モバイルバッテリーの発煙・発火事故は後を絶ちません。NITEのデータベースにはモバイルバッテリーの事故が82件記録されています。これらを分析して、事故のリスクを少しでも下げるにはどうすればよいのかを理解しましょう。
この記事の元となるデータはNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構) https://www.nite.go.jp/ の事故情報を2022/07/15時点で「品名」を「モバイルバッテリー」で検索したものです。充電池全般やノートPCのバッテリーなどは含まれていません。記事中の表はNITEのデータを元に筆者が集計して表にしたものであり、表の著作権は筆者にあります。
事故の被害
事故といってもそもそもどういう事故が多いのでしょうか。
82件中52件が周囲焼損、12件が出火、なんと建物や住宅全焼が2件もあります。
これらを合わせると、何らかの形で焼けたものが66件で75%をしめます。
NITEに報告のあった事故の3/4は何らかの形で火を出して周囲を焼いている。さらに2件は建物全焼している。
おどろきますね、過半数が周囲を焼いたり火を出したりしているわけです。
事故製品はどこの製品か?
気になるのはここですね。
NITEの情報には製造事業者の報告があるものはちゃんと書かれていますが、それはごくごく少数です。
82件中61件が製造事業者が不明もしくは輸入事業者が不明となっており、74%すなわち3/4は素性不明のモバイルバッテリーということです。
さらに12件は輸入事業者が対応せず、2件は輸入事業者の協力が得られないということで、素性不明を合わせると75件(91%)が再発防止に至らなかったことになります。
一方でちゃんとホームページに社告を掲載して無償交換などの対応をした良心的な業者も6件あることを忘れてはいけませんが、全体事故件数の1割にみみたないものです。
事故の状況と原因
モバイルバッテリーの事故は、どういう状態のときに多発しているのでしょうか?
82件の事故中33件が充電中の事故で、うち23件はバッテリー内部が何らかの理由で短絡して発熱したものです。
車の車内に置きっぱなしにしていたものも6件あります。時期を見ると4月が2件、6月が1件、8月が2件、9月が1件と冬場ではなく日差しが強くなり車内温度が上昇する時期のようです。6件のうち製造事業者不明が5件、輸入事業者の再発防止措置なしが1件です。
リチウムイオンバッテリーの敵は高温であり、ダッシュボード放置などは論外として日が当たらないから後部座席のバッグでも良いだろうとかいうのもは間違いです。車内温度は50度を超えるときもあり、絶対に放置してはいけない環境になります。
モバイルバッテリー事故のリスクを下げるポイント
- 安さに釣られて聞いたことがないメーカーのモバイルバッテリーは絶対買わないこと。
- 買うならば、モバイルバッテリーでは定評のあるメーカー(ANKERなど)を買う。
<PR>
- 40度を超えるような場所(自動車の車内)などには放置しない。
- 無人になるところで充電しない。
- 充電したまま留守にしたり長時間放置しない。
- 充電完了後はすぐにケーブルを外して、異常な加熱などがないかを確認する。
- モバイルバッテリーの規格にあったUSBケーブルと充電器を使用する。
- USB TYPE-CオスからmicroUSBやLightningなどに変換するアダプタはUSBの規格違反で危険なので絶対使用しない。使うなら最初からmicroUSBやLightningのケーブルを使う。
- 使用に異常がなくても膨らんできたりしたら、メーカーに回収してもらう。
- 使用に異常がなくても使用頻度が少なくても目安で3年〜4年以上たった古いものは、メーカーに回収してもらう。
- 使用済みモバイルバッテリーを回収しないメーカーのものは買わない。
- 高いところから落とすなど強い衝撃を与えたものは使用せずメーカーに回収してもらう。
- 変形や凹みなどが認められたものは使わないでメーカーに回収してもらう。