接続ではDeXは4K30pが限界であり、4K表示だとカーソル遅延が発生しひどく使いづらいものとなります。
対策はドッキングステーション経由接続不可・HDMI接続不可
原因がドッキングステーション経由接続であれば、話は簡単です。
Samsung DeXでカーソル遅延を起こさないためには、Galaxy端末とモニターのDisplayPortと途中に何も挟まないで直結すれば良いのです。
この場合、Galaxy端末側は、DisplayPort Alt Modeの接続のみでありデータ伝送の必要がないので、4レーン全てを映像伝送に使用しますので、4K60pが使えるようになります。
4K30pではカーソル遅延が出て非常に使いづらいですが、4K60pですと普通のPCと同じで全く違和感なく普通に使えます。
モニター側をHDMIにすると、DisplayPort→HDMI変換が必要になります。Galaxy端末のDisplayPort Alt Modeでは、アクティブ変換とよばれる変換チップ内蔵のものが必要になりますが、この信号変換が行われるため遅延が生じるのは不可避といえます。
すなわちGalaxy端末でDeXを使う場合は、使うケーブルや変換器を問わずHDMI接続すると多少なりとも遅延が発生するということです。モニター側はかならずDisplayPortでなければいけません。
Samsung DeXで4Kを使う方法
標準提供のGalaxyではFHDまでしか対応していませんが、以下の手順を踏むことで「対応機種」であれば4KやWQHD表示が可能になります。
解像度:
・FHD:1920 × 1080
・WQHD:2560 × 1440
・UHD (4K):3840 × 2160
条件:
・モニターが4K対応であること。
・Galaxy端末とモニターはハブやドッキングステーションを挟まずに、必ずDisplayPortケーブルで直結すること。
・モニター側はHDMI接続を使わないこと、カーソル遅延が発生する場合があります。
手順:
[1] Galaxy StoreからGood Lockをインストールし、さらにその中の「MultiStar」をタップします。
[2] MultiStar の設定で「I ♡ Samsung DeX」を選びます。
[3] I ♡ Samsung DeXの設定で「外部ディスプレイの高解像度表示」を有効にします。これにより、DeX での4K解像度表示が利用可能になります。
[4] モニターのDisplayPortにドッキングステーションを挟まずにGalaxy端末と接続し、DeX 設定画面から表示解像度を4Kに切り替えることが可能になります。 
注意:
どの機種が4Kまで対応できるのかの公式情報はありません。少なくとも筆者のGalaxy S25 Ultraでは可能ですとだけ書いておきます。
給電しながらDeXで4K60pを使う方法
先の方法では、確かにカーソル遅延が発生せず、快適にDeXを4K60pで使用できます。
しかしGalaxy端末には給電されていませんし、普通の状態よりはバッテリー消費が多くなるのが普通ですので、使えば使うほどバッテリーが心配になります。
必要なのは、「USB Type-C DisplayPort Alt Mode —> DisplayPort」のパススルーケーブルでUSB-C側へのPD給電がついているシンプルな変換アダプターです。
PD給電も同時に必要であれば以下の変換器が使用できます。
(Galaxy S25 UltraとPHILIPS 278Eモニター[DisplayPort])で筆者検証済み)
現在、筆者はこれを快適に使っています。
Samsung DeX活用法まとめ
Samsung DeXは、Galaxy端末を使ってPC環境を実現できる革新的な機能です。この記事で紹介したポイントをまとめると:
快適なDeX環境の構築方法
- 4K60p表示:Good LockのMultiStar機能で高解像度表示を有効化
- カーソル遅延解決:DisplayPort直結接続とし、ドッキングステーション経由接続を避ける
- 給電対応:PD給電付きDisplayPort変換アダプター使用
Samsung DeXの主要メリット
- PCライクなマルチウィンドウ操作
- 旅行時のノートPC代替
- プレゼンテーション時の柔軟な表示制御
- ARグラスとの組み合わせによる究極のモバイル環境
技術的なポイント
Samsung DeXで最高のパフォーマンスを得るには、DisplayPort Alt Mode対応のケーブルによる直結接続が重要です。HDMI接続やドッキングステーション経由では遅延が発生するため、本格的な作業には不向きとなります。
適切な環境を整えることで、Samsung DeXは真のPC代替環境として活用できる優秀な機能です。
参考情報
[旅路の部屋] Galaxy S24からGalaxy S25 Ultraに変えて実際に感じた違いあれこれhttps://aichanworld.com/wd/2025/08/04/galaxy-s25-ultra/
Samsung DeX公式ページ:
https://www.samsung.com/jp/apps/samsung-dex/
Good Lock公式情報:
https://www.samsung.com/us/support/mobile/what-is-good-lock/
DisplayPort規格詳細:
https://www.displayport.org/