はじめに
「持ち運ぶつもりでノートPCを買ったけれど、結局は自室だけで使っている」。
結構「あるある」の状況だと思います。
それならば自宅での据え置き使用を前提として、ノートPCとミニPC(小型デスクトップ)を比べ直す価値があります。本記事では、画面サイズ・キーボードの選択自由度、メモリやストレージの拡張性、維持費、周辺機器拡張性や追加コストという観点でやさしく整理し、最後におすすめの選び方も提案します。
<参考情報>
Calalysのレポートによれば、2024年10–12月の世界のPC出荷台数は、デスクトップPCが1,360万台、ノートPCが5,420万台となっており、圧倒的にノートPCを選ぶ個人・法人が多いことを裏付けています。
https://canalys.com/newsroom/global-pc-shipments-q4-2024
ノートPCの据え置き使用で考慮すべき5つのポイント

[1] 携帯性の価値
ノートPCの据え置き運用では、最大のメリットである携帯性という価値がほぼなくなります。一方で、本体画面サイズの大きさやキーボードのサイズ・テンキーがないことなどが制約になる場合があります。
特に画面サイズは重要で、ノートPCの13インチないし15インチ程度の小さな画面と、27インチ4Kモニターの大きな画面では、複数のExcelワークシートを開いたり、ブラウザを複数開いたりする場合は使い勝手と作業効率が全く違ってきます。
[2] モニターとキーボードの選択の自由
27インチ程度の4K外部モニターやキータッチやキー配列について好みのキーボードを選べるのはミニPCのメリットです。逆に言えば、それらは必ず別途購入が必要になるわけですが、好みのものを選べるという自由度が格段にあがります。
ノートPCでも外付けモニターやキーボードは使用できますが、それならば最初から自由度が高いミニPC+周辺機器が合理的な場合があります。
[3] 拡張性=延命のしやすさ
軽量薄型ノートはメモリやSSDは基板に直付けで増設不可のものがほとんどです。

ミニPCはSO-DIMMメモリやM.2 SSDといった汎用規格のパーツを使用しているのが普通であり、拡張スロットも設けられていて、必要になればメモリ増設やストレージ増設を行って延命しやすいのが大きな強みです。
[4] 安全管理
ノートPCはバッテリー劣化によりいずれ交換が必要になります。取り扱い(高温を避ける、適切な充電器の使用)にも注意が必要です。
気をつけて使っていても、内蔵のリチウムイオン電池は寿命がくると内部にガスが発生して膨らんできたりします。これは非常に危険な状態だといえます。
ミニPCにはバッテリーは内蔵されていないので、バッテリーの寿命や安全性を全く気にする必要がありません。
■重要な注意■ ノートPCは車の中に放置しない!
夏場に自動車内に置き去りにしたスマートフォンのバッテリーが高温により発火するという例がありますが、これはノートPCでも同じです。ノートPCは置き引き防止・高温発火事故防止のために絶対に自動車内に置き去りにしてはいけません。
[5] 修理費用
ハードウェア不具合が発生し保証期間をすぎて有償修理が必要になった場合、ノートPCではメーカー修理に出すしか手がありません。
ミニPCはノートPCのように、パネルの開閉など稼働部がなく、持ち歩きも少ないため物理的なダメージを受ける可能性は少ないといえます。
筆者は昭和時代からデスクトップPCを使っていますが、自分でパーツ交換できないような手に追えない故障に遭遇したことはありません。
ノートPCは自宅内とはいえ持ち運べるため、落下させてしまいディスプレイ破損など高額な修理費用支出を迫られる可能性もゼロではありません。小さなお子さんや猫を飼っているお宅では予期せぬ破損事故の可能性もあります。
メリット・デメリットの整理
- ノートPC据え置きプラン:
本体+外部モニター(必要なら)+ドッキングステーション(必要なら)+外付けキーボード/マウス(必要なら)+ 予備アダプタ・ケース等(必要なら) - ミニPCプラン:
本体+外部モニター+キーボード/マウス+. Webカメラ/マイク(必要なら)+増設メモリ/SSD(必要なら)
比較ポイント | ノートPC | ミニPC |
持ち出せるか? | ○ | × |
画面サイズや解像度の選択自由 | △(外部モニター追加) | ○ |
キーボードの選択自由度 | △(外付けで好みを選ぶ) | ○ |
拡張性(メモリ/SSD) | X〜△ | ○(SO-DIMMやM.2 SSDを増設) |
バッテリー性能維持 | △(いずれバッテリー交換が必要) | ◎(不要) |
バッテリー事故に対する安全性 | △(絶対ゼロにはならない) | ◎(バッテリーがない) |
PCを自宅や自室以外に持ち出して使うかどうかが分かれ道です。
持ち出す予定がないのであれば、まずはミニPCを選ぶほうが良いでしょう。少しでも持ち出すような使い方をするのであれば、いうまでもなくノートPCです。
実例で比較
実際にHPの製品での比較をした例を挙げてみます。
価格は2025/08/20時点の価格.comより引用です。
・メモリは16GB以上
・Windows 11はHOMEでもProfessionalでも良い
・ストレージは512GB以上
・モニターはノートPCは13インチ+外付け27インチ
・CPUはAMD
この条件で見てみましょう。
モニター:
PHILIPS 2725QC [27インチ]、53,474円
ノートPC:
Pavilion Aero 13 Ryzen 5・16GBメモリ・512GB SSD・マウス付、107,800円
https://jp.ext.hp.com/notebooks/personal/pavilion_aero_13_bg/
・メモリやストレージの拡張は不可能
ミニPC:
Elite Mini 805 G8 Ryzen 5 5600GE・16GBメモリ・512GB SSD・Windows 11 Home 価格.com限定モデル、65,890円
https://jp.ext.hp.com/prod/desktops/business/elite_mini_805_g8/
・メモリは1スロット空きがあり増設可能
・M.2 SSDは1スロット空きがあり増設可能
これは筆者所有モデルですが、筆者は16GB-SODIMMメモリを増設し32GBメモリとし、ストレージは2TB増設し2.5TBとしています。
すなわち、
ノートPC+モニター:161,274円
ミニPC+モニター:119,364円
差額は41,910円となり、2TB-SSDと16GBメモリを増設してもお釣りがきます。
筆者には持ち出し用にMacBook Airがあるからこの選択が可能なのですが、持ち出す予定がなければノートPCかミニPCか、拡張性や総額で見ても結論は明らかです。
ポートの数もかなり差があります。
ノートPC:
・USB Type-C 3.2 Gen2(10Gbps)PD・DisplayPort1.4 × 2
・USB Type-A 3.2 Gen2(10Gbps)
・USB Type-A 3.2 Gen1(5Gbps)
・ヘッドフォン・マイクコンボポート(4極ジャック)
ミニPC:
・ギガビット 有線LAN
・USB Type-C 3.2 Gen 2×2(20Gbps)
・USB Type-A 3.2 Gen2(10Gbps) × 5
・USB Type-A 3.2 Gen1(5Gbps)
・DisplayPort1.4 × 2、
・HDMI2.1
・ヘッドフォン・マイクコンボポート(4極ジャック)
ポート数がかなり違いますので、ノートPCでは接続デバイスによりドッキングステーションが必要になりますが、ミニPCではまず必要にはならないはずです。せいぜいUSBハブ程度は必要かもしれませんが…。
おすすめのシナリオ
ポイントは持ち出すか否かの一点にかかっています。
わざわざ重いPCを持ち出す必要性がないのであれば、拡張性やコストの面からミニPCを強くお勧めします。
カッコ良いとか、流行だからとか、皆ノートPCだからという理由だけで選ぶと後悔します。
A. 完全に据え置き・拡張性重視
ミニPC+外部モニター。
メモリ/SSD増設で拡張しやすく、総コストも抑えやすいです。
標準的についているポートも多いため、ドッキングステーションは不要です。
B. 基本は据え置き、ときどき持ち出す
ノートPC+外部モニターから始める。
ドッキングステーションは本当に必要になってから追加すれば、初期費用を抑えられます。
結果的にほとんど持ち出さないとなると、そうそうにミニPCに変えたくなるかもしれません。
C. 自宅と外を頻繁に往復
ノートPC+ドックキングステーション+外部モニター。
デスクでは一本挿しで“据え置き化”しつつ、外では軽快に使えますが、費用は一番高価になります。
D. ミニPCとタブレット
持ち出し利用の内容次第ですが、AndroidやiPadで事足りるような用途であれば、あえて重くて嵩張るノートPCより、自宅はミニPCで外出時は軽量なタブレットで済ませるという選択肢もあります。
最初は持ち出すつもりでノートPCを買ったけれど、現実には重くて嵩張るので、何度か持ち出した後はもう自宅据え置き利用になってしまったというのも非常によくある話です。それならばミニPCとタブレットを買った方がずっとよろしいのでは?と思います。
筆者の実体験(ノートPC→ミニPC)
筆者はMacとWIndows両方使っており、主に使うのはMacです。
27インチ4Kモニター・キーボード・マウスは切り替えて共用していました。
過去所有しているのは以下の通りでした:
・Mac mini(デスクトップ)
・MacBook Air(ノート)
・HP 2-in-1 ノートPC:HP Spectre x360 13-ac000
・HP ゲーミングノートPC/据え置き利用:HP OMEN by HP 15dh0010TX パフォーマンスモデル
現状はこのようになっています:
・Mac mini(デスクトップ)、変わらず
・MacBook Air(ノート)、変わらず
・HP法人仕様のミニPC:HP Elite Mini 805 G8 – Home
MacBook Airは時々持ち出して使用しますので不可欠な存在です。
一方、HPの2-in-1ノートPC(HP Spectre x360 13-ac000)は「持ち出してもいいかなぁ」くらいのノリで購入しましたが、メインがMacであることも手伝って、持ち出しどころかそもそも使用頻度が非常に少なかったです。
ゲーミングノートPCですが、筆者はゲームはしないのですが、動画編集も念頭に比較的グラフィック能力が高いものを選びました。クラムシェル利用といってパネルを閉じたままで、シャットダウンせず外部モニターと外付けワイヤレスキーボード・マウスで運用していました。
常時ACにはつながっていますのでリチウムイオン電池の劣化は否めず、劣化が進むといずれバッテリー交換修理が必要になります。さもなければ事故のリスクも上がります。これも不要なノートを手放した大きな理由の一つです。どちらのノートもそれなりの年数が経ち、使おうが使うまいがリチウムイオン電池が遠くないうちにバッテリー交換を迫られるので、手放し、ミニPCのHP Elite Mini 805 G8 – Homeを導入しました。
https://aichanworld.com/wd/2025/05/10/nowinnote/
ノートPCのバッテリーの寿命や事故(発火)の心配をしなくて良いのは思った以上に安堵感が高かったです。
まとめ
据え置き運用ならミニPCは拡張性と延命のしやすさでノートPCより圧倒的に有利です。
一方で、将来の持ち出し予定が少しでもあるなら、まずはノートPC+外部モニターで様子を見るのも二重投資を防ぐ意味で賢い選び方ですが、ノートPCは思ったより重いので、そのうち持ち出さなくなる可能性も高いと思いましょう。
持ち出し用途がAndroidタブレットやiPadで間に合うのであれば、ミニPCとタブレットというのもいい組み合わせです。
費用の合計と使い方の現実をよく考えて、自分にとって無理のない構成を選びましょう。
FAQ
Q1. 据え置きならノートPCとミニPC、どちらが安い?
A. 追加の周辺機器の有無などにより変わりますので一概には言えません。周辺機器を含めた総額で比較しましょう。ミニPCは拡張性という意味では、ノートPCより圧倒的に有利です。
Q2. ドッキングステーションは必須?
A. 必須ではありません。外部モニターだけならUSB Type-C to HDMI or DisplayPortケーブルで十分なことも多く、必要になってから検討が合理的です。
Q3. ノートPCのバッテリーは据え置きでも問題ない?
A. 使えますが、高温環境の回避や適切な充電(100%状態を維持しない、最高でも80%程度どまりにする)など基本的な扱いを守らねばなりません。将来的に必ず交換費用が発生します。大容量リチウムイオン電池の安全性(特に発火)については十分考慮する必要があります。リチウムイオン電池の危険性を軽々しく考えるべきではありません。家庭内のリチウムイオン電池は少なければ少ないほど事故のリスクも減ります。