マットレストッパーとはベッドのマットレスの上に乗せて寝心地を改善するもので、ベッドパッドとは別物です。マットレストッパーでネット検索すると「へたったマットレス」の寝心地を改善するというものを見かけますが基本的は誤りです。この記事では寝具にはかなりウルサイ筆者が今回は低反発マットレストッパーについて解説します。
まとめ
本記事は長編ですので、最初に要点をまとめておきます。
・マットレストッパーは床の上に直に敷いてその上に直に寝るものではない。
・マットレストッパーはヘタったマットレスの補正はできないので、へたったマットレスは買い換えよう。
・マットレストッパーの上に直に寝ない、ベッドパッドとBOXシーツを被せて寝る。
・体への当たりが硬いと感じるベッドマットレスには低反発マットレストッパー。
・柔らかすぎると感じるベッドマットレスのは高反発のマットレストッパー。
・ウレタンの硬さ(N)・密度(D)・復元率(%)を確認するのは大切。
・低反発マットレストッパーでは密度30D以上、復元率98%以上が望ましい。
・低反発マットレストッパーとしては75N以下のほうがやわらかく感じて心地よい(好みではある)。
・マットレストッパーとしては厚さ4〜8cmが適切。
・マットレストッパーの寿命は長くても数年程度。
・予算は数千円〜二万円、これ以上高いのは無駄。
・1ヶ月ほど使わないと自分にあっているかどうかはわからない、最低でも半月は使え。
マットレストッパーの誤解
マットレストッパーという名前に馴染みがないかもしれませんが、ベッド歴の長い欧米ではごく当たり前のもののようで、amazon.comを見ると山のように出てきます。
ネットでマットレストッパーを検索すると「へたったマットレスの寝心地を改善する」と説明しているのもあるのですが、これは100%間違いとは言いませんが基本的には誤りです。
ECサイトで低反発マットレストッパーのレビューを見ると、暑いとかマットレスからずれるとかいったマイナスレビューを多くみかけますが、本質的な誤解があります。マットレストッパーは直接その上に寝るものではありません。
メーカーやECサイトではわかりやすいようにシーツやベッドパッドなしでモデルさんが横になっていたりしますが、実際にはそういう使い方はしません。
マットレストッパーで改善できること
ガチでへたったマットレスで何とかしたいと思うのであれば、この記事を読むのをやめて速攻でベッドマットレスを買い替えましょう。
寝心地改善の目的であれば、厚みとしては最低4cmで最大10cm程度、5〜8cm程度の厚みが手頃だと思います。
4cmより薄いとあまり効果がありませんし、10cmを超えるとベッドマットレスの良さが殺されてしまいます。
硬めのマットレスをソフトにする
店頭で試して納得して買ったベッドなのに、思ったよりいざ自宅で使っているとマットレスが硬く感じてしまい寝心地がどうも….というのをマットレストッパーで改善できる可能性があります。
- 仰向けや横向けに寝た時お尻あるいは腰の上部の窪んだウェスト部分が浮いていて起きると腰や背が痛い。
- 横向けに寝た時、肩が沈み込まず圧迫されて肩が凝ったり痛くなる
これらは本来沈んでしかるべき肩やお尻がしずまないために無用な負荷が体にかかっているからです。
ベッドマットレスを買い換えると結構高くつきますが、マットレストッパー追加であれば二万円以下でいい感じのものを買うことができます。
柔らかめのマットレスに適度な硬さと反発力を与える
こちらは少々難しいですが、どちらかといえば柔らかめで沈み過ぎを感じる(へたっているわけではない)マットレスで沈みを小さくして反発力を与えるのであれば、高反発マットレスがいいでしょう。
この場合、薄いと効果がでないので6〜8cm程度はあったほうが良いと思います。
マットレスの硬さを表すニュートン(N)も180程度以上あるとしっかりした反発力を感じると思います。
硬さと復元率と密度について
法律上の表示義務
ちょっとややこしいのですが、家庭用寝具のウレタンマットレスは家庭用品品質表示法で表示しなければならない項目が決まっていて、その中で寝心地に関係するのが「硬さ」であり、耐久性に関係するのが「復元率」です。
この内閣府令第一条12の二には「ウレタンフォームマットレス(ウレタンフォームの部分の最大の厚さが五十ミリメートル以上のものに限る。)」と明記されています。
つまり中身のウレタンの厚さが5cm以上のものは、すべからくこの法律で定められた項目である「硬さ(ニュートン、N)」と「復元率(%)」を品質表示タグなどに表示しなければなりません。
普通に考えて60mm以上の厚さのウレタン製マットレストッパーでは、ウレタン厚みは50mmを超えていますので、製品についている品質表示ラベルには「硬さ(ニュートン、N)」と「復元率(%)」が明記されていなければ法律(厳密に言えば「庭用品品質表示法施行令」)違反です。
ただしECサイトやカタログなどには表示義務はありません。
良心的なメーカーや業者は表示していますが、硬さや復元率をサイトに出していないメーカーも多いのが実態で、中にはメーカーに聞いても回答を拒否するところもありました。
厚み5cm以下のマットレストッパーでも、硬さと復元率を製品やECサイト・カタログなどに明記しているのは、メーカーの姿勢として良心的だとも言えます。
硬さ
JIS K 6400-2(A法)に規定する試験法により測定します。
製品から50×380×380mmの試験片を切り出して、φ200mmの加圧板で垂直方向に始めの厚さの70%ひずみ量まで押し込む操作を3回繰り返した後、直ちに始めの厚さの40%ひずみ量まで押し込み、静止後30秒経過した時の荷重を読み取る。
硬さ(区分・用語)については以下のように定義されています。
区分 | 用語(表示名) |
---|---|
110ニュートン(11重量kg)以上 | かため |
75ニュートン(7.5重量kg)以上110ニュートン(11重量kg)未満 | ふつう |
75ニュートン(7.5重量kg)未満 | やわらかめ |
復元率
○ JIS K6400-4(軟質発泡材料-物理特性の求め方-第4部:圧縮残留ひずみ及び繰返し圧縮残留ひずみ)の6・2・4に規定する測定方法により得た数値を、100から差し引いた残りの数値以下の数値(%)で表示する。
○ 復元率の表示値は、製品のバラツキ及び測定誤差を見込んで控えめにした「それ以下の数値」を出すことになっている。「復元率96%」のように記載し、「復元率95%以上」のような表示は適切ではない。
復元率がいくらでないと耐久性がないという基準はないですが、一般には95%以上はないと一年程度もしないうちにへたってしまうともいわれています。
ポイント マットレストッパーの復元率は98%以上あると、使い方や体格・体重によるが数年以上は使える可能性が高い。
95%はダメかというとそんなこともないですが、一般には95%よりは98%のほうがヘタリが来るのが遅いと言えます。
密度
密度は品質表示タグに書かれていることは少ない(書く義務はない)のですが、ECサイトの商品情報などには意外にデカデカと書かれています。
密度はマットレストッパーのウレタンについての単位あたりの重量で、35Dとか40Dとか表記されますがこれは35kg/m3、40kg/m3という意味です。
同じサイズ・厚みのマットレストッパーであれば、側生地の違いもあるとはいえ重いほど密度も高いといえます。
望ましい硬さ・復元率。密度
以上のことをまとめると、望ましい低反発マットレスは以下のような条件になります。
- 厚み:4〜8cm程度
- 硬さ:50〜75N程度(好みの差が大きい)
- 復元率:98%以上
- 密度:30D以上
低反発マットレストッパーの寿命
寿命に影響するのは復元率と密度です。復元率が95%を切っており密度も30D以下になると、1〜2年で重量がもっともかかる中央部分が凹んで戻らなくなってくる可能性が高いです。
だからといってそれらの数値が高いからといっても経験的には数年程度でお尻の部分が凹んで戻りにくくなります。そうなると寿命です。
寝心地レポート映像から来る誤解
CMやテレビショッピング、あるいはYouTube動画などで、マットレスやベッドで寝返りが打ちやすいとかいったものがありますね。
裸のベッドやマットレスに寝て、その状態で寝返りしやすいか否かというのは嘘ではないでしょうが、現実にはマットレスの上にマットレストッパー、その上にベッドパッドを乗せてボックスシーツを被せ、場合によってはその上に好みで敷きパッドを乗せて温度調整しやすくしたりします。
寝返りしやすさ・寝心地の良さというのはこれらの総和です。寝心地を決めるのはベッドだけ、マットレストッパーだけではありません。
裸のマットレスで転がってみて「ほら寝返り簡単!」というのは嘘ではないでしょうが、実際には裸のマットレスの上に寝るわけではないのです。
主な低反発マットレストッパー
筆者が今まで使ってきた低反発(1種類だけ高反発を含みます)マットレストッパーと、AmazonやYahoo!ショッピング、メーカー直販などで購入が容易で比較的多くのサイトで見かけるマットレストッパーを一覧にしてみました。
・メーカー直販価格で2万円未満のもの
・厚さは4cm以上10cm以下のもの
・低反発ウレタン限定(高反発と2層構造のものも含む)
マットレストッパーはなかなか試せるものでもないので、寝心地や寿命に大きく関係する「密度」「硬さ」「復元率」の3項目を記載しました。
・筆者が使っているものはその品質表示タグの数値
・メーカーサイト(メーカー直営ECサイトを含む)にあるものはその数値、見当たらなければメーカーに直接尋ねて得た回答の数字、どれもなければネットで見つけたその商品と思われる品質表示タグの内容から記載しています。
下の写真は以前筆者が使っていたニトリのプレミアフィット 低反発 7cmです。
それぞれの数字には「*」をつけて情報源を明記しました。
重要な情報なので当サイトでは確認できるデータだけを示しその根拠も提示しています。
表のサイズが大きいので横1024pxの画像にしています。
見づらい場合はこちらから横2048pxの画像にした表をご利用ください。
*1 中身素材であるエリオセルMFのマニフレックス社公式公開データ(https://www.magniflex.jp/about/index.html)
*2 GOKUMIN公式商品サイトの公開データ(https://gokumin.co.jp/products/mss-01)
*3 アイリス公式販売サイト「アイリスプラザ」商品サイトの公開データ(https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=7173527)
*4 メーカー窓口に問い合わせをして得られた正式回答
*5 じぶんまくら(ふとんタナカ)公式販売サイトの公開データ(https://jibunmakura.jp/products/detail/1556)
*6 じぶんまくら(ふとんタナカ)公式販売サイトの公開データ(https://jibunmakura.jp/products/detail/1555)
*7 アイリス公式販売サイト「アイリスプラザ」商品サイトの公開データ(https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=K517368)
*8 アイリス公式販売サイト「アイリスプラザ」商品サイトの公開データ(https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=K517373)
*9 ニトリ公式販売サイト「アイリスプラザ」商品サイトの商品Q&Aを含む公開データ(https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=K517373)
*10 Yahoo!フリマに投稿されていたニトリ プレミアF3 シングルの商品タグ写真より(https://paypayfleamarket.yahoo.co.jp/item/z322693864)
*11 GOKUMIN公式サイトに問い合わせた結果、他社への情報漏洩防止の点からという理由で開示拒否された。当該商品と推測される商品がメルカリに出品されており、その商品タグ画像(https://jp.mercari.com/item/m67724741931)の数字は硬さ65N、復元率99%とある
*12 ZINUS JAPANのカスタマーサポートに問い合わせて得られた正式回答
*13 ショップジャパン公式販売サイトの公開データ(https://www.shopjapan.co.jp/products/TRPR-00000/)
下の写真はGOKUMIN 高反発マットレストッパー(4cm)です。
寝心地は一月ほど使わないとわからない
正直にかきますが、ベッドやマットレストッパーに関しては1日、2日程度使っただけではその良さはわかりません。悪さについてはよほどひどい場合では一晩でわかるかもしれませんが…。
今まで低反発を使ったことがない場合、慣れるまでには長いと一月ほどかかります。1週間程度ではまだ体が慣れていませんので、良さは体が理解できないでしょう。最低でも半月、できれば一月ほど使ってから「自分にとって」合うか合わないかを判断すべきです。
粗悪品は別としてそうでなければ、製品の良し悪しではなく自分に合うか合わないかが基準です。したがって寝心地に関しての他人の評価が自分にも当てはまるという保証はどこにもありません。
実際に使う時の注意
冒頭に書いたように、下から[ベッドマットレス]>[マットレストッパー]>[ベッドパッド]>[BOXシーツ]という順に重ねます。
低反発マットレストッパーは調湿力はありませんので、ベッドパッドが重要になります。お勧めは厚すぎない羊毛100%のベッドパッドです。
羊毛はポリエステル綿と違って吸湿・放湿性に優れています。これがないと湿気がマットレストッパーの上面や下側に溜まってカビの原因になる可能性があります。
マットレストッパーは直接その上に寝るものではありません。
それでは良い夢を!