商品化されているモバイルバッテリー用大容量充電池の種類
ここでは単純に、サイクル寿命、公称電圧、エネルギー密度、安全性、商品の種類について簡単に比較記載し、安全性優劣理由については記事が長くなりすぎるので触れません。これはまた別の機会に記事にしたいと思います。
三元系リチウムイオン電池(三元系)
- サイクル寿命:500回程度(一般的なスペック)
- 公称電圧:3.7V程度
- エネルギー密度:高い(小さな容積で大きな電力量)
- 安全性:強い衝撃や過充電、高温などで発熱・発火のリスクが高くなるため、BMS(バッテリーマネジメントシステム)という制御回路が非常に重要
- 商品の種類:非常に多い
リン酸鉄リチウムイオン電池(リン酸鉄)
- サイクル寿命:2000回程度(GREENHOUSE発表)
- 公称電圧:3.2V(ELECOM発表)
- エネルギー密度:中程度
- 安全性:熱暴走を起こしにくく非常に安全性が高い、内部構造が安定しているため、衝撃や過充電に対しても強い
- 商品の種類;非常に少ない(日本ではELECOMとGREENHOUSEのみ)
ナトリウムイオン電池
- サイクル寿命:5000回(ELECOM発表)
- 公称電圧:3.0V(ELECOM発表)
- エネルギー密度:低い=電力量の割に重い(今後に期待)
- 安全性:三元系よりは安全性が高いとされているが、リン酸鉄には及ばない
- 商品の種類;ELECOMが世界初の商品化
準固体電池
安全性の順番:
- リン酸鉄リチウムイオン電池
- 準固体電池
- ナトリウムイオン電池
- 三元系リチウムイオン電池
これらの中ではリン酸鉄リチウムイオン電池が群を抜いて安全性が高く、サイクル寿命の点でも有利だといえます。今後のモバイルバッテリーとしては最も有望です。
モバイルバッテリーを選ぶポイント
[1] JBRC加盟企業の製品であること(必須)
- 使わなくなって廃棄する時にJBRC加盟企業のものであれば、膨らんだりしていないかぎり回収拠点で回収してもらえますが、そうでないものは、JBRC協力店では回収してもらえません。
https://www.jbrc.com/member/member_list/ - JBRC加盟企業製ではないリチウムイオン電池であっても、居住自治体でリチウムイ
オン電池を回収してくれているところは良いのですが、筆者が住んでいる自治体ではリチウムイオン電池は回収していませんで、行き場を失います。 - 株式会社CIOでは、終了期限未定で自社商品を所定の方法で購入すれば、自社または他社の使用済みモバイルバッテリーを回収してくれます。1個かえば1個回収です。JBRC加盟企業製でなく、自治体回収対応がない場合は検討の余地があります。
CIO 自社製モバイルバッテリー回収サービス
CIO 他社製モバイルバッテリー回収サービス - 使用済みリチウムイオン電池でJBRC協力店や自治体で回収してもらえない場合は、自治体指定の廃棄物処理業者に有償で回収対応してもらうしかありません。これについてはお住まいの自治体のクリーンセンターなどの担当部署に確認が必要です。
[2] 安物は買わない(必須)
- 安物買いの銭失いどころか、発火による火災で「安物買いの家失い」になりかねません。物には適切な価格というものがあります。
- 古い製品で安くなっているからといって飛びつくのは絶対にダメです。古いものは設計上の安全面で不安があったりしますし、電池内部で経年変化を起こしている可能性もあります。
- 市販のモバイルバッテリーはほとんどが三元系リチウムイオン電池を使用しています。安全性を高めるためバッテリーマネジメントシステム(BMS)が非常に重要なのですが、格安のものはまともなBMSが組み込まれていなかったりするものもあり非常に危険です。
[3] リコール情報を確認(必須)
- 消費者庁のリコール情報を確認し、掲載されていないものを選びましょう。リコール対象商品は店頭に並ばない….と思うのは早計であり、そこは店の意識次第です。悪質業者であれば、仕入れたものは知らぬ顔で売ってしまえというのもないとは限りません。自己防衛あるのみです。
https://www.recall.caa.go.jp/
[4] Web通販は販売元が大手であること
- Amazonのマーケットプレイスは原則として使わない
エレコムやAnker Directなどの大手が独自にAmazonマーケットプレイスを開設している場合がありますが、そういうところはメーカー直販と同等なので問題ないでしょう。
マーケットプレイスの業者情報をみて、住所や責任者の名前を確認して、住所が海外(特に中国)だったりするものを買うのはやめましょう。日本の住所であってもマンションの一室だったりするので要注意です。 - ヨドバシカメラやビックカメラといった実店舗を持っている大手量販店が直営開設しているWeb通販を使うのがリスクが低いです。
- 楽天市場やYahoo!ショッピングでも出品者情報をよく確認し、その業者名でWeb検索して、ネガティブ情報を確認しましょう。これもマンションの一室だったりするのは要注意です。
[5] リン酸鉄リチウムイオン電池のものを選ぶ
- 現在販売されているモバイルバッテリーはほとんどが三元系リチウムイオン電池です。これはエネルギー密度が高く小型で大容量のものを作りやすいからで、リン酸鉄に比べて製造技術や経験も蓄積されているからでしょう。しかし、三元系リチウムイオン電池は一番安定度が低く発火のリスクが高い方式の電池であり、扱いには十分な注意が必要であるのは覚えておきましょう。
- 最近、ようやくリン酸鉄リチウムイオン電池採用のもの、準固体電池採用のもの、ナトリウムイオン電池採用のものが世に出てきています。なかでもリン酸鉄リチウムイオン電池は三元系リチウムイオン電池よりかなり発火リスクが小さいのが特徴で、現状では最も安全性が高いといえます。
日本企業の商品(三元系以外)
公称電圧はバッテリーの種類により異なりますので、単純にmAhでは容量比較はできません。バッテリーの容量は電圧[ V] × 電流[A] = 電力[W]で決まります。種類の異なる電池の容量を比較するにはmAhではなく電力量(Wh)で比較しなければいけません。
以下の情報では、各製品のWhと重量(g)あたりの電力量(mWh/g)を併記しています。単純にmAhの大きな物ではなく、容量(Wh)と重さ(g)のバランスが用途に応じて考慮すべきポイントとなります。計算上のエネルギー密度(mWh/g)も記載しました。
リン酸鉄リチウムイオン電池採用商品
今の所、ELECOMから2種類、GREENHOUSEから2種類出ているだけのようです。正確には磁気研究所(HIDISC)から発売されていますが、USB TYPE-CがPD対応出力ではなく5V/2.0Aという今時「?」な仕様なのでここでは紹介しません。
ELECOM リン酸鉄モバイルバッテリー(PD20W/C×1+A×1) 、310g、DE-C39-12000シリーズ、12000mAh / 38.4Wh、123mWh/g
ELECOM リン酸鉄モバイルバッテリー(PD45W+7.5W/C1+A1) 、760g、DE-C41-30000シリーズ、30000mAh / 96Wh、126mWh/g
GREENHOUSE リン酸鉄モバイルバッテリー GH-LFMBPA100シリーズ、210g、10000mAh / 32Wh、152mWh/g
GREENHOUSE リン酸鉄モバイルバッテリー GH-LFMBPA200シリーズ、375g、20000mAh / 64Wh、170mWh/g
ナトリウムイオン電池採用商品
ELECOMがナトリウムイオン電池を採用したモバイルバッテリー商品を発売します。
ELECOM ナトリウムイオンモバイルバッテリー DE-C55L-9000シリーズ、350g、9,000mAh / 27Wh、77mWh/g
準固体電池採用商品
磁気研究所(HIDISC)から発売される予定です。
HIDISC 準固体電池採用モバイルバッテリー HD4-SSMBTC30W10DSBK 220g、10,000mAh / 38.5Wh、175mWh/g
市販品一覧表
日本企業から発売されているリン酸鉄リチウムイオンバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、準固体電池を使用したモバイルバッテリーを一覧表にしました。

まとめ
モバイルバッテリーに使用している電池には、現状ではほとんどの商品が三元系リチウムイオン電池を採用していますが、最近は安全性が格段に高いリン酸鉄リチウムイオン電池が商品化されています。また準固体電池も発売が予定されています。
これらの中では一番安全性が高くサイクル寿命も長いのはリン酸鉄リチウムイオン電池なので、これから買うのであればリン酸鉄リチウムイオン電池のものを積極的に検討すべきです。
モバイルバッテリーは使用している電池の種類により内蔵電池の公称電圧が異なります。したがって単純にカタログやパッケージ表記のmAhでは比較できません。かならず電力量(Wh)に換算して比較しましょう。