完全ワイヤレスイヤホンの落下紛失問題を解決!携帯型Bluetoothレシーバーと有線イヤホンの組み合わせで、快適さと安全性を両立。4機種の比較とメリット・デメリットを徹底解説します。
電車にはワイヤレスイヤホンが欠かせない?
電車の中で周囲を見渡すと、ワイヤレスイヤホンを使用している人が多く見受けられますね。
やや古い2019年のデータになりますが、コクヨの総務の森の調査によると、通勤中にイヤホンを使用している人は45.3%にのぼるとのことです。イヤホン利用者を100としたとき、左右独立側のワイヤレスイヤホンを使うのは10.4%となっています。
パナソニックが2023年1月に行った調査によれば、ワイヤレスイヤホン利用者のおよそ4割が通勤・通学時に使用しているということです。
ワイヤレスイヤホンは大きく分けて次の3つのタイプに分類できます。
- オーバーイヤー(耳覆い)タイプのワイヤレスヘッドホン
- 左右が繋がったワイヤレスイヤホン
- 左右独立の完全ワイヤレスイヤホン
最近電車の中で多いのは、圧倒的に「完全ワイヤレスイヤホン」です。中でもApple AirPodsシリーズが非常に多いように思います。
2024年のメーカー別完全ワイヤレスイヤホンシェアを調べると以下の通りのシェアです。
- Apple:24.4%
- Anker:11.8%
- ソニー:11.1%
- JVCケンウッド:8.7%
- オーディオテクニカ:5.7%
(BNC調べ、「Ankerがソニーを初めて逆転、完全ワイヤレスイヤホンで年間2位に浮上」、2025/01/28)
Appleは強いですね。Ankerはモバイルバッテリーだけではなく、Soundcoreシリーズというワイヤレスイヤホンのシリーズが人気で一気にシェアを上げてきました。
完全ワイヤレスイヤホンのデメリット
コードがなく快適に使えるワイヤレスイヤホンは、ノイズキャンセリング機能など魅力的な特長を持ちますが、同時にいくつかの重要なデメリットも抱えています。
- 落としやすい
GIZMODOの記事『線路にワイヤレスイヤホン落とす人多過ぎ!パナソニックとJRが「イヤホン用掃除機」を開発』によると、JR東日本の東京支社管内全78駅で、わずか3ヶ月間(7〜9月)に約950件ものワイヤレスイヤホンが線路に落下する事故が発生しているとのことです。
- コスパが悪い
Bluetooth通信機能、バッテリーなどが入っているのでどうしても価格が高くなります。使ってみて音質が気に入らなくてもそう簡単には買い替えできません。 - リチウムイオン電池内蔵機器が頭の近くにある危険性
小容量とはいえ耳や頭の側にリチウムイオン電池内蔵機器があるのは不安です。独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)の事故情報を見ると、ワイヤレスイヤホンの事故で多いのは充電中のものですが、使用中の事故もゼロではないことがわかります。 - バッテリーの劣化
完全ワイヤレスイヤホンの内蔵バッテリーは交換不可能です。イヤホンとしてはまだまだ使えても、2〜3年程度でバッテリー劣化とともに事実上寿命になります。 - 一時的に外した時に困る
話しかけられたりしてイヤホンを外すことがありますが、外したイヤホンの処理に困ることがあります。ケースにしまうのが理想ですがバッグの中からケースを出すのも面倒です。 - 操作性が悪い
タッチ操作で行うものが多いのですが、タップ回数や長押しなどで動作が違ったりしてややこしいです。耳にはめなおすときにセンサーに触れてしまい、予期せぬ動作を引き起こすのもストレスです。 - 音質が良くない
特に安価なものは、安い有線イヤホンより音質が劣るものが多いです。 - ユニットが重く大きい
内部にバッテリーと受信機を内蔵しますので、有線イヤホンより重く大きくなり、その結果外れやすくなります。これが紛失の大きな一因です。
有線イヤホンのメリット
有線イヤホンには、コードが絡みやすかったり、最新のスマートフォンではイヤホンジャックがなくアダプターが必要だったりという欠点はありますが、見過ごせない多くのメリットも存在します。
- 片耳紛失がない
有線なので片耳だけなくなることがない。 - 音質が良い
Bluetoothイヤホンに比べて音質が良いものが多い。 - コスパが良い
高性能なイヤホンでも完全ワイヤレスイヤホンより安い。 - 無線の接続問題がない
Bluetoothの接続不安定による音切れや遅延がない。 - リチウムイオン電池が頭の近くにない
耳や頭の近くにリチウムイオン電池がないので事故のリスクが低くなる。 - 充電心配不要である
そもそもバッテリーがないです。
Bluetoothレシーバーと有線イヤホン
そこで注目したいのが、Bluetoothレシーバーと有線イヤホンを組み合わせるという方法です。
Bluetooth受信機能とヘッドホンアンプを内蔵したようなもので、3.5mmイヤホンジャックがついていて、レシーバー本体には再生や停止を制御するボタンなどがあります。
完全ワイヤレスイヤホンと有線イヤホンのいいとこ取りをしてみようというのがこの組み合わせです。
メリット
- イヤホンは有線なので片耳だけなくす心配がない。
- 耳や頭のそばにリチウムイオン電池がない。
- スマートフォンとケーブルで縛られることがない。
- 駆動時間は概ね完全ワイヤレスイヤホンより長い。
- 音質が気に入らなくても、安価な有線イヤホンの買い換えだけで済む。
- お気に入りの有線イヤホンがあればそれを使える。
デメリット
- レシーバーとの間のコードが邪魔になる。
- リチウムイオン電池が無くなるわけではない(頭のそばに無いだけ)。
- Bluetoothの接続切れや遅延は解決できない。
- 充電の心配は無くならない。
- 完全な有線イヤホンよりは音質は落ちる場合がある。
- ノイズキャンセリングがない。
入手容易の携帯Bluetoothレシーバー
通販や実店舗で比較的入手しやすいのがFIIOのシリーズです。同社は製品を「ポータブルBluetoothヘッドホンアンプ」と呼称しており、3,500円前後の手頃なモデルから35,000円前後のハイエンドモデルまで、計4機種を展開しています。
これらの仕様を比較表にしました。
BTR17 | BTR15 | BTR13 | BTR11 | |
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Amazon価格 | 34,110円 | 18,891円 | 11,990円 | 3,429円 |
DACチップ | ES9069Q x 2 | ES9219MQ x 2 | CS43131 x 2 | 記載なし |
Bluetooth チップ | QCC5181 | QCC5125 | QCC5125 | BES2700 |
Bluetooth Ver. | 5.4 | 5.1 | 5.1 | 5.3 |
マルチポイント接続 | 2台まで | 2台まで | 2台まで | 2台まで |
対応コーデック | AAC, SBC, aptX, aptX LL, aptX Adaptive, aptX Lossless, aptX HD, LDAC | AAC, SBC, aptX, aptX LL, aptX Adaptive, aptX HD, LDAC | AAC, SBC, aptX, aptX LL, aptX Adaptive, aptX HD, LDAC | SBC, AAC, LDAC |
USB DAC機能 | 最大 768kHz/32bit PCM, DSD512 (Native) | 最大 768kHz/32bit PCM, DSD512 (Native) | 最大 96kHz/16bit PCM | 非対応 |
MQA対応 | フルデコード | 8xデコード | 非対応 | 非対応 |
出力端子 | 3.5mm シングルエンド 4.4mm バランス | 3.5mm シングルエンド 4.4mm バランス | 3.5mm シングルエンド 4.4mm バランス | 3.5mm シングルエンド |
最大出力 (32Ω) | 3.5mm: 140mW (通常), 280mW (デスクトップモード) | 3.5mm: 125mW | 3.5mm: 100mW | 3.5mm: 30mW |
4.4mm: 300mW (通常), 650mW (デスクトップモード) | 4.4mm: 340mW | 4.4mm: 220mW | X | |
ディスプレイ | 1.3インチ IPSカラー | 0.96インチ 有機EL | 0.96インチ TFTカラー | LED |
マイク | 内蔵マイクあり (通話対応) | 内蔵マイクあり (通話対応) | 内蔵マイクあり (通話対応) | 内蔵マイクあり (通話対応) |
アプリ連携 | FiiO Control 対応 | FiiO Control 対応 | FiiO Control 対応 | FiiO Control 対応 |
PEQ (パラメトリックEQ) | 対応 | グローバルPEQ対応 | 対応 | 非対応 |
操作方法 | 物理ボタン, ボリュームノブ, モードスイッチ | 物理ボタン, モードスイッチ | 物理ボタン, モードスイッチ | 物理ボタン |
バッテリー 充電時間 | 約2時間 | 約2時間 | 約2時間 | 約1.5時間 (1時間で90%) |
バッテリー駆動 時間 (AAC) | 約8時間 | 約8時間 | 約8時間 | 約15時間 |
バッテリー駆動 時間 (LDAC) | 記載なし | 記載なし | 記載なし | 約8.5時間 |
サイズ | 16.3 × 41.2 × 86.6 (mm) | 72.2 x 32 x 12.5 (mm) | 63.2 x 30 x 18.8 (mm) | 55 × 19 × 14.6 (mm) |
重量 | 73.4g | 37.2g | 28.6g | 13g |
各モデルの特徴
BTR17
フラッグシップモデルとして、高性能DACチップを搭載し、力強い出力(特にデスクトップモード時)やaptX Lossless対応など、全方位で高いスペックと多彩な機能を誇ります。さらに大型ディスプレイを採用しており、視認性も抜群です。
BTR15
BTR17に次ぐモデルで、バランス出力やMQA 8xデコードに対応し、グローバルPEQ機能も搭載しています。BTR17ほどの最大出力はありませんが、多くのシーンで十分な性能を持っています。
BTR13
比較的新しいモデルで、BTRシリーズのエントリークラスとミドルクラスの中間に位置しています。バランス出力対応とカラーディスプレイ搭載により、基本性能と使いやすさを両立させています。ただし、USB DACとしてのサンプリングレートは上位モデルと比べると制限があります。
BTR11
BTRシリーズのエントリーモデルで、最もコンパクトで軽量です。バランス出力はなく、機能もシンプルですが、LDACを含む主要なBluetoothコーデックに対応しており、手軽にワイヤレス高音質化を実現できます。USB DAC機能はありません。
注目すべきは駆動時間です。BTR13以上のモデルはディスプレイがありますので、その分消費電力も多く最大駆動時間はAACで約8時間ですが、エントリーモデルのBTR11はLEDランプのみなので、AACでは最大15時間駆動となっています。
コーデックについては、BTR11はaptX系には対応していませんが、AACとLDACをサポートしているため、iPhoneユーザーなら問題なく使用できます。Androidユーザーも、多くの機種がAAC対応しているため、通常は快適に利用できるでしょう。
残念なのはノイズキャンセリングがないことです。ノイズキャンセリングがあることで音量を下げることができますので耳を保護するためには重要だと言えます。
まとめ
完全ワイヤレスイヤホンは重くて大きく無くしやすく価格も高いのが最大の欠点です。一方、有線イヤホンは安価ですがコードが煩わしいのが難点です。
携帯型Bluetoothレシーバーとお気に入りの有線イヤホンを組み合わせることで、ワイヤレスイヤホンと有線イヤホンの長所を上手く取り入れることができます。ただし、現状ではノイズキャンセリング機能に対応していない点が唯一の弱点と言えるでしょう。
イヤホンを無くしやすい通勤時などにはおすすめです。