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成人アトピーで思うこと (1) 2018/3/24
アトピーの痒さは経験者でないと絶対わからない
「掻くから治らない」「掻くから悪化する」「掻かなければ治るのに」というのは、素人・医者を問わずアトピー日経験者から聞く言葉ですが、これ一部は真実だと思いますが、「掻かなければ治る」というのは事実から程遠いと思います。もちろん軽いアトピーだと掻かなければ悪化せず治癒が早くなるとは思いますが、そういうのって本当にアトピーなのかしらん、何か違うアレルギー性皮膚疾患じゃないのですか?とか思いますがねぇ。
蚊に刺されてぷくっと膨らむと痒くなって掻きますよね。でも、掻いているうちに痛くなってくるので掻くのをやめます。
これが普通の痒み。
ですが、アトピーの痒みがそれはそれは尋常ではないのです。経験者でないとアトピーの痒みの凄さは絶対に理解できません。断言してもよいです。
アトピーの痒さ・掻くというのは経験的にはこういうことです。
- いてもたってもいられない強い痒みが襲う。炎症の範囲が広いとその痒みがそこらじゅうから襲いかかり、気が狂いそうになる。正気を保つために掻かずにはいられない。掻かないと発狂するかと思う。
- 掻けば掻くほど痒みが増す。
- アトピー症状の初期〜ピーク時にかけては掻いていると、猛烈な快感、エクスタシーといってもよいくらいの快感を感じる。性的快感につぐくらいではないかと思うほどの快感です。ただし、ピークを過ぎて改善に向かうと、同じ痒みでもエクスタシーを感じるような痒みではなくなります。
- 掻くときの力は、健康肌の人が蚊に刺されて掻く力の何倍もの力を指先に込めて掻いている。
どうですか?アトピーでない方にこれが想像できますか?おそらく想像できないと思います。
掻いてしまうことを前提とした爪対策
そういうことなのです。前節の箇条書きのような痒みなのですから、掻くなというのが無理です。
オススメしたいのは爪を短くすること。女性の長い爪はアトピーの大敵です。
- 爪を短く切る。ただし、爪切りでは限界があるので、普通に爪を切ったあと、ガラスの爪やすりで深爪一歩手前状態にしていく。目安は指を立ててほおを軽く引っ掻いても全く爪感を感じないこと。指の腹で少々強めに撫でている程度にしか感じないこと。
- こうして短くした爪は2〜3日で爪感を感じるようになりますので、隔日程度を目安に指を立ててほおを撫でてみて、爪感を感じる部分をガラス爪やすりで削ります。
- 爪をここまで短くすると、ヤクルトの蓋シールが取れないとか、テープやシールが爪で剥がせなくなりますし、鼻くそをうまくほじくれなくなります。また、指先を強い力でぶつけると爪と皮膚が少しはがれかける可能性があり(これはちょー痛い)ので要注意。万一そうなったら、イソジン消毒液(ポピドンヨード)で消毒して清潔な綿棒で市販の抗生剤軟膏を塗り込むこと。化膿したらやばいです。
- 爪の端は見落としがちです。爪の中央部だけではなく爪の端でもほおを撫でてみてください。以外に爪が当たることがありますので、その時は削り過ぎないようにガラス爪やすりで削ります。
これで何が良いかというと、掻いてしまった場合の爪による掻爬によるダメージが大幅に軽減されるということです。そして血だらけになるリスクが減ります(ゼロにはなりません)。搔き壊しが減るということは、悪循環を断ち切るチャンスが増えるということであります。
皮膚科治療は対症療法
成人アトピーで思うこと (1) 2018/3/24で書きましたが、私が思うにはアトピーは結果として症状が皮膚に現れてきているだけであり、その原因は体の中と心にあると思っています。
ひどいアトピーにストレスとか腸内フローラなんて悠長な話をしていても始まりません。まずは、その激しい炎症と痒みを薬で押さえ込んで、本来のストレスを軽減させるとか腸内フローラのバランスを取り戻す、あるいは歯科金属アレルギー治療などに専念できる余裕が生まれます。
皮膚科で薬をもらって症状が治まって、薬をやめたら再燃したという声はネットに数知れずあります。考えてみれば当然ですよね、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン剤の内服などをしても、元をたっていませんもの。生活スタイルも衣食住も全く何もそのままでは、ストレスや腸内フローラなどは改善しませんもの。
アトピーの敵のストレスには二種類ある
医学的に証明されているわけではないそうですが、しかし、アトピーの要因にストレスがあるというのはほぼ間違い無いそうでありますな。
では、ストレスについて考えてみましょう。
ストレスというと仕事でパンパンになって追い詰められている状態とかを思い浮かべるでしょうが、それだけではないです。慣れて安定した状態から離れること、それが辛くなる方向でも、楽になる方向でもストレスです。
- 仕事の納期が迫っている、売り上げがなかなか目標に達しない、これなどはプラス方向のストレスと仮に言いましょう。
- 現状から仕事の量が減る、責任が軽くなる、などは一見ストレスから解放されるように思いますが、これも実は本人すら気づかないストレスです。マイナスのストレスとも言えます。本当に軽くなるならストレスになりませんが、例えば、私の1回目の発症は役職定年の後でした。責任が軽くなるので素直に楽すればいいのに、でも、心のどこかでまだまだ認められていたいという認知欲求が生存していて、それが思う通りにならない立場になるのでストレスにつながるということ。軽くなることと引き換えに失うものがあるとしたらそれがストレスになります。
- アトピーでは湿疹が出ている皮膚を目にすることそのものが強いストレスになる。
- アトピーの猛烈な痒みはそれはもうとてつもなく強烈なストレスである。
プラスのストレスは誰でも冷静に考えるまでもなくわかりますが、後者は意外とわからない。アトピーが発症した1〜2年前に遡り、家族(同居・別居は無関係)の状況変化、仕事の状況変化、仕事の立場での変化、会社の変化、待遇の変化などが発生していないか、発生していると思うならその時期を書き上げましょう。
事実としてストレス発生要因を見つけ出せれば、特にマイナスのストレスは解決したも同然です。でもプラスはちょっと難しい。これは気持ちの持ち方を変えて、いかなる状況でも仕事を楽しめるくらいの心の強さが必要になります。ポジティブ思考に徹してその状況を楽しむことです。言うは簡単、行うは難し。
こういうことを冷静に考えるためにも、アトピーそのものが強いストレス要因であるので、当座の痒みと湿疹は皮膚科専門医に相談して、外用薬や内服薬で抑え込む必要があります。
気が狂うほどの痒みと武器なしで戦っても勝ち目はありませんし、ますますストレスが強くなってアトピーは悪化するかもしれません。まずは大火事を薬で抑えることです。燃えるに任せてOKな人は好きにすれば良いですが、仕事を持ち家事もあり社会生活を営まないといけない普通の人にはまずは火を消すことが大事です。少なくともボヤ程度まで抑え込まないと何も始まりません。
保湿はいつ何時でもとても重要
脱保湿なんて民間療法があるんですねぇ。生来の乾燥肌の人はそれだけでアトピー要因を持っています。そういう人が脱保湿とかすると、これはもう荒れて乾燥しバリアがなくなった皮膚に雑菌がとりついて炎症をおこしたり外部刺激に弱くなりアトピーにつながるといいます。私のように生来乾燥肌の人は、生まれつきのDNA組み込みの可能性もあるので、そういうのは治らないと思います。なので、保湿が必要です。
アトピー情報サイトとやらを見ると、この保湿ローションや保湿クリームへのステマが山ほどあります。このサイトはそれが目的ではないので、私が使っているもの(=私の体質にぴったりあうもの)を一切紹介しません。
何が合うかは人それぞれ違うので試して見るしかありません。一ついえるのは、皮膚科で処方できる保湿薬は非常に少ない、医者が医薬品としての保湿薬で処方できるのはヒルドイドなどごく限られたものでしかなく、むしろ、市販の医薬品ではないものによいものが沢山あります。
ただ、バリバリに乾燥している肌にいきなりワセリンというのは、砂漠に蓋をするようなもので保湿にはほとんどならないそうであります。なので、きちんと保湿して肌(表面だけでしょうけど)を潤わせてからワセリンで蓋をするのはありといいます。ただ、その際でも使うワセリンは白色ワセリンよりさらに不純物が少ない高精製のものを使う必要があるでしょうね。黄色のワセリンとかアトピーには最悪。
経験的には敏感肌用の保湿効果の高い化粧水(保湿効果と価格は比例しないので注意、高いものも安いものも原価は大差なし、大事なのは成分です)をたっぷりつけてから、保湿ローション(これは医師や薬剤師と相談するなどで調べましょう)を塗ると、それらが自分の体質にハマると、私の場合、アトピー後半で一時的に吹き出した弱い湿疹にはかなり効果がありました。ただし人により合わないと効果がないどころか酷くなることもあるので、ごく狭い範囲で試す必要があります。これは本当に個人差があるので、医師や薬剤師、ネットの@cosmeなどのレビューを参考にして試してみましょう。
脱ステロイドという言葉
ステロイド外用薬を使ってひどい目にあったので、その処方した医師やステロイドをクソメソにいうというのをWebでも目にしたことがあります。ステロイドって何だか知っていますかね?使用上の注意を知っていますかね?ステロイドを使わないというのは「脱ステロイド」とは言いません、「ステロイド忌避」です。かなり心情的なものであると認識しています。
社会生活を営めるようするためにも、まずは大火事を消すのが先です。そうでないと、火元の調査なんて不可能です。そのために方法の一つとして強さはいろいろですがステロイド外用薬を使いますね。
ステロイド、副腎皮質モルモンは本来体内合成されるので、外部から取り込むと体は作るのをサボる。で、突然やめるといきなり必要な副腎皮質モルモン量に満たず身体中でいろいろなことが起こる。ですから、特にステロイド系の内服薬は、非常に長い時間をかけて段階的に減らしていきます。日ではなく月(それも複数の月)単位で少しつづ服用量を減らします。しかし、外用薬はそこまで体内へのインパクトはないそうなのですが、長期塗布している場合は、いきなりゼロにするのは非常に危険であります。相当な確率でひどい状態になる可能性ありといいます。
脱ステロイド(実態は「ステロイド忌避」)とかを信じて、今まで朝晩たっぷり塗って抑えていたのを、いきなり断つと激しくリバウンドして前以上の大火事になること間違いなし、下手すれば社会生活断念を余儀なくされるかも。様子を見ながら本当に少しつづ減らしていく。症状が改善している部分から優先的に減らしていく。薬を弱くするとか量を減らすとか回数を3回に1回ぬくとか。でも、まだ色は茶色っぽくなっても低いブツブツがのこっている部分は火種があると思うので、そのあたりは急にやめないほうがいいと経験的に思いますが医師に要相談です。
ステロイドで色素沈着が起こったという人がいます。でも、ステロイドを使っても使わなくても色素沈着が起こるのは自分の体で経験しています。むしろステロイドを使わずに長い間炎症を起こしていた部分の色素沈着は重症で、年単位の時間が経過してもなかなか薄くなりませんし、十年たっても少し薄くなる程度です。多分死ぬまで薄いあとは残るんじゃないかと思っています。逆にステロイドを使ったところは、比較的短期に色素沈着も薄くなりました。
ステロイドはアトピーの治療薬ではありません。結果として皮膚に出ている皮膚炎を抑えるだけ。根本的な問題をなさない限りアトピーは治りません。アトピーでは薬で火を消してから火元対策をするのです。
大人アトピーは死ぬまでお付き合い
基本はそのように思っています。ただ、死ぬまで猛烈な痒みと戦おうとうわけではありません。外用薬や時に内服薬で火事を消して、体内や心のバランスを取り戻すようにする。これには時間がかかりますし、取り戻しても環境が変わると元の木阿弥にもなります。
症状が治まっても保湿はやめません。もともと、乾燥肌ではない人が何らかの理由で一時的にアトピーになったのなら別ですが、私のようにもともと乾燥肌でない人は日々の保湿と、爪を極限まで短くして掻いても皮膚へのダメージを最小化することが大事です。
2015年の1回目の後、私は保湿をサボりました。爪だって普通の長さでした。まあテキトーにしていたともいえます。だからまたなってしまった、そして前よりかなり、相当ひどかったです。洋服を着た時に隠れる部分以外全部に出ていましたもの。赤いブツブツ、それらがあつまってオーストラリアのウルル(エアーズロック)みたいになってしまって超絶痒い。まあ、そんなのが胴体やら足やら手やら….それはもう大変でした。
しかし、今回回復してきても、爪の手入れと化粧水+保湿ローションは朝晩かかしません。これにより朝起きても化粧水+保湿ローションをした部分は、アトピー残骸の色素沈着やまだくすぶっているかもしれない茶色くて触ってもわからないほど低い小さなブツブツ(盛大な赤いブツブツの残骸)はありますが、しっとりプリプリすべすべしています。なので、ちょっと痒くなって掻いても、掻けば掻くほど痒くなるようなこともほとんどありません。それでも痒みが我慢できないときは、市販の非ステロイド系かゆみ止めをつけます。
まだ完全に症状は治まっていないので、ざらつきのある部分や最盛期に症状がとてもひどかった部分にはまだステロイドをつけています。が、少しずつ、本当に少しずつ減らしています。それはチューブの消費量でわかります。ピーク時は5gチューブを一回で使うほどの面積に炎症がありましたから。それが現在は半量くらいには減っていますが、まだゼロにするのはかなり先です。いきなりやめるとリバウンドの悲劇が襲います。少しずつ減らせば外用ステロイド薬はそんなに怖いものではないと思います。
まあ、こんな風になだめすかしながら、ボヤくらいは諦めて即座に手当し、大火事にならないようにしながら一生付き合うしかないと腹をくくりました。
10年ほどして、あれ、そういえば、いつのまにか肌が綺麗になったな、と言えればいいなと思っています。対策は死ぬまで続く、そう思っていれば気も楽になります。とにかくアトピー持ちでない人のように健康で白い肌は理想だとは思いますが、成人アトピー持ちがそれを目指すこと自身が大きなストレスです。ボヤ程度にして一生付き合う気でいると、気づいたら向こうから去ってくれる「かも」しれません。One of my partnerとして付き合おう、こう思って腹をくくるのが一番です。