この記事では、大容量モバイルバッテリーに使われることの多いリチムイオン電池と薄型モバイルバッテリーやスマートフォンに使われることの多いリチウムポリマー電池について、その差などを考察します。
リチウムイオンとリチウムポリマー
モバイルバッテリーにはセルとしてリチウムイオン電池を使っているものと、リチウムポリマーを使っているものがありますのでその違いを簡単に説明します。
リチウムイオン電池
金属筒に収められた直径18mm、長さ65.0mmの18650というセルがモバイルバッテリーに使われることが多く、起電力は通常3.7V、容量は一本あたり普通は3350mAhです。
これを2本使うと6700mAh、3本だと10050mAh、4本だと13400mAhとなります。
モバイルバッテリーで10000mAhはわかるけど、10050mAhってその50って半端はなんなの?と思った人が多いと思いますが、そういうわけです。
本来なら電池の並列というのは好ましいものではありません。単純に並列接続しただけでは、一つのセルが内部で短絡すると、他のセルから大きな電流が流れ込んで発熱・発火の原因となります。
そこで制御回路(CPUを持っています)に個別にセルを接続して制御しているのがちゃんとしたモバイルバッテリー。制御回路が手抜きだったり、マジで並列接続してコストダウンしたりしているのが、一部の中華モバイルバッテリーにあるそうです。私が強くちゃんとしたメーカーのものを費用を惜しまず買うように勧めるのはそういうところにあります。
リチウムイオン電池は電解液に有機溶剤を使用しており、消防庁の情報によれば、引火点は 40度程度と非常に低く第4類第二石油類の引火性液体に分類されます。
リチウムイオン電池が危険だと言われるのは、その電解液の特性によるもので、電解液は比較的低い温度(40度程度)で発火するため、高温下や損傷による漏れで発火する可能性が高いからです。またガス発生への耐圧を高めるためにも18650電池のように強度の高い金属筐体に収められています。
一方で内部抵抗が低いため、より高い電流を取り出せるのも特徴で、大容量大電流のモバイルバッテリーはほとんど18650セルを組み合わせて使ったものになります。
リチウムポリマー電池
リチウムポリマー電池は、スリム型バッテリーなどに使われており、電解質に高分子ポリマー材料を使うので整形の自由度が高く、リチウム電池のように電解液の漏れによる事故などが起こりにくいとされています。
しかし、その電解質の性質上内部抵抗は高めのため、取り出せる電流はあまり大きくはありません。
勘違いしてはいけない(それを誘導しているような記載のあるスリム型バッテリーを主力としているメーカーもありますが…)のは、危険度は大差ないということです。
どちらも電解質については危険度は高く、片方は液体で、もう片方はゲル状のポリマー電解質というだけです。リチウムポリマーだから安全なんてタカをくくっているととんでもないことになります。本質的に電解質の性質や危険度は同じであると認識してください。
構造的に考えるとわかりますが、リチウムイオンは金属筒に電解液が封入されていますが、リチウムポリマーはラミネート封止されているだけなので、機械衝撃や変形などには明らかに後者のほうが脆弱です。円筒形が内圧に強いのはガスボンベが皆円筒形であるので明白ですね。
不適切な扱いにより内部での可燃性ガスの発生することがあるのは、リチウムイオンでもリチウムポリマーでも同じですが、リチウムイオンは金属筒に封入されているのできちんと作られたセルならばかなりの圧力(8気圧程度らしい)まで耐えますが、リチウムポリマーはアルミラミネートしただけなので、簡単に膨らんでしまい圧力には弱くガスが噴出する危険があるのは誰が考えてもわかります。
モバイルバッテリーではなく模型用リチウムポリマー電池ですが、不適切な充電による火災の危険性を消防庁が実験してビデオにしています。
適切な充電をしないと、リチウムポリマーのラミネートが破損して可燃性ガスがすごい勢いで噴出して発火し、まるで火炎放射器です。
まとめ
モバイルバッテリーの選び方については以下の記事も参考にして下さい。
- リチウムイオン電池だから危険、リチウムポリマー電池だから安全などというのは迷信。適切な使い方を怠ればどちらも非常に危険。
- リチウムイオン電池は大電流を得やすい。
- リチウムポリマー電池はスリムに作れるが大電流は得にくい。
- モバイルバッテリーはどちらのタイプをつかったものであっても、ちゃんとしたメーカーの品を買うのが大原則。