iPhone 15 Pro/Pro Maxフル実装リグ、実際には使えない、その理由は?

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iPhone 15 Pro/Pro Maxメインカメラのイメージセンサーは1/1.28”という1”に満たない小型センサーですが、世間でも評判通り結構いいクオリティの動画を撮ることができます。凝ってくるとケージを買ってリグを組んでいろいろつけたくなったりします。しかし実際にやってみると良いことはないことがわかりました。

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iPhone 15 Pro Maxで組んだフルセットのリグ

iPhoneで高画質動画を撮るときに、ここがこうあれば….と思うのが次のようなところ。

・もっとストレージ容量が欲しい
・もっとバッテリー容量が欲しい

解決策は難しくないはずですよね。

・外部SSDをつければ良い(iPhone 15 Pro/Pro MaxのUSBは10Gbps対応です)
・モバイルバッテリーをつければ良い。

そして実際に試行錯誤の結果組んだリグがこちらです(下の写真)。

iPhone 15 Pro Max本体
モバイルバッテリー(CIO SMARTCOBY Pro 30W 10000mAh)
USB Type-C ハブ(Belkin Connect™ USB-C to 4ポートハブ AVC018btBK)
外付けSSD(SAMSUNG ポータブルSSD T7 2TB MU-PC2TOT/IT)

以上の4点をSmallRIgを中心としたケージや機材で一つにまとめたものです。

カメラレンズ側からみるとこうなります(下の写真)。

スマートフォンのくせに随分大袈裟になってしまっています。

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フルセットリグのデメリット

前述のリグは見た目はかなり大げさですが電源とストレージに余裕ができるから良い!と思っていましたが、実際につかってみるとデメリットのほうが多いことがわかりました。

デメリット1:発熱問題

最大の問題が発熱です。

動画撮影という高負荷なアプリを使いながら充電すると、CPUとバッテリーの両方のダブル発熱になり、熱に弱いリチウムイオン電池の寿命に影響を与えます。

モバイルバッテリーをつないで4K30pでApple ProResフォーマットで撮影するとめちゃくちゃ熱くなり、マジであっちっちです。

一般にスマートフォンの電力は充電器やモバイルバッテリーがつながっていようがいまいが、内蔵バッテリーから供給されます。すなわち、バケツ(=内蔵バッテリー)から水を汲み出す一方でバケツに水を補充する作業となっています。

SHARP AQUOSの最近のモデルは、設定により90%で充電を止めてそれ以降はダイレクト給電モードに切り替わり、充電器やモバイルバッテリーからの電力はバッテリーを経由せずに直接スマートフォン駆動用に供給される機能がありますが、iPhoneにはそんな洒落た機能はありません。

4K30pでApple ProResで取るとアプリによっては十数分程度で高温になりiPhoneが熱停止(熱暴走ではありません)しますが、内蔵バッテリーと内蔵ストレージのみの利用ではそんなことにはなりません。

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リグを組むためのパーツが多い

パーツが多いということは出かけるときに忘れるものが出てくる可能性が高いということ。

あれ?USBケーブルが一本足りない
あら?SSDのホルダーがない?

これ、あるのです、実際に…。まあ筆者がドジだといえばドジなんですがねぇ。

前日までにポーチなどにまとめて入れて準備をしているはずなのですが、抜けていることが結構あります。

リグを組むのが面倒

場合によってはミラーレス一眼のリグより面倒かもしれません。

(1) iPhoneをケージにセットする
(2) ケージにハンドルをつける
(3) モバイルバッテリーをホルダーに取り付け、それをケージに1/4”ネジで止める
(4) SSDをホルダーに取り付けてケーブルを取り付け、それをケージに1/4”ネジで止める
(5) USBハブをホルダーに取り付けて、それをケージに1/4”ネジで止める
(6) バッテリー・SSDのケーブルをハブに接続し、ハブのアップリンクケーブルをiPhoneに差し込む

さらにiPhoneがSIM無しカメラ専用に使っているならまだしも、常用端末と兼用であればメールやLINEの処理などが必要になると、ケージから取り出して….とか必要になりえらく面倒なことになります。

給電無しでのSSDは事実上つかえない

SSDへの電力はiPhoneのバッテリーから供給されることになりますが、SSDによってはiPhoneが供給できる電力を上回る電力が必要となり、USBの電力サージとなり全く使えません。

iPhoneからの電力供給が間に合ったとしても、SSDをつけた時のiPhoneのバッテリーの減り方は尋常ではありません。恐ろしい速さでバッテリーが減っていくので実用的とは言えません。
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撮影時にMagSafe充電併用はダメ

リグを組む時にモバイルバッテリーをUSB接続ではなくMagSafeにすればホルダーとケーブルがなくなるよね?

確かに筆者もそれを検討しましたが、このアイデアは2つの理由で却下です。

[理由1] 背面に貼り付けたモバイルバッテリーがiPhoneの放熱を妨げる
[理由2] iPhoneからの発熱(CPUと内蔵バッテリー)がMagSafeバッテリーにも伝わりモバイルバッテリーのダメージにつながる

一見良さげですが、実際のところ良いことは何もないのでダメです。

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どうすれば良いか?

外部SSDなし、外部給電なしでやれば良いのです。

iPhone 15 Pro/Pro Maxは最低でも512GBストレージ、できれば1tBストレージの物を使うこと。

全てはストレージの余裕のなさに起因しているので、それをiPhone自力で解消するしか手はありません。

さらに欲張るならば、SNSや電話・メール・電子決済などに使うメイン端末でないほうが望ましいです。

カメラ用iPhoneはSIMなしでもOKです、というかむしろSIMを入れない方が良いです。継続的な費用もかかりませんし、撮影中に着信などで予期せぬことが起こるリスクを低減できます。

<バッテリー消費の測定例>
Blackmagic Camera Ver2.0でフォーマットはHEVCApple Log HDR、解像度は4K30p、ビット震度は10bit、クロマサンプリング4:2:2という状態で3時間30分長回しして、バッテリーは100%から40%になりました。実際にiPhoneでこんなに長回しすることはないのですが、SSDを使わなければ全然減りは少ないし、発熱も触ってあたたかい程度でした。

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シンプルにリグを組むのがベター

ケージとハンドルはあった方が撮影が安定しジンバルがなくてもかなり水平維持とブレが防げます。ケージ・ハンドルがあるとないでは全く違います。

冒頭のようなリグだと外部マイクをつける余地すらありませんが、バッテリーやハブ・SSDがなくなるとこんなこともできます(下の写真)。

これは32bitフロートで環境音をiPhoneと独立して録れるZOOM H1 essentialを左側につけて、右側にはワイヤレスマイクの受信機(RODE Wireless Go II)をつけたところ。

ビデオ撮影は映像だけではなく音も非常に大切な要素です。

これくらいならコンパクトですし、忘れ物も少なくなります。

ケーブルはWireless Go IIのこれ一本だけ(下の写真)。

Wireless Go IIの送信機(ラベリアマイク)のほうは、独立して本体だけでもICレコーダーのようにつかますので、究極はこれでもいけます。環境音はiPhone本体マイク頼りではありますが非常に身軽であり、これこそスマートフォン撮影(下の写真)。

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まとめ

iPhone 15 Pro/Pro Maxは高画質の動画を録れるが、ストレージの少なさをSSDで補うのは勧められない。

その理由は、SSDを繋ぐとiPhone本体のバッテリーが恐ろしく早く減り、それを補うためにモバイルバッテリーを併用すると、iPhoneの発熱が半端なくバッテリーへのダメージが懸念されるし、下手するとiPhoneが熱停止する。

快適に撮影するには512GB、1TBストレージのiPhoneを使い、外部SSDとモバイルバッテリー接続撮影はしないこと。


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