OSMO Pocket 3用の小型外部マイクを探して落ち着いたのはZOOM H1 essential。実売1万円少々ですがX-Yステレオで32bitフロート録音が可能で、同時にUSBで外部に流すこともでき、OSMO Pocket 3などのUSB外部マイクとしても使えます。小型軽量で100gを切る軽さでVLOGにも好適
日本の音響機器の会社ZOOM
知らない人が多いようですが、オンライン会議のZOOMと音響機器のZOOMは全く別の会社です。
オンライン会議サービスを提供しているZOOMは「ズームビデオコミュニケーションズ(Zoom Video Communications, Inc.)」というアメリカに本社を置く米企業で2011年設立です。
一方H1 essentialを開発販売しているのは、東京都千代田区に本社を置く日本企業で正式社名は「株式会社ズーム(ZOOM CORPORATION)」であり、アメリカのズームビデオコミュニケーションズ設立はるか以前の1983年の創業であり、両社は全く関係ありません。
ZOOMの音響機器は日本国内のみならず世界で広く愛用されています。
- 創業:1983年
- 事業内容:音楽用電子機器の開発製造販売
- 海外販売先:130か国
- 海外売上比率:86%
32bitフロート録音とは?
録音時のレベル調整は不要
録音で一番神経を使うのはレベル調整ですが、32bitフロート録音では「原則として」レベル調整が不要です。
32bitフロート録音についての細かい説明は以下のTASCAMの公式サイトでの説明がわかりやすいと思いますので、興味ある人はお読みください。
これまでの主流はビット深度が24bitでありダイナミックレンジは約144dBです。大音量のコンサートでの最大音圧は110dB程度、飛行機の近くで120dB〜130dB程度といわれていますので、通常の録音であれば24bitあればレベル調整をちゃんとすれば歪むことは少ないでしょう。
それに対して32bitフロート録音はダイナミックレンジがケタ違いの1500dBほどあります。これだけのダイナミックレンジを必要とする音というのは地球上には存在しない理論上だけのものです。
とにかく一般ユーザー的には32bitフロート録音は、歪やノイズを気にせずレベル調整不要でマイクを適切に音源に向けてRECボタンを押すだけで良いのです。
後処理ではレベル調整が必要
レベル調整不要と言っても、それは録音レベルだけであり、最終的には24bitの通常の規格に落とし込む必要があるので、その後処理で24bitの限界やアナログ系の限界を超えて歪まないように調整する必要があります。これは逆に24bitで録音していれば必ずしも必要とはならない作業です。
こうしたポストプロセスで調整する場合のメリットはやり直しが効くことです。録音時のレベル調整だと失敗したら取り返しがつきません。
ZOOM H1 essential
スペック概要
今回購入したハンディレコーダーです。
ざっくりとスペックは以下の通り。
- X-Yステレオ、32bitフロート録音
- ステレオ/モノラル録音両対応
- マイク耐音圧:120dB SPL
- 3.5mmTRSのMIC/LINE IN(プラグインパワー対応)
- 3.5mm TRSのPHONE/LINE OUT(出力レベルの固定可能)
- サンプリングレート:44.1/48/96kHz
- microSD:最大1GBのmicroSDXC対応
- microSDへの32bitフロート録音と同時にUSBに出力可能
- USBマイク機能(48kHz 16bit)
- 電源:単4電池2本(ニッケル水素電池使用可能)
- 駆動時間:アルカリ電池10時間、ニッケル水素電池9時間
- USB給電可能
- USBフォイル転送はUSB2.0(規格上の最大値は480Mbps)
- サイズ:53.9 x 136.6 x 29.0mm
- 重さ:92g(電池含む)
本体写真
付属品は簡単なドキュメント以外は何もありません。
ケーブルや電池の類も皆無で、ウィンドスクリーンも付属していません。
コストを抑えるために、ボディは普通にプラスチックで、X-Yステレオのマイク部分も金属ではなくプラスチックです。安っぽさは否めませんが、それが故に電池込みで100gを切る軽さを実現しています。
ボタンも最小限でありまして、底部には1/4インチメスネジが切ってありますので、カメラの三脚などに固定できます。
逆に音響の世界で当たり前の3/8インチや5/8インチのネジには対応していませんのだ、マイクスタンドなどにつける場合は別途変換アダプタが必要です。
右側面はMIC/LINE INの3.5mmTRSジャック、USB給電兼USB出力のUSB-Cジャック、MENUボタン、microSDスロット(カバー付き)。
前から見るとX-Yステレオマイクが交差するように配置されています。
左側面はPHONE/LINE OUTの3.5mmTRSジャックおよびその出力調整ボリューム。この出力をアナログ出力としてカメラやPCなどに接続する場合は、メニューからの操作で出力を固定にすることでボリューを触っても出力レベルが変化しなくなります。
正面のパネルとボタンはシンプルです。
電源ONにすると、LRの波形が動き出しますが録音しているわけではありません。録音するには中央の赤いボタンを押すだけでありまして、録音中はその上の赤LEDが点灯します。
DJI Mic 2やRODE Wireless Go II等のワイヤレス送信機との違い
DJI Mic 2やRODE Wireless Go IIの送信機はワイヤレスマイク送信機であると同時に、内部ストレージに32bitフロート(DJI Mic 2)や24bit(RODE Wireless Gi II)でモノラル録音することができます。
しかし、送信機の種々の設定はDJI Mic 2では送信機やペアリングしたOSMO Pocket 3あるいはOSMO Action 4から、あるいはスマホかPCから(RODE Wireless Go II)しか行うことができません。
どちらも電源は充電式ですが、H1 essentialは電池式(アルカリ電池やエネループ)ですので、新しい電池と交換するだけで長時間の録音も可能ですし、大容量モバイルバッテリーを使えば相当な長時間連続録音可能です。
録音可能時間は使用するmicroSDカードの容量次第です。
上の写真で45h49mと録音可能時間が出ていますが、これは64GBのmicroSDXCをセットしています。
ボタンを押すだけ!
しつこいですが、32bitフロートのメリットは録音時レベル調整が不要であり、レベル調整をしくじったがための録音ミスはまず起こりません。
そもそも録音レベル調整が存在しませんので、音源にマイクを向けてRECボタンを押すだけでOK。だれでも使えます。
VLOGなどのワンオペの動画撮影では、カメラや映像に気をつけねばならずマイクや録音レベルまで気が回りません。32bitフロートで録音することで、そうした負荷が一つ減るのは大変助かります。
VLOGなどであれば、これで環境音やテーマとなる音(鉄道の走行音とか)を撮って、ナレーションはDJI Mic 2やRODE Wireless Go IIあるいはワイヤレスピンマイクなどでカメラに飛ばすと良いでしょう。
(Yahoo!ショッピング)ZOOM H1 essential