ビジネスメールの結びの定番文句の一つに「よろしくおねがいいたします」というのがあります。時々「宜しくお願い致します」というのを見かけますが、何か違和感を感じませんか?違和感を感じた方は正しい日本語感性をお持ちのようです。
「宜しくお願い致します」の構造
「宜しくお願い致します」は、
「宜しく」+「お願い」+「致します」
の3つの語から成っています。
宜しく
「宜しく」って何でしょう?「よろしく」ならわかりますが。
「宜しく」の「宜」って「よろ」って読むのですかね?
この字は「便宜」の「宜」ですね。
文化庁発行の常用漢字表を見てみましょう。
宜 | ギ | 適宜、便宜
なるほど、「ギ」と読みますが「よろ」とは読ませないですね。
「宜しく」は「よろしく」の当て字でありビジネス文書に用いるのは好ましくない。
漢字の意味としては「適宜」「便宜」からわかるように、ほどほどでその場にはまって都合が良いといった意味を持ちます。
この意味から当て字として慣習的に用いられるようになったようです。
結果的に「よろしく」→「宜しく」となったようです。
PCやスマホの日本語変換で「よろしく」のあと変換しちゃうと「宜しく」が出たりしますがこれは正しくないので使うのはやめるほうが良いです。
お願い
「お願い」と「おねがい」は用法として問題ありません。
「お願い」の「お」は「御」であり敬意を表す接頭辞です。
「願い」はいいですよね、問題無いです。
致します
最大の問題がこれ。
「致します」と「いたします」と日本語入力すると両方ありますね。
「致す」とは「ある状態に至らせる」「仕向ける」といった意味になります。
今回の不祥事は全て私の不徳の致すところでございます。
あまり言いたくない・聞きたくない言葉を例に出してしまいました。
真っ先に頭に浮かんだので…….(笑)
「いたします」は「する」の謙譲語です。すなわち「する」を謙って相手を立てる言い方となります。
致す:ある状態に至らせる、仕向ける
いたす:「する」の謙譲語
いかがでしょうか、単なるひらがなの漢字表記ではありません。
「宜しくお願い致します」は二ヶ所にあやまり
すなわち、
「宜しく」が当て字で違うだろ!というのと「致します」はそもそも意味が違うじゃねぇか!
という二つの誤りがあることです。
ビジネスメールで「宜しくお願い致します」はつかってはいけません。
正しい表現
結びの言葉として「よろしくおねがいいたします」を表現したいなら「よろしく」「いたします」はひらがなで書きましょう。
「よろしくお願いいたします」が正しい表現となります。
バリエーションとしてもう少し軽めに「よろしくお願いします」は同僚とか直属上司あたりなら問題なしだと思います。
「よろしくお願い申し上げます」というのも記憶にあると思います。「お願い」と「申し上げます」で本来避けねばならない二重敬語になりますが、慣例的には問題ないとされているようですし、丁寧な気持ちが強調されるので、ま、いいか、という感じ。
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