メールの日本語:「ご多用のところ」と「ご多忙のところ」

日常生活・猫
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昨日の記事で「宜しくお願い致します」は誤りであると書きました。メールだとその直前に「ご多用のところ申し訳ございませんが」とか「ご多忙のところ申し訳ございませんが」とかくっついているのをよく見かけます。「ご多用」と「ご多忙」のどちらが適切なのでしょう?

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よくある例

会社のお仕事メールでよく見かける例がこれ。

ご多忙のところ申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。

後半の「宜しくお願い致します」は誤りだというのは昨日の記事の通りです。

では、前半の「ご多忙のところ申し訳ございませんが」には問題ないのでしょうか?

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受け取った感情

人情として「ご多忙のところ申し訳ございませんが」と書かれると、「忙しいので申し訳ないと思うなら言うなよ!」とか思うわけです。

こんなふうに怒りをあらわにする人は多くはないと推測しますし、ほとんどの人は気にかけず読み流すと思います。

しかし時と場合によっては相手には失礼になりますので気をつけるべき場合があります。

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忙しいという言葉

忙しいの「忙」とは「心」を「亡くする」と書きます。

心が部首につく漢字は、一般には「こころ」(忘と恋とか)と「りっしんべん」(忙とか快とか怯とか)があります。

心が漢字の下側につく場合の部首は「こころ」とかきましたが部首名として「したごころ」と呼ばれる場合もあるようです。実のところ部首の読みは公式には定められていなくて慣用的に呼ばれているだけです。解説によっては「したごころ」は「慕」の「⺗」の部分を示している場合もあります。

一般には「恋」の「心」の部分が「こころ」というほうが無難のようでありますが「したごころ」という部首といっても別段誤りではありません。

閑話休題。

「忙」という文字。成り立ちはいろいろな説があるようですが、よく言われるのは「落ち着いた心がなくなるほどである」ということから「いそがしい」を意味するものとして「忙」の文字ができたというのを昔習った記憶があります。

ぶっちゃけ「うっせーなー、今それどころじゃねーんだよ!」という状況であります。

多忙とは忙しい状態が多いわけでなので、「もー超絶いそがしいんだよ、お前に関わっている暇はねぇんだよ!」状態。

そう考えると、

もー超絶忙しいんだよ、お前に関わっている暇はねぇんだよ!」状態であることがわかっているのに仕事を頼むというのが「ご多忙のところ申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。」であるともいえます。

随分、相手の事情を無視した自分本位で身勝手な話だと感じませんか?

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多忙と多用

多忙というのは先に書いた通り極端にいえば「もー超絶忙しいんだよ、お前に関わっている暇はねぇんだよ!」状態ですが、多用のほうや「あ〜、やること多いんだよなぁ、あれもこれも!」状態で仕事がたくさんあるとは限りません。公私を通して「いろいろやることあってさぁ」でニュアンス的に「多忙」よりはかなりソフトなイメージ。

これらの意味やイメージの違いから「多忙」がいい場合と「多用」がいい場合があると筆者は考えています。

インターネットを検索すると同じ意味だからどちらでもOKさ、というのが目につくのですが、それはどうかと思います。

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仕事をお願いするときとは「多用」が無難

もー超絶忙しいんだよ、お前に関わっている暇はねぇんだよ!」状態の人にものを頼むべきではないでしょう?

なので、仕事メールで何かを依頼するときに適切なのは「多用」だというのが筆者の考えです。

ご多用のところ申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

「いろいろやることが沢山あろうかとは思いますが、こちらのほうもよろしくですぅ!」という感じ。

多忙を使ってはいけないとはいいませんが、不快に受け取る人もいるということは覚えておくべきです。

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慶事に「多忙」はタブー

文章でも話し言葉でも、慶事の場合は絶対に「多忙」を使ってはいけません。

漢字を考えるとわかりますが、「多忙」の「忙」には死を意味する「亡」という文字が含まれていますので慶事には忌み嫌います。

慶事で「本日はご多忙のところ…」とかいうのは絶対NOです・

言うのであれば「本日はご多用中にもかかわりませず…」というべきです。

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多忙のほうがいい場合

多忙というのは「超絶いそがしい」状態だという前提に立てば、その後はお願いとか依頼ではなくて、どうかお体にはお気をつけてといった言い回しを続ける場合はGOODです。

ご多忙の折りではございますが、くれぐれもご自愛ください

こちらの場合は「多用」は不適切です。

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まとめ

「多忙」と「多用」は似て非なるニュアンスを持つ言葉である。「多忙」は死ぬほど超絶忙しい状態であり「多用」はやることがたくさんある状態。

頼み事をする場合のクッション言葉としては、死ぬほど忙しい(=多忙)な人にさらにものを頼むのは非常識なので「多用」が好ましい。

慶事には話し言葉・書き言葉でも死を意味する「亡」が入っている「多忙」はタブーである。

忙しい相手を気遣う言い回しにつけるのであれば「多忙」が適切。

 

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