ANAマイレージクラブ会員であれば、会員向け海外旅行保険「明日へのつばさ」という名称の海外旅行保険の案内を目にしたことがあるかもしれません。一般に海外旅行の保険はカード付帯で賄う人も多いようですが、この保険はカード付帯保険の弱点をおぎなう商品とされています。本当にお得なのでしょうか?検証してみます。
カード付帯保険
弱点
今時のクレジットカードで付帯保険がついていないものはまずないと思いますが、その保証内容を承知しておられますか?一般には、クレジットカード付帯保険は、死亡時はある程度の額が付帯されていますし、死亡保険は大抵の人は他にもかけていると思いますので、万一の死亡時はあまり心配する必要はないかもしれません。
しかし、怪我・病気となると別です。実際に海外で死亡する可能性より怪我・病気になる可能性の方がはるかにたかいわけで、さらに海外だと医療費も高い!ので怪我や病気の治療保険は大変重要になります。しかし、カード付帯の怪我・病気の治療保険はとても安い額に設定されています。
病気・事故でいくらかかるか?
価格.comの保険のサイトによれば、アメリカ(ロサンゼルス)の場合で実際の事故例ではこれくらいかかるそうです。
- 高速道路を走行中に車が横転し救急車で搬送。全身強打による多発外傷と診断され家族が駆けつける。
→ 21,130,000円 - 咳・息苦しさを訴え受診。気胸と診断され10日間入院・手術。家族が駆けつける。
→ 12,030,000円 - アイススケートをしていて転倒、腰を強打し受診。椎間板ヘルニアと診断され3日間入院・手術。家族が駆けつける。
→ 8,060,000円 - サイクリングレース中に体調が悪化して転倒し救急車で搬送。重度の脱水症状と診断され3日間入院。家族が駆けつける。
→ 5,630,000円 - 鯨ウォッチングのクルーズ船が波に揺れて転倒。腰椎骨折と診断され17日間入院・手術。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。
→ 29,928,529円
価格.comより引用
まあ驚きの金額です。
治療費は数百万以上はかかるというのに、カード付帯保険は通常最高でも150万円ほどしか補償してくれません。
ANAの海外旅行保険
ANAの海外旅行保険はカード付帯保険にはない部分をおぎなうようにできているそうで、所有しているANAのカードの種類によりプラン(補償額)が変わります。
代表的なものを東京海上日動の類似保険と比べてみましょう。
前提は、旅行日数(自宅を出てから戻るまで)を4日間とし行き先はシンガポールで1名としておきます。
ANAマイレージクラブカード(クレジットなし)
項目 | カード付帯 | 充実プラン | 基本プラン | お手頃プラン | 東京海上日動 (Z3) |
障害死亡 | – | 3,000万円 | 2,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
障害後遺障害 | – | 3,000万円 | 2,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
治療・ 救援費用 | – | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
応急治療・ 救援費用 | – | 300万円 | 300万円 | 300万円 | – |
疾病死亡 | – | 1,000万円 | 500万円 | 300万円 | 1,000万円 |
賠償責任 | – | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 |
携行品損害 | – | 30万円 | 20万円 | 10万円 | 20万円 |
航空機預託 手荷物遅延 | – | 10万円 | 10万円 | – | 偶然事故対応費用として 5万円 |
航空機遅延 | – | 2万円 | 2万円 | – | |
旅行変更費用 (途中帰国のみ) | – | 20万円 | 10万円 | – | – |
保険料 | 6,510円 | 5,800円 | 4,710円 | 4,890円 |
クレジットカード機能なしのANAマイレージクラブカードだけだとないのと同じです。医療だけを考えれば東京海上日動の一般の保険Z3プランのほうが割安に見えます。
しかし、海外旅行ですごくありがちな預託手荷物遅延による関連費用(着替えを買ったりした費用)の保険や遅延してホテル代自己負担が出てしまった場合の宿代の補填などは、東京海上日動のほうでも偶然事故対応費用として5万円を限度に支払われるようです。
身内の危篤や不幸などで急に帰国を余儀なくされた場合の費用などは一切補填がありません。
ANA VISA/マスター 一般カード
項目 | カード付帯 | 充実プラン | 基本プラン | お手頃プラン | 東京海上日動 (Z3) |
障害死亡 | 1,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
障害後遺障害 | 1,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
治療・ 救援費用 | 傷害治療費用:- 疾病治療費用:- 救援者費用:100万円 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
応急治療・ 救援費用 | – | 300万円 | 300万円 | 300万円 | – |
疾病死亡 | – | 1,000万円 | 500万円 | 300万円 | 1,000万円 |
賠償責任 | – | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 |
携行品損害 | – | 30万円 | 20万円 | 10万円 | 20万円 |
航空機預託 手荷物遅延 | – | 10万円 | 10万円 | – | 偶然事故対応費用として 5万円 |
航空機遅延 | – | 2万円 | 2万円 | – | |
旅行変更費用 (途中帰国のみ) | – | 20万円 | 10万円 | – | – |
保険料 | 6,510円 | 5,800円 | 4,710円 | 4,890円 |
手持ちのカードが一般クレジットカードになると多少補償が出てきます。しかし、死亡補償の1,000万円は少ないし傷害治療・疾病治療はありません。事実上、付帯保険なしと同等と思ってよいでしょう。
ANA VISA/マスター スーパーフライヤーズゴールドカード
項目 | カード付帯 | 充実プラン | 基本プラン | お手頃プラン | 東京海上日動 (Z3) |
障害死亡 | 5,000万円 | 3,000万円 | – | – | 3,000万円 |
障害後遺障害 | 5,000万円 | 3,000万円 | – | – | 3,000万円 |
治療・ 救援費用 | 傷害治療費用:150万円 疾病治療費用:150万円 救援者費用:100万円 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
応急治療・ 救援費用 | – | 300万円 | 300万円 | 300万円 | – |
疾病死亡 | – | 1,000万円 | 500万円 | 300万円 | 1,000万円 |
賠償責任 | 3,000万円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 |
携行品損害 | 50万円 | 30万円 | – | – | 20万円 |
航空機預託 手荷物遅延 | – | 10万円 | 10万円 | – | 偶然事故対応費用として 5万円 |
航空機遅延 | – | 2万円 | 2万円 | – | |
旅行変更費用 (途中帰国のみ) | – | 20万円 | 20万円 | – | –
|
保険料 | 6,510円 | 4,480円 | 3,820円 | 4,890円 |
ここではスーパーフライヤーズ・ゴールドカードをあげていますが、ANA VISA/マスター ゴールドカードでも同じです。
ゴールドカードになると死亡補償は5,000万円となります。普通は他にも死亡保険をかけているでしょうから、これくらいあればいいでしょう。
ただ冒頭に書いたように治療費用150万円はないよりましですがあまりにも少なすぎます。風邪ひいた程度ならOKでしょうけど….。
他のカードグレードより保険料が安いのは、死亡保険はカード付帯が大きいので、この保険であえて多額の死亡保険をかける必要がないからです。
保険料だけみると基本プランがZ3とほぼほぼ同額ですが、航空機預託手荷物遅延・航空機遅延・旅行変更費用への補償は基本プランのほうが充実しています。応急治療・救援費用も含まれますので「明日へのつばさ」のほうがいいように思います。
日数による違い
それでは「ANA VISA/マスター 一般カード」と東京海上日動のZ3プランで日数による保険料違いを見てみましょう。
日数 | 充実プラン | 基本プラン | お手頃プラン | 東京海上日動 (Z3) |
4日間 | 6,510円 | 5,800円 | 4,710円 | 4,890円 |
5日間 | 7,410円 | 6,630円 | 5,410円 | 5,510円 |
6日間 | 8,340円 | 7,500円 | 6,170円 | 6,210円 |
7日間 | 9,100円 | 8,220円 | 6,800円 | 6,800円 |
8日間 | 10,140円 | 9,210円 | 7,730円 | 7,650円 |
9日間 | 10,820円 | 9,860円 | 8.280円 | 8,200円 |
10日間 | 11,460円 | 10,470円 | 8,820円 | 8,800円 |
保険料だけでいえば、ANAマイレージクラブ会員カード、ANA VISA/マスター 一般カードであれば、お手頃プランとZ3がほぼ同額、ANA VISA/マスター ゴールドカード(スーパーフライヤーズ ゴールドカードを含む)であれば基本プランとZ3がほぼ同額となります。
ANA明日へのつばさと東京海上日動Z3の違い
所持しているANAカードにより同じプラン名でも補償内容と保険金額が変わるのが「明日へのつばさ」です。
ANAマイレージクラブ会員カード、ANA VISA/マスター 一般カードであれば、お手頃プランと東京海上日動Z3がほぼ同額の保険料ですが、お手頃プランには航空機預託手荷物遅延、航空機遅延の補償はなく、Z3には偶然事故対応費用として5万円限度に補償がありますので、東京海上日動Z3のほうがお得。
ANA VISA/マスター ゴールドカード(スーパーフライヤーズ ゴールドカードを含む)では、1ランク上の基本プランとZ3がほぼ同額の保険料となり、航空機預託手荷物遅延、航空機遅延、旅行変更費用の補償もつきますので「明日へのつばさ」のほうがお得です。
「明日へのつばさ」には応急治療・救援費用(旅先で旅行前にかかっていた病気の症状が急激に悪化して治療が必要になっ場合の保険)が基本で含まれていますが、東京海上日動の場合は応急治療・救援費用を含む契約はインターネットでは契約できないようです。
それ以外のキャッシュレス治療や現地サポートなどは、「明日へのつばさ」の引受保険会社も東京海上日動なので基本的には同じようなサポートが受けられます。
「明日へのつばさ」
最寄りの病院の案内・紹介
キャッシュレス・メディカル・サービスを利用できる病院の案内・予約
病人、ケガ人の移送の手配
救援者の渡航手続、ホテルのサポート
最寄りのクレームエージェントの案内
急な病気やケガの相談窓口
「東京海上日動 Z3」
24時間365日 日本語対応
キャッシュレス・メディカルサービス
重大な病気やケガの際の緊急アシスタンス
緊急時の現金の手配
言葉が通じずお困りの際は、無料で電話通訳
日本のご親族・勤務先へ無料でメッセージ伝言
旅行関連の安全情報の提供
空港とホテルの間の送迎予約・手配
航空券に関する予約・手配・情報提供など無料サポート
ホテルに関する予約・手配・情報提供など無料サポート
クレジットカードを紛失・盗難された場合の無料サポート
パスポートを紛失・盗難された場合の無料サポート
滞在先ホテル等への日本語FAXニュースの無料配信
事故により破損した場合のスーツケース修理サービス(条件あり)
※Z3のほうがサポートサービスは多いように見えますが、通常クレジットカードのサービスサポートデスクで受けられるようなサービスも含まれるため一概には判断できません。重要なのは青い文字のところです。
まとめ
ANAには、ANAマイレージクラブ会員向けの海外旅行保険「明日へのつばさ」があり、ANAカード付帯保険の弱点をカバーする商品である。
手持ちANAカードがクレジット機能なしのマイレージクラブ会員カードあるいは、VISA/マスター一般カードであれば、「明日へのつばさ」のお手軽プランがZ3とほぼ同額の保険料であるが、海外旅行ですごくありがちな預託手荷物遅延による関連費用(着替えを買ったりした費用)の保険や遅延してホテル代自己負担が出てしまった場合の宿代の補填などは、東京海上日動のほうでも偶然事故対応費用として5万円を限度に支払われるが、応急治療・救援費用は含まれない
手持ちANAカードがVISA/マスターゴールド、VISA/MASTERスーパーフライヤーズゴールドでは、「明日へのつばさ」のほうが航空機預託手荷物遅延・航空機遅延・旅行変更費用を含み、さらに応急治療・救援費用も入っているため「明日へのつばさ」のほうがよさそう。
海外旅行保険は他にも星の数ほどあるので、手持ちのカードとの組み合わせで調べるのも良い。