Evernoteは「新しいEvernote」になってから使いにくなりました。同期が遅い、やたら競合が起こる、使いにくいホーム画面など。不満点は複数名でのコラボにもつかうか、1人でクラウドベースのメモ・記録先として使うかどうかにより異なると思います。今回は後者の使い方での移行先をサービス継続性を重視して考えます。
移行先サービスの運営企業の条件
筆者がEvernoteを使い始めたのは、2009年9月からです。
日々の記録や旅の情報、種々の情報を記録しています。
情報としてはかなりありますので、これを移行するとなるとそれなりに条件が必要です。
ソフトウェア自身の出来栄えもさることながら、長期に安定運用するためには運営会社に対しても厳しい条件が求めらるはずです。
ネットで調べると、個々のソフトやサービスの機能について着目しているものがほとんどなのですが、いくら優れていても明日をも知れぬ経営状態ではクラウドサービスとしては失格です。
Evernoteも含めてクラウドサービスですので、クラウドを運用するには継続的な資金が必要ですし、クライアントOSのVerUPに伴うソフトウェアのVerUP、機能向上のためのソフトウェア開発が不可欠でこれにも膨大な費用がかかります。
クラウドサービスの運用は金を食うので、それに対して十分先まで見通せる資金調達力があるかどうかが重要です。
ベンチャー企業やスタートアップ企業ではコストにしかならないわりに人件費がかかるサポートはどうしても疎かになりがちです。
料金も重要で、運営会社がそのクラウドサービスだけで稼いでいるとなると、あまりに安い場合には早晩経営が立ち行かなくなり破綻してサービス停止のリスクも高くなります。信頼できるサービスはそれなりにコストがかかります。
消費者の立場では月額料金は安いに越したことはありませんが、クラウドサービスなのにアプリ買い切りでそれ以外費用はかからないというのは、冷静に考えてそれ単体ではありえないわけです。
本記事では、Evernoteに変わりうるクラウドサービスとしてOneNote、Notion、Stockをとりあげます。類似アプリには非クラウドのアプリもありますが、これらはクラウドとしてのEvernoteの代替にはなりえません。
3つを比較
OneNote
会社名:Microsoft Corporation
本社所在国:米国
設立:1975年
従業員数:約22万人
主要顧客:言わずと知れた世界中のほとんどの大企業
売上高:562億ドル
経常利益:243億ドル
ユーザー数:多すぎて…..
URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onenote/
料金:
・OneNoteアプリそのものは無料です、
・ストレージにOneDriveを使うため、その部分の料金はOneDriveあるいはMicrosoft 365の料金となります。
筆者コメント:
・巨人が提供するサービスのごくごく一部です。
・巨人だから安心できるわけではなく、ある日突然OneNoteの提供を終了するといったこともありえます。
・企業ユーザーでもOneNote利用企業は多いが、Microsoft 365でOneDriveを使っていれば従業員も基本的には使えてしまうので正確なところは不明ですが桁違いに多いのは間違いありません。
Notion
会社名:Notion Labs Inc.
本社所在国:米国
設立:2013年
従業員数:357名(2022年12月31日時点)
主要顧客:大手企業の導入事例としてはベネッセコーポレーション、JR西日本、大阪ガス、トヨタ等が挙げられている。
売上高:非公開
経常利益:非公開
ユーザー数:2,000万人以上と言われています。
(以上の情報は2023/12/21時点のForbes、認定パートナーのNORTHSANDによる)
URL:https://www.notion.so/ja-jp/
料金:
・「フリー」プラン→文字通り無料、個人利用ならブロック数制限なし、7日間のページ履歴、10名のゲスト
・「プラス」プラン→US$8/月で無制限のファイルアップロード、30日のページ履歴、100名のゲスト
・「ビジネス」プラン→US$15/月で無制限のファイルアップロード、90日のページ履歴、250名のゲスト、他
・「エンタープライズ」→個別相談
筆者コメント:
・無制限のファイルアップロードでありながら月額たったの$8というのは不安を覚えざるを得ませんが、ユーザー数が全世界で2,000万人を超えており、時価総額は100億ドルを超えると言われていますので、そうそう簡単に消えてしまうこともないでしょう。
・個人で使うなら「フリー」で十分。しかし、Evernoteのフリーが突然めちゃくちゃ制約がかかってしまったように、いつ第二のEvernoteになるかわからないので、プラスプランのUS$8/月は最初から覚悟しておいたほうが無難。
・EvernoteからはNotionアプリ(PCあるいはMac)にインポートツールがあります。が、しかし、筆者が試した範囲ではインポートがいつまでたっても終わりません。どうなってんじゃ?それに一回のインポートでは115だか117だかのノート数を超えると不可能です。筆者の場合、Enex形式でエクスポートした総サイズは2.5GBほどあり、ノート数はその軽く十倍以上はあります。
・筆者の場合Evernoteからの移行がうまくいかないのですが、ゼロスタートで使うには結構いいツールかと思います。
・エクスポートはPDF、CSV、HTML、JSON、マークダウンの対応していますが、どれもサクッとOneNoteに取り込むのは難しいので、Notionに大量データを貯めると他に移行するのが大変になるかと思いますので、そのあたりはEvernoteの悪しき経験も含めて覚悟が必要でしょう。
Stock
会社名:株式会社Stock
本社所在国:日本
設立:2014年4月1日
従業員数:25名
主要顧客:非公開(大手企業での導入事例は見当たらなかった)
売上高:非公開
経常利益:非公開
(以上の情報は2023/12/21時点のリクルートエージェントによる)
URL:https://www.stock-app.info/
料金:
・「ビジネスプラン」は500円/月で10GBまで
・「エンタープライズプラン」は1,000円/月で20GBまで、他
筆者コメント:
・スタートはNotionとほぼ同時期ですが、日本発でありNotionのようにグローバル展開していないようで、長期的なサービス継続には資金面でも不安があります。そういう視点からいうともっと実績がグローバルに広がらない限りは、申し訳ないのですが筆者がこれを積極的に選ぶ理由はみあたりません。
結果は二者択一
Stockは先々のサービス継続に不安がありますので、長期視点であれば現時点では安心できる材料がみあたりません。ちょっとリスクが高いと感じます。
残るは天下のOneNoteかNotion。
筆者はMicrosoft 365 Business Standardを契約しており1TBのOneDriveが使えるので、クラウドの容量に関しては問題ありません。OneNoteアプリは無料です。Microsoft 365を契約していてOneDrive 1TBとか使える人ならファーストチョイスはOneNoteだと思います。
OneDriveのような大容量クラウドストレージは使っていないということならばNotionの「プラス」でしょう。年契約の月払いでUS$8/月、今のレートですと1,100円〜1,200円程度。
ただNotionに1,200円払うなら1,716円/月に格上げしてMicrosoft 365 Business Standardを使った方が、いつもOffice最新版も使えますしOneDrive 1TBも使えるのでぐっと用途が広がります。もっとも最初から有償Notionではなくフリープランで始めても良いわけです。
OneNoteもかなり癖があるソフトではあり、Evernoteのように画像やPDFの中の文字まで検索することはできませんし、Evernoteが新しくなってから一気にインポートはできなくなりましたが、それでもトータル費用と長期的継続性を考えるとファーストチョイスだと思います。
どうしてもOneNoteが好きになれない、あるいはMicrosoftの軍門に降りたくないのであればNotionでしょう。
Evernoteからの移行ということであればNotionの場合、筆者が試した範囲ではインポートはいつまでたっても終了せず一回のインポートで100ちょっとのノートしか対応できないようです。それ以外にインポート手段はないので、大量のEvernoteデータの移行は諦めたほうが良さそう。その場合は手間がかかってもOneNoteのほうが良いと思われます。